8月12日、SiliconAngleが「IBM inks $240M infrastructure deal with AI-optimized cloud operator Together AI」と題した記事を公開した。Nvidiaが出資するスタートアップに対し、IBMがNvidia製チップを積んだクラスターをクラウド経由で提供するという入り組んだ構図が、現在のAIインフラサプライチェーンの一断面を鮮明に映し出している。
IBMとTogether AI、2億4000万ドルのインフラ契約
IBMは、AIワークロード特化型クラウドプラットフォームを運営するスタートアップTogether AIに対してインフラを提供する、2億4000万ドルの複数年契約を締結した。
Together AIはサンフランシスコを拠点とし、機械学習向けに最適化されたクラウドプラットフォームを運営している。開発者はカスタムAIモデルの訓練、既存モデルのファインチューニング、推論(インファレンス)処理などに利用できる。現在、同プラットフォームは顧客向けに月間約400兆トークンを処理している。
同社はオープンソースLLMの推論APIを手軽に利用できる基盤として開発者コミュニティで広く認知されており、Llama系やMistral系モデルを中心に支持を集めてきた。AWSやGCPなど複数のクラウドからインフラを調達しながら運営しているが、今回IBMを主要パートナーに加えることで、調達先の多様化と大規模化を同時に図る形となる。
この契約の締結は、Together AIが8億ドルの資金調達を完了した数週間後のことだ。その出資者にはNvidiaも含まれており、今回IBMが展開するクラスターでもNvidia製チップが採用される。
展開されるハードウェア:HGX B300
今回の契約でIBMが用意するのは、Nvidia HGX B300システムの「大規模クラスター」だ。2027年上半期にIBM Cloud経由で提供開始予定である。
HGX B300は、Blackwell Ultraチップを8基搭載したマザーボード型の高密度AIコンピューティングシステムだ。Blackwell UltraはNvidiaのBlackwellアーキテクチャの上位版にあたり、現在はその後継世代として2026年1月に発表されたRubinが最上位に位置している。HGX B300はBlackwell Ultra世代のシステムとして、NVFP4形式のデータ処理で15ペタフロップスの性能を発揮する。
アーキテクチャ面では、Blackwell Ultraは2つのチップレットを専用インターコネクトで接続した構造を持つ。160個のストリーミングマルチプロセッサ(SM)を備え、各SMは130以上のコアで構成されている。AIモデルがプロンプト処理中に生成する中間データや一時データの保存に最適化されたメモリも内蔵する。
8基のBlackwell Ultra間のデータ転送にはConnectX-8 SuperNIC(GPU間・ノード間の高速データ転送を担うネットワークインターフェースカード)を8枚使用し、外部システムとのトラフィック管理にはBlueField-3 DPU(Data Processing Unit:ネットワーク処理をCPUからオフロードし、セキュリティや帯域管理を担う専用チップ)が担当する。サーバーとして組み上げた際の仕様は、最低でも2TB以上のメモリと56コアCPU×2という構成になる。
オープンソースAIのエンタープライズ展開が狙い
Together AIがこのクラスターを使って実行するのは、主にオープンソースAIモデルを使った推論ワークロードだ。同社は推論サービスを5種類提供している。
- メディア生成モデル向けのコンテナ実行環境
- トークン課金でコスト最適化を支援するProvisioned Throughput
- サーバーレスインフラ
- 専有マシン
- 性能をある程度抑える代わりに価格を下げたバッチ処理環境
Together AI CEOのVipul Ved Prakashは次のようにコメントしている。
「このクラスターにより、より多くの企業にプロダクショングレードの推論を迅速に提供できる。オープンソースAIをエンタープライズの当然の選択肢にするための大きな一歩だ。」
エンタープライズAIクラウド市場での競合構図
IBMはここ数年、ワトソン時代の企業向けAI路線から方向性を修正し、オープンな基盤モデルを活用したエンタープライズAIプラットフォーム「watsonx」を軸に据える戦略へと転換してきた。今回のTogether AIとの契約は、IBM Cloudをそのインフラ供給源として位置付け直す動きとも読める。
一方のTogether AIにとっては、NvidiaというチップメーカーとIBMというクラウド事業者の双方と深い関係を持つという珍しい立場になる。Nvidiaが出資者でありながら、そのチップがIBMのクラウドを通じて供給されるという構図は、現在のAIインフラサプライチェーンの複雑さをよく示している。
※編集部の考察:AWSやGoogle Cloudが巨大な自社AIインフラを抱え垂直統合を強める中、IBMがTogether AIのような専門特化型クラウド事業者をパートナーに取り込む形でのエコシステム拡大は、差別化戦略として一定の合理性がある。ただしその有効性は、2027年上半期のクラスター稼働後の実績次第だろう。
詳細はIBM inks $240M infrastructure deal with AI-optimized cloud operator Together AIを参照していただきたい。