8月13日、Matthias Bastianが「Google's Gemini is losing market share to ChatGPT and Claude according to new market data」と題した記事を公開した。複数の独立したデータソースがGeminiの利用シェア縮小を示しており、ChatGPTとClaudeへの移行傾向が鮮明になりつつある。ただし各データには計測対象や文脈の違いがあり、数字をそのままGemini全体の市場シェアと読み替えるには注意が必要だ。
Pangramが示す「12%→1.9%」——ライティング領域での急落
最も目を引く数字は、AIテキスト認識プラットフォームのPangramが公開したものだ。Pangramは投稿テキストを解析してモデル別の利用シェアを推定しており、その分析によるとGeminiのシェアは計測開始時点の12%から2025年7月時点の1.9%へと急落している。Pangramはこの変化を原文で「collapse(崩壊)」と表現した。
ただし重要な留保がある。Pangramが計測しているのは主にライティング・文書作成タスクの領域であり、このセグメントはもともとClaudeやChatGPTが強みを持つ分野だ。したがって「12%→1.9%」はGemini全体の市場シェアを示す数字ではなく、特定のユースケースにおける利用割合の変化として読む必要がある。それでも、この分野でのGemini離れが急速に進んでいることは事実だ。
同データによれば、OpenAIは計測開始以来毎月50%超のシェアを維持し続けている。Anthropicは4.3%から14.9%へと伸長しており、特に技術・科学分野での伸びが顕著だ。
OpenRouterとSimilarwebが補完する全体像
この傾向はPangramに限った話ではない。APIマーケットプレイスの**OpenRouter**のデータにも、同様のGeminiシェア縮小が確認されている。OpenRouterは開発者・研究者向けのAPIハブであり、ここでのシェア変動はエンジニアリング用途での評価変化を反映していると見られる。なお、OpenRouterはオープンウェイトモデル(学習済み重みが公開されたモデル)の利用に偏る傾向があり、この点はデータの解釈に際して念頭に置く必要がある。
ウェブトラフィック分析の**Similarwebが示すデータはやや異なる温度感だ。GoogleのAIサービスのウェブサイト市場シェアは先月27%から26.8%へとわずか0.2ポイントの低下**にとどまっており、Pangramの数字が示すような急落とは直接比較できない。さらにSimilarwebは、Googleのシェアが1年前の9.4%から現在の26〜27%台へと大きく増加してきた経緯も示している。この指標だけを見れば、Geminiは年単位では成長トレンドにあることになる。
つまり3つのデータは「同じ方向」を向いてはいるが、その強度は計測対象によって大きく異なる。Pangramの急落はライティング特化セグメントでの現象であり、Similarwebのウェブトラフィックは依然として相対的な安定を示している。記事が強調するのは、異なる手法・異なるセグメントで計測された複数のデータが「Geminiの後退」という方向で一致している点だ。
各データソースにはバイアスがある
3つのデータソースはそれぞれ異なる側面を計測しており、いずれも死角がある。
- Pangram:主にライティングタスクを計測。この分野ではGeminiはもともとClaudeやChatGPTに後れを取っていた
- OpenRouter:オープンウェイトモデル(公開された重みを持つモデル)の利用に偏りがある
- Similarweb:モバイルアプリの利用を捕捉できない
それでも記事は「3つすべてが同じ方向を示している」と指摘する。Geminiが使われなくなってきているという傾向は、データソースの偏りを超えて一貫している。
なぜGeminiが離反されているのかについて、元記事は直接的な分析は行っていないが、文脈として読み取れる要素はある。ChatGPTはブランド認知と習慣的利用における先行優位を持ち、Claudeは長文処理・コーディング・技術文書生成といった領域での評価を高めている。Gemini 2.5 Proは性能ベンチマークで高評価を得た時期もあったが、それが実際の利用定着につながっていない可能性を今回のデータは示唆している。
MAUは「質の低いシグナル」——PichaiのXポストへの反論
GoogleのSundar Pichai CEOは月間10億人のGeminiアプリユーザーを主張しているが、記事はこの数字に懐疑的だ。月間アクティブユーザー数(MAU)はアプリを月に1回でも起動すればカウントされる指標であり、実際の利用頻度・タスクへの定着度・競合との使い分け状況を反映しない。大規模なユーザー基盤を持ちながらも実質的な利用深度が低いという状況は、他のプロダクトでも繰り返し見られてきたパターンだ。
シェア低下とGoogle DeepMindの組織再編
このシェア低下は、最近のGoogle DeepMind内の動きと無関係ではないかもしれない。記事は、Demis Hassabisを含む複数の幹部が離脱したGoogle DeepMindの組織再編との関連を示唆している。市場での競争力低下が組織上層部の変動を引き起こした可能性がある。
AI市場は現在、ChatGPTの圧倒的なシェアとClaudeの着実な伸長という構図が鮮明になりつつある。Geminiがこの状況をどう巻き返すかは、今後のGoogle AI戦略の試金石となる。
詳細はGoogle's Gemini is losing market share to ChatGPT and Claude according to new market dataを参照していただきたい。