8月12日、Rohail Saleemが「Kimi K3 Shows An Uncanny Affinity To The Reasoning Patterns Of Claude Opus, As A New Study Hands The Trump Administration A Smoking Gun」と題した記事を公開した。中国のMoonshot AIが開発したKimi K3モデルがAnthropicのClaude Opus 4.8の推論パターンと異常なほど高い統計的親和性を示すことを明らかにした新研究を紹介している。
Kimi K3とClaude Opus、「6桁の差」
研究の最も衝撃的な発見から紹介したい。研究者がClaude Opus 4.8の復号済み推論データのわずか1%のフラグメントをKimi K3に入力したところ、Kimi K3の思考プロセスと最終回答がClaudeのスタイルや語法に劇的に近づいた。
定量的には、「ClaudeおよびGPTの推論スパンは、次に近いモデルと比較して、Kimi K3からの方が最大で約6桁(100万倍)抽出しやすい」と論文(arXiv)は述べている。これは「模倣の精度が100万倍高い」という意味ではなく、Claudeの推論パターンがKimi K3から統計的に検出・抽出しやすい度合いが他モデルと比べて突出して高いことを示す指標だ。DeepSeek-V4-Flashなど他のオープンモデルと比較しても、Kimi K3はClaudeの推論パターンとの統計的親和性が際立って高い。
研究者は「推論トレースの蒸留(distillation)は暗号を破ることなく、長期間にわたって可能だった可能性がある」と指摘する。
「チェーン・オブ・ソート」の暗号化に重大な脆弱性
こうした発見を可能にした背景には、AIモデルの推論過程(チェーン・オブ・ソート)を保護する暗号化の仕組みに存在する根本的な脆弱性がある。
LLMは回答を生成する前に内部で「考える」プロセスを持つが、OpenAI・Anthropic・Googleといった主要プロバイダーは、このプロセスをユーザーに見せないよう暗号化されたテキストブロックとしてブラウザとサーバー間でやり取りしている。サーバーのメモリを節約する仕組みだが、前述の研究論文によれば、これらのプロバイダーがエコシステム全体で共通の暗号化キーを使用していたことが判明した。
※編集部の考察:共通キーの使用は、通常であれば各プロバイダーが独立したキー管理を行うべき場面での設計上の判断であり、今回の脆弱性の根本原因とされている。論文の詳細については原文および原論文を確認されたい。
さらに致命的な欠陥が重なる。Claude Opusのような高性能モデルは暗号化された思考ブロックの開示を拒否するよう訓練されているが、そのブロックをClaude Haikuのような低コスト・低ガード型の兄弟モデルに渡すと、そちらが復号して内容を出力してしまう。
3つの実害
この脆弱性が引き起こすリスクは具体的だ:
- 個人情報・認証情報の漏洩: 研究者が公開されているセッションログを復号したところ、367件の個人情報と182件の機密認証情報(APIキーやパスワードを含む)が発見された。開発者が暗号化ブロック内にデータが埋め込まれていると知らずにログを公開しているケースが多い。
- 安全フィルターの迂回: モデルが有害な最終回答を拒否した場合でも、復号された思考プロセスには内部で検討された危険な手順が残っている場合がある。
- 悪意ある命令の埋め込み: 攻撃者がこの不可視の暗号化ブロック内に悪意あるコマンドを仕込み、AIワークフローを乗っ取れる。
トランプ政権との地政学的文脈
この研究は、単なる技術的発見にとどまらない政治的意味を持つ。Moonshot AIをめぐっては、Anthropicとトランプ政権の一部が「Kimi K3はAnthropicのモデルを蒸留して作られた」と主張してきた経緯がある。
トランプ政権当局者の最近の告発によれば、MoonshotはNVIDIA GB300サーバーを秘密裏に保有しており、タイ経由でGB300への追加アクセスも行っていたとされる。米国は以前から、中国のエンジニアがモデルを搭載したハードドライブを米国友好国に持ち込み、最先端GPUで強化学習を行っている疑いを持っていた。
蒸留の決定的証拠を掴むことは技術的に難しいが、今回の研究が示す統計的乖離は、これまでの状況証拠の中で最も具体性の高いものとなった。
詳細はKimi K3 Shows An Uncanny Affinity To The Reasoning Patterns Of Claude Opus, As A New Study Hands The Trump Administration A Smoking Gunを参照していただきたい。