8月11日、PYMNTSが「Monday.com and Airbnb Are Putting Numbers Behind AI's ROI」と題した記事を公開した。この記事では、Monday.comとAirbnbがAI投資の効果を具体的な数値で開示し、従来の「採用率」中心の曖昧な報告から脱却しつつある動きについて詳しく紹介されている。
数字で語り始めたAIのROI
AI活用の報告といえば、「社員何名が研修を受けた」「チャットボットを何本立ち上げた」といった定性的な指標が中心だった。だが2026年の決算シーズンに入り、投資家に対してより具体的な数字が示され始めている。
Monday.comは2026年Q2の決算説明会で、AI製品からの年間経常収益(ARR)がQ1からQ2の間に倍増し、純新規ARRの**17%**を占めるまでになったと明かした。Co-CEOのEran Zinman氏は「顧客がAI機能を能動的に選び、価値を感じたときに追加料金を払っている証拠だ」と述べた。社員がツールを使っているというシグナルではなく、顧客が別途料金を払っているという点が本質的に異なる。
Airbnbはコスト削減の側から数字を出した。CEO Brian Chesky氏によると、AIアシスタントがゲストの問い合わせの約45%を人間のエージェントなしで解決し、1予約あたりのカスタマーサポートコストが前年比16%減となった。さらにAIの導入でコンセプトから機能リリースまでの期間が最大60%短縮され、2026年上半期に出荷した機能数は前年同期比で約80%増に達した。
「導入率」では取締役会を納得させられなくなった
この2社の事例が意味を持つのは、それぞれのアプローチが正反対だからだ。Monday.comはAIを顧客が直接課金する収益ラインとして示し、Airbnbは既存コスト構造の中での削減効果として示した。どちらも、2024〜2025年のAI報告書を埋め尽くしていた「採用率」よりも具体的で反論しにくい。
PYMNTSのリサーチ部門であるPYMNTS Intelligenceは2024年3月から毎月、売上10億ドル以上の企業を対象に生成AIのセンチメントを追跡している。1,000件以上の観測の結果、「生成AIから有益な成果を得た」と回答するエグゼクティブの割合は**96%**まで上昇した(前年から大幅増)。
CFO(最高財務責任者)の活用実態も変化している。中堅企業CFOの**87%が生成AIを決算の迅速化や異常検知に重要だと見なし、同割合が財務リスクモデリングやストレステストに活用しているとPYMNTSは別途報告している(原文は'liability modeling'。文脈上、負債の管理というより財務リスク全般の定量評価を指すと解釈される)。エラー発生率は2025年7月の80%から2025年12月には35%へ低下、統合面の課題も70%から45%**へ改善されている。
またWedbushのアナリストは、多くの企業がAIパイロットを成功を測る枠組みなしに走らせており、多額の投資後も支出を正当化できていないと指摘する。この文脈で見ると、Monday.comのARR開示とAirbnbの1予約あたりコスト削減という数字は、アナリストが求める「逸話ではなく数字で答える」報告の好例として位置づけられている。
AIコスト自体が独立した管理対象に
こうした効果の裏には相応のコストが伴う。Gartnerの予測によると、AIプラットフォームとモデルへの世界支出は2026年に642億5,000万ドル(2025年の393億ドルから63.4%増)に達する見通しだ。なお、別途報告されている2兆5,200億ドルという数字はAIプラットフォーム単体ではなく、データセンターや関連インフラを含むAI関連支出の総計であり、定義が異なる点に注意が必要だ。Monday.comが販売するAI機能も、Airbnbが展開するAI機能も、その巨大なコスト構造の上に成り立っている。
このコストの可視化を支援するツールも登場している。本稿の主題と直接つながるのはRampの動きだ。同社は2026年7月16日に「AI Token Spend Management」を公開した。背景には、同社の顧客のトークン消費量が2025年6月から20.7倍に膨らんだという実態がある。企業がAI機能を本格展開する段階に入り、トークン消費コストが無視できない規模になったことを示している。
CloudZeroも同領域でツールを提供しているが、その設計思想はRampとは異なる。トークン数の総量追跡にとどまらず、どの顧客・機能・チームがAIコストを生み出しているかに紐付けて可視化する点が特徴だ。ROIの測定という観点では、CloudZeroのアプローチはコスト帰属(cost attribution)の問題を直接解こうとしており、Monday.comやAirbnbが示したような「機能単位・顧客単位での効果測定」を内部で行うための基盤として機能し得る。
詳細はMonday.com and Airbnb Are Putting Numbers Behind AI's ROIを参照していただきたい。