8月9日、The Next Webが「OpenAI buys NextSlide as it builds an office suite inside ChatGPT」と題した記事を公開した。OpenAIがプレゼンテーション生成スタートアップ「NextSlide」を買収し、ChatGPT内にオフィススイートを構築しつつある——その動向が、MicrosoftとOpenAIの微妙な関係をあらためて浮かび上がらせている。
MicrosoftのOfficeへの直接挑戦
今回の買収で最も注目すべき構図は、NextSlideが代替しようとしていた製品がPowerPointであるという点だ。
MicrosoftはOpenAIの最大の出資者であり、OpenAIの技術をOffice、Windows、Bingに統合している。その出資者のコア製品に正面から競合するツールを、OpenAIが自ら開発・買収している形だ。両社の契約上どこまでが許容されているかは公開されていないが、少なくとも外形的には説明を要する緊張関係が生じている。「資金を提供するパートナー」と「コア市場で競合するパートナー」では、外部から見た構図がまるで違う。
※編集部の考察:規制当局もこの関係に目を向け始めているとの報道が複数出ており、両社の関係の位置づけは今後さらに問われる可能性がある。
NextSlideとは何者か
NextSlideは創業からわずかな期間での売却となるスタートアップだ(元記事では創業時期の具体的な言及はない)。プロンプト、メモ、ドキュメント、リサーチ資料を入力として、編集可能な完成プレゼンテーションを生成するツールを開発していた。
買収の財務条件は非公開。創業者のAhmed Beshryは同社サイト上で「NextSlideのチームはOpenAIに移り、ChatGPTの構築を支援している」と発表した。現在、同社サイトにはこの一文しか掲載されていない。
Beshryにとってこれは2度目のイグジットだ。前回はスマートカートとレジなし決済のスタートアップ「Caper AI」を共同創業し、2021年10月にInstacartが買収している。同社のカートはKroger、Wakefern、Sobeysなどの店舗で稼働していた。
買収は孤立した案件ではない
OpenAIはここ最近、立て続けに買収を進めている。
- Jony Iveのハードウェアスタートアップ「io」:65億ドル
- 分析ツール「Statsig」:11億ドル
- 個人財務アプリ「Hiro」「Roi」:金額非公開の小規模買収
パターンは一貫している。小規模チーム、動くプロダクト、そしてブランドを残さずChatGPTに吸収。実態としては「プロダクト付きの採用活動」に近い。
ChatGPTをオフィススイートにする戦略
プレゼンテーション機能は思いつきで追加されたわけではない。ドキュメント、キャンバス、ファイル管理、そして今回のスライドは、オフィススイートの構成要素そのものだ。OpenAIはこれらを着実に揃えてきている。
その意図を最も明確に示すのがChatGPT Workだ。単一の質問に答えるのではなく、ユーザーのアプリやファイルを横断して行動し、プロジェクトに数時間単位で関与するエージェントとして設計されている。
牽引力は数字にも表れており、OpenAIのエージェントは1,000万ユーザーを突破。同社はコンシューマーの利用習慣を、財務・営業・オペレーションチームが継続課金するビジネスソフトウェアへと転換しようとしている。
GoogleとOpenAI、アプローチの違い
※以下のGemini Sparkに関する比較考察は、元記事の文脈をもとに編集部が加筆したものだ。
同じゲームを逆方向から進めているのがGoogleだ。Google I/Oで発表されたGemini Sparkは、Gmailを通じて指示を受け取る常時起動型アシスタントとして、既存のGoogle製品群をAIで束ねるアプローチを取る。
構造的な差異はここにある。
- Google:すでに生産性ツールの「面」を持っており、そこにインテリジェンスを追加する
- OpenAI:インテリジェンスを持っており、「面」となるツールを買い集めている
どちらが勝つかは、「すでに使っているツールにAIが加わる」のと「AIを中心に一から作られたツールに乗り換える」のと、ユーザーがどちらを選ぶかにかかっている。NextSlideの買収は、後者への小さな賭けだ。
詳細はOpenAI buys NextSlide as it builds an office suite inside ChatGPTを参照していただきたい。