8月10日、CNBCが「World's biggest chipmaker TSMC's sales surge 45% amid buoyant AI demand」と題した記事を公開した。世界最大のファウンドリ(半導体受託製造企業)であるTSMCが7月の売上高で前年同期比44.7%増を記録し、AIチップ需要の底堅さを改めて示した。特筆すべきは、AI関連売上を計上するHPC部門が同社全体の**66%**を占めるという構造的な変化だ。
AIチップ売上がTSMC全体の66%を占める
直近の第2四半期決算で、ハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)部門——TSMCがAI向けチップの売上を計上するセグメント——が全体売上高の**66%**を占めていることが明らかになった。TSMCはNvidiaやGoogleが独自設計するカスタム半導体の製造を担っており、ファウンドリとして自社ではチップを設計・販売せず、顧客の設計を量産することに特化したビジネスモデルを持つ。大手テック各社がAIインフラ構築に前例のない規模の資本を投じ続ける中、この比率はTSMCの業績がいかにAI需要に直結しているかを端的に示している。
TSMC会長のC.C.ウェイ氏は決算報告の場で「AI関連の需要は引き続き極めて旺盛だ」と述べた。
7月売上高は前年比44.7%増、年間見通しの40%成長を上回るペース
台湾積体電路製造(TSMC)が発表した2026年7月の売上高は4,675億8,000万台湾ドル(約145億米ドル)で、前年同期比44.7%増となった。
TSMCは年間売上高の成長見通しとして「米ドルベースで40%強」を掲げているが、7月の数字はそのペースを上回る水準だ。Quilter CheviotのテクノロジーリサーチヘッドであるBen Barringer氏はCNBCに対し次のように述べた。
「TSMCは今年の売上高について40%成長を見込んでいるが、7月の数字はそれを上回っている。これは容易なことではなく、現時点では需要がまだ存在していることを示している。また、8月・9月への過度なプレッシャーをある程度和らげる結果でもある」
一方で同氏は「半導体業界の需要は急速に変化しうる。月次の数字は振れ幅があるため、深読みしすぎないことが重要だ」とも釘を刺した。月次数字はあくまでスナップショットであり、トレンドの確認には複数月の推移を見ることが欠かせない点は、投資家・読者ともに念頭に置いておきたい。
設備投資計画も引き上げ、今年600億〜640億ドル規模に
TSMCは今年の設備投資(capex)計画を600億〜640億米ドルへと引き上げた。Barringer氏が指摘するように、同社はさまざまな追加投資を通じて生産能力の拡張を続けており、この水準のチップ生産が継続されることが期待される。TSMCは日本(熊本)や米国(アリゾナ)への工場展開も進めており、地政学的リスク分散と需要拡大への対応を同時に図っている。
半導体株全体の動向:年初来72%高も、直近は調整局面
TSMCの好調な数字を受け、欧州の半導体株も上昇した。ASMLが2%超高となったほか、InfineonやSTMicroelectronicsも上昇して取引された。ASMLはTSMCを主要顧客とする半導体製造装置メーカーで、EUV(極端紫外線)露光装置の事実上の独占供給者として知られる。TSMCの設備投資拡大はASMLの受注増に直結するため、両社の株価は連動しやすい関係にある。
半導体セクター全体では、AIへの設備投資の費用対効果に対する懸念から直近で売られる場面もあった。米国のPHLXセミコンダクターインデックス(フィラデルフィア半導体株指数。SOXとも呼ばれ、米国上場の主要半導体関連30銘柄で構成される業界代表的な指数)は6月の高値から約15%下落しているものの、年初来ではまだ約72%高の水準にある。TSMCの株価も年初来で50%上昇している。
TSMCが「業界の温度計」である理由
TSMCは月次の売上高に対して公式コメントを出さない慣例だが、その数字は毎月市場の注目を集める。ファウンドリとして業界横断的にチップを製造するTSMCの売上は、NvidiaやApple、Googleといった設計専業の顧客企業群の発注動向を間接的に映し出すからだ。投資家はTSMCの月次数字を通じて、大手テック各社のAIインフラ投資が「実際の製造発注」という形で継続しているかどうかを測ろうとしている。
AIインフラ投資の持続性については市場内でも見方が割れているが、TSMCの月次売上高はその都度「需要の温度計」として機能し続けている。
詳細はWorld's biggest chipmaker TSMC's sales surge 45% amid buoyant AI demandを参照していただきたい。