8月8日、The Next Webが「China's new AI bottleneck isn't chips. It's running out of Chinese-language training data.」と題した記事を公開した。中国AIの真のボトルネックが半導体ではなく中国語訓練データの深刻な不足にあるという構造的問題を、専門家の発言や政府の対応を交えながら詳述している。
中国語はウェブの1.3%しかない
米国の半導体輸出規制が中国のAI開発を制約するという議論は広く知られているが、中国の専門家たちが近年より深刻に警戒しているのは、高品質な中国語訓練データの枯渇だ。
インターネット調査機関W3Techsのデータによると、**中国語はウェブコンテンツ全体のわずか1.3%**しか占めていない。英語が約50%、スペイン語が6%、日本語が5%であることと比べると、その差は歴然としている。
チップ不足には「より古い世代のチップを使う」「自国で製造する」といった迂回策が存在するが、データ不足にはハードウェア的な回避策がない。これが問題の根深さだ。
データウォールは中国だけの問題ではないが、中国が最も打撃を受ける
AI研究機関Epoch AIの試算では、世界全体で利用可能な高品質テキストデータは6年以内に枯渇する可能性がある。元OpenAI研究ディレクターのAndrej Karpathyも「データウォール」が今十年の終わりまでに訪れると警告している。
この問題は全世界共通だが、中国が特に打撃を受ける理由がある。中国の主要プラットフォームであるWeChatやDouyinは、サードパーティの開発者にデータを提供しない。AIラボは結果として低品質なデータソースで訓練を余儀なくされる。
元記事によれば、中国の開発者はすでに西側の開発者よりも「有用なトークン1単位あたりのコスト」が高くなっているという。モデルが少ない母国語データでより多くの処理をこなさなければならないためだ。
北京の対応:データを戦略インフラとして位置づける
中国政府も事態を静観しているわけではない。2025年6月、国家データ局(National Data Administration)は2028年までに検証済みAI訓練データセットを国家規模で整備する計画を発表した。対象領域は製造、エネルギー、医療、金融、農業、自動運転、そして「エンボディドAI(身体性AI)」と幅広い。
国営機関・中国情報通信研究院(CAICT)の于暁輝院長は「AI時代の競争はモデルと計算能力だけではなく、高品質データの供給体制にある」と述べた。清華大学のコンピュータ科学者・孫茂松氏は、歴史的アーカイブ、古代写本、科学文献、地方方言のデジタル化を当局に促している。
出版業界が「扉を閉め始めている」
一方、コンテンツ供給側は逆の方向に動いている。華夏出版社は最近、新しい翻訳書に次の警告文を追加した:
「本書の内容を人工知能の訓練に使用することを禁じる。違反者は法的責任を追及される。」
米国ではAnthropicの「Project Panama」が、数百万冊の物理的な書籍を購入・裁断してスキャンするという手法で訓練データを確保している。対して中国は、ウェブの1.3%と、今まさに扉を閉めようとしている出版業界という状況に直面している。
半導体規制より根深い可能性
チップ不足は政策や技術投資で部分的に対処できる。だがデータ不足は、言語そのものの希少性と、閉じたプラットフォームエコシステム、そして訓練利用を拒む権利者の意向が複合した問題だ。
中国がAnthropicのような先端モデルに追いつけていない要因の一部を、このデータ格差が説明している。国家主導のデータ整備計画が軌道に乗るまでの間、データ調達コストの高さは中国AIラボの開発速度・モデル品質の双方に影響し続ける可能性が高い。規制や補助金で対処しやすいチップ問題と異なり、言語の希少性とプラットフォームの閉鎖性は短期間での解消が難しく、中長期的な構造問題として中国のAI競争力に影を落とすだろう。
詳細はChina's new AI bottleneck isn't chips. It's running out of Chinese-language training data.を参照していただきたい。