8月8日、The Next Webが「Cloudflare built a browser for AI agents. It uses 7x less memory than Chromium and runs entirely on Workers.」と題した記事を公開した。CloudflareがAIエージェント専用ブラウザ「Kitesurf」をスクラッチで開発し、無償ベータとして公開したことについて詳しく紹介されている。
Chromiumの7分の1のメモリ消費——なぜ「人間向けブラウザ」では足りないのか
AIエージェントによるWebトラフィックが過去1年で約8,000%増加した今、Chromiumをベースにしたヘッドレスブラウザを「人間向けのツールをAI用に流用する」という構成は限界に近づいている。Cloudflareはこの問題に対して、AIエージェント専用ブラウザ「Kitesurf」をスクラッチで開発することで応えた。
Kitesurf は**Cloudflare Workers**(CloudflareのエッジランタイムでJavaScript/Wasmを実行できるサーバーレス環境)上で完全動作し、実装言語はRust。WebAssembly(Wasm)にコンパイルされて動く。設計思想はシンプルで、「人間のブラウザに必要だがエージェントには不要なもの」を徹底的に取り除くことだ。具体的には、タブ、拡張機能、テーマ、ピクセルパーフェクトなレンダリング、60fpsのスクロールといった機能がすべて削ぎ落とされている。
性能数値の詳細
14URLのテストコーパスを使った計測結果は以下の通りだ。
| 指標 | Kitesurf vs Chromium |
|---|---|
| スクリーンショット取得時のCPU使用量 | 3.1倍少ない |
| HTML抽出時のCPU使用量 | 3.8倍少ない |
| スクリーンショット取得時のメモリ消費 | 4.7倍少ない |
| HTML抽出時のメモリ消費 | 7倍少ない |
一方で、実行時間(wall-clock time)はChromiumの方が約1.7倍速い。KitesurfはRust製のソフトウェアレンダラをWasm上で動かす構造上、起動・処理のオーバーヘッドがChromiumより大きく、ページ処理そのものの速度では劣る。ただし、インフラのコストを左右するのはCPUとメモリであり、この観点では圧倒的に有利だ。リソース消費が下がれば、同一コストでより多くのエージェントセッションを並列実行できる。
12週間で215,000件以上のWeb Platform Testsをパス、既存ツールとの互換性も確保
最初のコミットから公開ベータまでの開発期間はわずか12週間。現時点でWeb Platform Tests(WPT)を215,000件以上パスしており、毎週数百件ずつ追加されている。WPTはブラウザのWeb標準準拠を検証するテストスイートで、エンジンの実装品質を測る業界標準の指標だ。
セキュリティモデルもエージェント向けに設計されている。すべてのページロードを「信頼できない入力」として扱い、各セッションをステートレスに保ち、全コンポーネントを分離する。これはエージェントが実際に動作する方式と一致している。
既存ツールとの互換性も押さえられており、KitesurfはPuppeteer、Playwright、そして**CDP(Chrome DevTools Protocol)(Chromeが提供するブラウザ操作・デバッグ用プロトコル。自動化ツールがブラウザを外部からコントロールする際の標準インターフェース)を話す任意のMCPクライアントと動作する。現在はBrowser Run**製品内で無償ベータとして提供中だ。将来的にはオープンソース化も予定されており、顧客が自分のアカウント上に独自インスタンスをデプロイできるようにする計画もある。
Cloudflareの「二重の賭け」
この動きはCloudflareの戦略の二面性を示している。Cloudflareは同時に、対価を支払わずコンテンツを収集するAIクローラーのブロック機能も提供している(関連記事)。要するに「コンテンツを奪うボットからは取り、ちゃんと機能するボットには安価な専用ツールを渡す」という構図だ。ボットがWebトラフィックの過半数を占める状況を前提に、インフラレイヤーで両側からマネタイズしようとしている。
詳細はCloudflare built a browser for AI agents. It uses 7x less memory than Chromium and runs entirely on Workers.を参照していただきたい。