8月9日、Futurismが「Time Magazine Now Running Ads Meant Specifically to Influence AI Agents」と題した記事を公開した。TIME誌が、人間ではなくAIエージェントを対象とした広告配信を開始した。「AIに影響を与えれば、そのAIを使う全ユーザーに届く」という論理のもと、広告業界のパラダイムシフトを象徴する新たなビジネスモデルの模索が始まっている。
AIエージェントが人間より多くページを閲覧する時代
TIME誌は現在、人間よりもボットの方がページを多く閲覧しているという状況に直面している。Cloudflareが6月に発表したデータでは、AIエージェントやボットによるWebトラフィックが、人間によるトラフィックを初めて上回った。TIME誌においても、ほとんどの日においてボットのクロール数が人間のアクセス数を超えているという。
こうした環境の変化を受け、TIME誌が打ち出したのが、AIエージェント向けに最適化された広告だ。業界メディアのDigidayが報じた内容によれば、すでにオンラインバンキングサービスのAlly BankやNPOのProject Management Instituteなどが広告主として参加している。
どういう仕組みか
TIME誌は先月から、通常のHTML形式のWebページに並行して、Markdown形式のテキストのみのページを提供し始めた。Markdownはニューラルネットワークベースの大規模言語モデル(LLM)が解析しやすい形式であり、AIエージェントが情報を「食べやすい」構造になっている。
このMarkdownページ上に掲載される広告は、ブランドの情報やメッセージをFAQ形式にまとめたもので、「スポンサーコンテンツ」とラベルが付けられる。広告自体もAIを使って生成されているとDigidayは伝えている。
TIME誌が狙うのは、いわゆる**GEO(Generative Engine Optimization)**市場だ。GEOとはSEO(検索エンジン最適化)のAI時代版で、AIが生成する回答の中で特定のブランドが言及されやすくなるよう最適化する手法を指す。元記事ではChatGPTを中心に言及されており、AIアシスタント全般を対象とした概念として紹介されている。
「ChatGPTに影響を与えれば、全ユーザーに届く」
この取り組みに関与するMobian(AIマーケティング関連企業)の共同創業者兼CEOであるJonah Goodhartは、Digidayに対して次のように述べている。
「人間に影響を与えた場合、影響するのは1人だ。しかしChatGPTに影響を与えれば、ChatGPT全体のユーザーに届く可能性がある。ChatGPTがあるブランドについて語る内容が変われば、それは巨大な効果であり、単一のキャンペーンが達成できる規模を超える。」
また、こう続ける。
「LLMやAIはブランドに関する信頼性の高い情報を求めている。私たちはそれをシンプルで分かりやすい形で提供しているだけだ。」
TIME誌COOのMark Howardも「これはまったく新しい取り組みであり、私たちが最初の道を切り開いていると確信している」とDigidayにコメントしている。
リスクと不確実性
この戦略がうまくいく保証はない。Digidayが指摘するように、プラットフォームがAI向けの広告スパムにペナルティを課したり、人間向けページと異なるMarkdownページの配信をルール違反と見なしたりすれば、逆効果になる可能性もある。
そもそもTIME誌がこのような実験に踏み切った背景には、オンラインメディア業界全体が置かれた厳しい状況がある。GoogleのAI Overview(AI生成要約)がユーザーを外部サイトへ誘導しなくなったことで、多くのメディアが検索流入の大幅な減少に苦しんでいる。人員削減も業界全体で続いており、新たな収益源の模索は喫緊の課題だ。
AIエージェントを広告ターゲットとするモデルが業界標準になるかは未知数だが、人間ではなくAIに対してブランドを売り込むという発想は、広告業界の根本的な変化を象徴する動きとして位置づけられる。
詳細はTime Magazine Now Running Ads Meant Specifically to Influence AI Agentsを参照していただきたい。