8月9日、Runtime Wireが「OpenAI acquires NextSlide as ChatGPT expands into PowerPoint」と題した記事を公開した。OpenAIがAIプレゼン作成スタートアップNextSlideを買収し、ChatGPTのPowerPoint対応を本格強化する——この動きは、GammaやBeautiful.aiといった競合が先行するAIプレゼン市場にOpenAIが正面から切り込む意志を示すものだ。
ChatGPTをPowerPointの「編集ツール」にする
OpenAIは、AIプレゼン作成ツール「NextSlide」を買収した。NextSlide創業者のAhmed Beshryによる発表によれば、NextSlideのチームはすでにOpenAIに合流し、ChatGPTの開発に携わっている。買収額は非公開。
NextSlideは創業からわずか1年強のスタートアップで、プロンプトやメモ、既存ドキュメントを入力として受け取り、編集可能なスライドを生成するプロダクトを開発していた。「プレゼン作成がデザインスキルに依存すべきでない」という考えを起点に、レイアウトやグラフ、テキストを自由に修正できる編集レイヤーを備えていた点が特徴だ。
AIによるスライド生成ツールは多く存在するが、多くは見た目のよいスライド画像を生成するだけで、ビジネス用途に必要な繰り返しの修正——テキスト、グラフ、ブランドガイドライン対応、ソース素材の差し替え——には対応しきれていない。NextSlideはその編集可能性を中心に設計されていた。この「生成して終わり」ではなく「生成してから直せる」という設計思想は、GammaやBeautiful.aiといった先行ツールがいまだ完全には解決できていない課題でもある。
OpenAIはすでにPowerPoint製品を持っている
今回の買収が興味深いのは、OpenAIがすでにChatGPT for PowerPointを提供している点だ。Microsoft PowerPoint内で動作するこの機能は、ソース素材からのスライド生成、スライドの追加・修正、構成の評価、特定オーディエンス向けの調整などを行える。背景として、OpenAIとMicrosoftは2023年以降の大規模な戦略的提携のもとでMicrosoft 365製品群へのAI統合を進めており、PowerPoint対応もその一環だ。
OpenAI自身のドキュメントでも、テンプレート遵守、書式設定、グラフ作成、スライドの高度な管理といった領域が「制限あり、または開発中」とされている。NextSlideのチームはまさにこれらの課題に1年間集中してきた。今回の買収は、既存製品の穴を埋める人員・技術の獲得として機能する。
繰り返し売却を成功させた創業者
Beshryにとって今回はキャリア2度目のスタートアップ売却となる。前職ではYコンビネーター(W2016バッチ)出身のCaperを共同創業。カメラとコンピュータビジョンを搭載したスマートショッピングカートを開発し、2021年10月にInstacartへ売却した。元記事はこの売却額について3億5000万ドル(現金・株式)と記載しているが、同記事はその情報源としてThe Informationの報道を引用している。
Caperは物理ハードウェアと小売店・決済システムとのインテグレーションが主軸だったが、NextSlideはオフィスワークフローに組み込まれた生成AIという、まったく異なる市場だった。それでも両プロダクトに共通するのは「専門スキルなしに日常業務を完結させる」というアプローチだ。
「会話」から「完成品の生成」へ
OpenAIはChatGPTをシンプルな対話インターフェースから、ドキュメント・スプレッドシート・コードといったプロフェッショナルツール全体にまたがる多段階ワークフローのエンジンへと転換しようとしている。プレゼンテーションはその中でも、テキスト回答だけでは不十分な典型的な出力形式だ——ユーザーには構造、視覚的階層、そして引き続き編集できるファイルが必要になる。
NextSlideが短命なスタートアップであることを考えると、今回の取引はいわゆるアクハイア(acqui-hire)——プロダクトそのものよりも、特定の問題を深く解き続けてきたチームや技術を獲得することを主目的とした買収——に近い性格を持つ。買収発表には収益・顧客数・調達額のいずれも記載がなく、プロダクトが市場で独立したビジネスとして成熟していたとは言いにくい。それでもOpenAIが手を伸ばした理由は、同じ問題を1年間解き続けてきたチームを内部に取り込む価値にある。
詳細はOpenAI acquires NextSlide as ChatGPT expands into PowerPointを参照していただきたい。