8月7日、The Next Platformが「Google Builds A New Gemini Model Team As AI Investments Accelerate」と題した記事を公開した。GoogleがGeminiモデル開発体制を刷新し、AI投資をさらに加速させている状況について詳しく報じている。
Jeff Deanが去り、DeepMind主導体制へ
今回の組織改編の核心は、Jeff Deanの退職だ。Deanは27年にわたりGoogleに在籍し、MapReduce、Bigtable、Spannerといったコアインフラを設計、2011年にGoogle Brainを創設、TPUとTensorFlowを生み出した人物である。Geminiプロジェクトの共同リーダーも務めており、いわばGoogleのAI研究の象徴的存在だった。
そのDeanが27年間勤めたGoogleを離れ、科学研究のワークフローをAIで自動化するスタートアップ「Discovery Loop」の設立に向かう。しかも単独ではなく、主要AI研究者2名を連れて行く形となった。
- Quoc Le:Google Brainの共同創設者
- Sanjay Ghemawat:Google Senior Fellow、長年インフラ設計を担当
なお、記事ではOriol Vinyalsについても言及されているが、同氏はDeepMind在籍者としてGeminiの共同リードを務めており、Discovery Loop転出組ではなく後任体制側の文脈で紹介されている点は注記が必要だ。
記事では「GoogleはDiscovery Loopに投資しており、表向きは友好的な別れだ」と書かれているが、著者は「GoogleはGeminiの現チームへの不満から、新チームを構築しているのは明らかだ」と直言している。
後任の布陣は次のとおりだ。
- Demis Hassabis(DeepMind共同創業者・元CEO)→ DeepMind会長に昇格し、Chief Scientistポストを兼務
- Koray Kavukcuoglu(元DeepMind CTO)→ Chief AI Architectに就任し、Geminiモデルの開発責任者へ
- Amin Vahdat(AI Infrastructure担当CTO)→ SVPとしてインフラ全体を掌握
「DeepMindがGoogle Brainに勝った」
記事が指摘する構造的な問題として、Google BrainとDeepMindという2つのAI研究組織が長年並立してきたことがある。表向きは棲み分けがあるとされてきたが、著者は「今回の人事を見る限り、DeepMindが勝ち、Google Brainはビルを去った」と結論づけている。
AGIに向けた競争では「研究をできるだけ早くプロダクションに落とす」ことが求められる。派閥争いや縄張り意識は致命的なロスになる。Gemini 3.5 Proは今年5月に発表され6月出荷予定だったが、現時点でまだリリースされておらず、出荷日も未定という状況だ。AnthropicのClaudeやOpenAIのGPTに対して遅れをとっている現実が、今回の刷新の背景にある。
今回の体制変更の本質は、研究の内製競合を解消し、DeepMind主導で開発・プロダクション移行を一元管理できる体制への移行だ。Chief AI ArchitectというKavukcuogluの新ポストが、その中心に位置づけられている。
投資規模:capex上限を$205Bに引き上げ
組織改編と並行して、Googleの資本支出(capex)も膨らんでいる。
2026年のcapex上限は当初の**$190Bから$205Bへ引き上げられた。第2四半期だけで$44.92Bを投じており、その内訳はサーバーが約60%($26.95B)、データセンターとネットワークが約40%($17.97B)。この額は前年同期のほぼ2倍**にあたる。
さらに今週、Googleは**$25Bの社債発行**を計画していると報じられている。
Google Cloudのバックログは**$514B**(前年同期比4.75倍)に達しており、このcapex水準はバックログの急拡大に引っ張られている形だ。
Google Cloudの業績:過去最高水準
こうした巨額投資の一方で、AI投資の回収も着実に進んでいる。
| 指標 | Q2 2026 | 前年比 |
|---|---|---|
| Google Cloud売上 | $24.77B | +81.8% |
| Cloud営業利益 | $8.81B | 3.1倍 |
| 営業利益率 | 35.6% | 過去最高 |
Google Cloud全体の売上比率も**20.7%**と過去最高を更新した。記事はこの急成長を、組織刷新の「なぜ今か」を説明する文脈として位置づけている。クラウドのバックログと収益が急拡大しているからこそ、Geminiの開発遅延は看過できない問題となっており、それが体制一新の直接的な引き金になったと読める。
なお、Alphabet全体の純利益は$112.11Bと前年比約4倍に見えるが、このうち$77.1BはSpaceX株(評価額$94B)やAnthropicへの出資など投資益によるものだ。実質的な事業利益は**$35B程度**とみられる。
組織として見ると、今回の改編はAI競争における「選択と集中」の意思表示だ。Google Brainを事実上解体してDeepMind主導に一本化し、インフラと研究をそれぞれ専任のSVPとChief AI Architectに委ねる体制は、組織の重心をより明確に研究からプロダクションへシフトさせるものだ。Gemini 3.5 Proがいつ出てくるかが、この新体制の最初の試金石になるだろう。
詳細はGoogle Builds A New Gemini Model Team As AI Investments Accelerateを参照していただきたい。