8月7日、PYMNTSが「DeepSeek Resumes Funding Round to Raise $8 Billion」と題した記事を公開した。中国AIスタートアップのDeepSeekが約80億ドルの資金調達ラウンドを再開し、企業評価額が約740億ドルに達する見通しだという。創業者の発言とされる文書流出によって一時停止した調達劇が再び動き出した格好で、IPOへ向けた布石としても注目される。
わずか数週間で一時停止→再開、急ピッチな資金調達の背景
Bloombergの報道(8月6日付)によれば、DeepSeekは第2回目の資金調達ラウンドを再開し、約80億ドルの調達を目指している。企業評価額は約740億ドルとされており、交渉は現在進行中で詳細は変わる可能性があるという。
この調達劇は目まぐるしい展開をたどっている。時系列を整理すると以下のようになる。
- 5月末:第1回調達ラウンド完了。70億ドルを調達、評価額は520億ドル
- 7月14日:第2回調達ラウンドの予備的協議を開始との報道。評価額は約710億ドル(前ラウンド比37%増)
- 7月25日:創業者・梁文鋒(Liang Wenfeng)氏に帰属するとされる発言が拡散し、ラウンドを一時停止
- 8月6日:ラウンド再開と報道
第1ラウンド完了から第2ラウンド再開まで約2〜3ヶ月という急ピッチだ。記事によれば、この速さは自社データセンターの建設とチップ調達に必要な資本の増大を見越したものだという。AIインフラへの投資競争が激化するなか、DeepSeekも例外なく巨額の設備投資を迫られている構図が見える。
一時停止の引き金となった「梁文鋒氏のものとされる発言」
7月25日にラウンドが停止した直接のきっかけは、梁文鋒氏が不特定の関係者と行った会議の議事録とされる文書の流出だ。そこにはNvidiaチップへの依存や、AI技術の洗練度において中国が米国に後れを取っているという内容が含まれていたとされる。ただし、この内容が本当に梁氏の発言であるかは未確認であり、DeepSeekはPYMNTSのコメント要請にも回答していない。
発言の真偽はともかく、米中のAI技術格差や対中輸出規制(BIS輸出管理規制)によるチップ調達の制約は、DeepSeekが公式に認めてきた課題でもある。文書の内容がセンシティブだったことが、一時的とはいえ投資家との交渉を止めるほどの影響を与えたとみられる。
V4 FlashとIPO視野に入る収益基盤
ラウンド再開の背景には、直近のモデルリリースの好評もある。DeepSeekが公開したV4 Flashは、コストパフォーマンスの高さで注目を集め、2025年初頭に同社を一躍有名にした先代モデルと同様の反響を得ているという。
収益面では、7月15日の報道で年間換算収益が4〜5億ドルに達していることが明らかになっていた。その大半はAPIを通じたクラウドベースのモデルアクセス販売によるものだ。この収益基盤が、数十億ドル規模の調達とIPO(新規株式公開)への道筋を後押ししている。AIスタートアップがIPOを目指す際に収益の持続性が問われることを踏まえると、API課金モデルによる安定収益はDeepSeekにとって重要な訴求点となる。
なぜDeepSeekがここまで注目されるのか
DeepSeekが最初に世界的な注目を集めたのは2025年1月、OpenAIやMetaと同等の性能を持つとされるAIモデルを、大幅に少ないNvidiaチップで実現したと発表したときだ。このニュースは米国のテック株を急落させるほどの衝撃を与え、「AIに莫大な設備投資が必要」という前提そのものを揺るがした。当時の市場へのインパクトについては、Wall Street Journalの報道なども参照されたい。
その後も同社はオープンソース戦略を維持しつつ商用APIで収益を上げるモデルを採用しており、OpenAIやAnthropicとは異なるポジショニングで存在感を高めてきた。今回の80億ドル調達が完了すれば、DeepSeekは評価額740億ドルのAI企業として、グローバルな資金競争でも確固たる地位を占めることになる。ただし、交渉は継続中であり、条件は変わる可能性がある点には留意が必要だ。
詳細はDeepSeek Resumes Funding Round to Raise $8 Billionを参照していただきたい。