8月6日、Dataconomyが「Demis Hassabis to step down as Google DeepMind CEO」と題した記事を公開した。ノーベル化学賞受賞研究の基盤となったAlphaFoldを生み出し、現代AIブームの象徴的存在でもあるDemis Hassabis氏が経営トップの座を離れる。Google DeepMindにとって創業以来初となる大規模なトップ人事であり、AI業界全体の構造変化を読み解く上でも見逃せない動向だ。
HassabisがCEOを退任、会長・チーフサイエンティストへ
Demis Hassabis氏がGoogle DeepMindのCEOを退任する。Hassabis氏は2010年からDeepMindを率いてきた共同創業者であり、退任後はGoogle DeepMindの会長(Chairman)に就くほか、Alphabetのチーフサイエンティストの肩書きも新たに持つ。製薬系スピンオフであるIsomorphic Labsの運営は引き続き担当する。
後任のCEO業務は、現在Google DeepMindのCTO(最高技術責任者)を務めるKoray Kavukcuoglu氏が引き継ぐ。Kavukcuoglu氏はDeepMindの研究部門を長年リードしてきた人物で、強化学習や深層学習の基礎研究から応用まで幅広く関与してきた実績を持つ。シニアバイスプレジデントとして、AlphabetのCEO Sundar Pichai氏に直接報告する形となる。DeepMindがCEOと分離した会長ポストを設けるのは、これが初めてだ。
Hassabis氏自身はAlphabetに留まり続ける点は強調しておきたい。今回はあくまでも役割の転換であり、日常的な経営オペレーションから離れてより研究・科学戦略の監督に専念する形への移行だ。
Jeff DeanもAlphabetを離脱、新スタートアップ「Discovery Loop」設立へ
この人事と同時に、AlphabetのチーフサイエンティストであるJeff Dean氏も会社を去ることが明らかになった。Dean氏が設立する新会社はDiscovery Loopといい、Googleは同社に出資するとともにクラウドプロバイダーとして支援する(出資額は非公開)。
Discovery Loopのミッションは、人間の介入をほとんど必要とせず自律的に改善するAIモデルの構築だ。Dean氏はNew York Timesのインタビューで次のように語っている。
「AIが、これまで非常に人手のかかっていた実験サイクルをより完全に自動化できる機会があると考えている」
Hassabis氏のAlphabetチーフサイエンティスト就任は、Dean氏の後継という側面もある。
AlphaFoldチームの解散と、Anthropicへの最大400億ドル出資
組織再編はDeepMind内部にも及んでいる。Googleは最近、AlphaFoldチームを解散した。メンバーの一部は社内の別部署に異動し、残りは退社したという。
AlphaFoldはアミノ酸配列からタンパク質の3次元構造を数分で予測するAIシステムで、従来は数年を要していた作業を置き換えた。アルツハイマーやパーキンソン病などの神経変性疾患の治療薬開発にも活用されており、関連研究はノーベル化学賞を受賞している。AlphaFoldがDeepMindの看板プロジェクトだっただけに、チーム解散は象徴的な変化といえる。
また、Googleは競合他社でもあるAnthropicに最大400億ドルを投資する計画も明らかにしている。内訳は今年4月に実施済みの100億ドルと、業績連動型の追加300億ドルだ。
何が変わるのか
Hassabis氏はDeepMindの創業以来、研究と経営の両輪を担ってきた人物だ。その彼がオペレーション面の権限をKavukcuoglu氏に委ね、自身は研究・科学面の監督役に専念する形は、DeepMindが「研究機関」から「製品・事業組織」としての比重を高めているフェーズにある、という読み方もできる。Jeff Dean氏の離脱と合わせ、Google AI部門のトップ層が短期間に大きく入れ替わっている点は、業界全体への影響という意味でも押さえておきたい動向だ。
詳細はDemis Hassabis to step down as Google DeepMind CEOを参照していただきたい。