8月5日、YKが「Skills vs MCP: when to use which」と題した記事を公開した。AIエージェント開発においてSkillsとMCPのどちらを使うべきかの判断基準について、5つのシチュエーション別に整理した内容だ。
「どちらが勝つか」という問いは間違いで、正しい問いは「この機能にはSkillsとMCPのどちらを使うか」だ。記事はこの前提から出発し、5つのシチュエーション別に判定基準を示している。結論から言えば、SkillsはKnowledge(知識)、MCPはAccess(アクセス)を担うものであり、成熟したエージェント設計では両方を使う。
Skillsとは何か
Skillsは、SKILL.mdというファイルを含むフォルダで構成される。YAMLフロントマターにnameとdescriptionを書き、あとはMarkdownで手順を記述する形式だ。2025年10月にAnthropicが公開し、同年12月にオープン標準(agentskills.io)として公開。現在はOpenAIのCodex、GitHub Copilot、VS Code、Cursorなど44のクライアントが対応している。
設計上の重要なポイントがProgressive Disclosure(段階的開示)だ。通常時はSkillの名前と説明文だけがコンテキストに載り、タスクにマッチしたときだけSKILL.mdの全文を読み込む仕組みになっている。数百のSkillを持っていても、使っていないものはほぼコストゼロで運用できる点が大きな利点だ。
MCPとは何か
Model Context Protocolは2024年11月にAnthropicが公開し、1年後にLinux Foundationへ寄贈したオープンプロトコル。サーバーがJSON Schema付きのツール(関数)を公開し、MCPに対応したクライアントがそれを呼び出す仕組みだ。ローカルではstdio、リモートではHTTP+OAuth 2.1で通信する。「エディタとプログラミング言語が話すLSP(Language Server Protocol)の、エージェント版」と記事は表現している。
公式SDKのダウンロード数は月間約5億回に達し、2026年7月28日には大規模な仕様改定でプロトコルがステートレス化された。
シチュエーション別の判定
チームの「やり方」を教えたい → Skills
ポストモーテムの書き方、リリースチェックリスト、SQL命名規則——こうした手順的な知識はSkillsの独壇場だ。
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name: postmortem-writer
description: Write incident postmortems following our team's format and tone
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# Writing a postmortem
Use the template in references/template.md. Sections in this order:
impact, timeline, root cause, what went well, action items.
Blameless tone: name systems, not people.
MCPにもpromptsという機能があるが、これは人間がスラッシュコマンドで選ぶ穴埋めテンプレートであり、エージェントが自律的にタスク中に発見して従うものではない。手順的知識の伝達はSkillsの役割だ。
外部システムへの安全なアクセスが必要 → MCP
本番DB、CRM、SSO配下のチケットシステムへのアクセスが必要なら、MCPを使う。SkillsでもghコマンドのようなCLIを通じて間接的に外部システムへ到達できるが、それはエージェントが既存のシェル環境を借りる形だ。MCPはサーバー自身が接続を管理し、OAuth経由でスコープを制限し、モデルがクレデンシャルに直接触れない構造になっている。シェルが存在しないWebチャット環境でも動作する。
コンテキストウィンドウを節約したい → Skills(MCPは追いつき中)
MCPサーバーを10〜20個繋ぐと、各サーバーが全ツールのJSON Schemaを一括展開するため、最初のユーザーメッセージ前にコンテキストを食い尽くす。GitHubの公式MCPサーバーが数万トークンを消費することで有名になったのもその一例だ。
Skillsは未使用時のコンテキスト消費が小さく済む設計になっている。MCPはDeferred Tool Loading(クライアント側インデックスにスキーマを保持し、エージェントが検索したものだけロードする方式)で対応しているが、これはプロトコルの外側で実装されるものだ。Anthropicの「Tool Search Tool」は約85%のコンテキスト削減を報告している。
セキュリティと統制が重要 → MCP
ここでは天秤がMCP側に傾く。Skillsは命令テキストにスクリプトを同梱でき、エージェントはそれを実行する。Snykが2つのパブリックレジストリから約4,000のSkillをスキャンしたところ、3分の1以上にセキュリティ上の問題があり、76件の悪意あるペイロード(認証情報窃取・バックドア・データ流出目的)が確認された。
MCPにも供給チェーンのリスクはあるが、ツール呼び出しが構造化されたリクエストであるため、ゲートウェイでのログ記録・許可・拒否が容易だ。新しい仕様ではOAuthフローに組織のIdPを組み込めるため、会社単位でエージェントが利用可能なサーバーを中央管理できる。
組み合わせて使う → 両方
Anthropicの最初の発表から示されていた設計思想がこれだ。MCPがコネクションを提供し、Skillsがその使い方の判断を提供する。 データウェアハウスへのMCPサーバーがあっても、どのテーブルが重要か、「アクティブユーザー」が何を意味するかを知らなければ、エージェントは的外れなクエリを投げ続ける。その判断をSkillsが担う。
Google Cloudでの対応状況
記事ではGoogle CloudにおけるSkillsとMCPそれぞれの対応状況についても整理されている。
- Skills: Antigravityが
SKILL.mdをネイティブ読み込み、ADK(Agent Development Kit)が実験的サポートを提供。Google公式のSkillsリポジトリも公開済み。 - MCP: ほぼ全Google Cloudサービスが
<service>.googleapis.com/mcpでマネージドMCPサーバーを提供。MCP Toolboxは約40のデータベースをカバー。Cloud RunではリモートサーバーをホストすることもできるData系サービスと連携させることが想定されている。 - Agent Registry: MCPサーバーとSkillsをフラットに並べてカタログ管理できる仕組みが提供されており、両者を統一的に運用する基盤として機能する。
両者の対応が進む中で、Google CloudはSkillsとMCPを排他的な選択肢としてではなく、役割の異なる補完的なレイヤーとして位置付けていることが読み取れる。
詳細はSkills vs MCP: when to use whichを参照していただきたい。