8月5日、Ed Zitronが「The AI Demand Bubble」と題した記事を公開した。Amazon・Microsoft・GoogleのAI収益の大半は、各社自身が出資するAnthropicとOpenAIという2社の赤字スタートアップの支出によって支えられている——Zitronはこの循環構造を詳細なアナリスト推計とともに示し、「ハイパースケーラーのAI成長は実需を伴わない」と断言する。Zitronは「Where's Your Ed At」という批評系ニュースレターの著者であり、テック大手のビジネス実態に対して一貫して批判的なスタンスをとる論者として知られる。その論調を踏まえたうえで、以下の内容を読んでいただきたい。
「AIの賭けは報われた」——その数字の裏側
2026年7月末の決算シーズン、BloombergやYahoo FinanceはAmazon・Google・MicrosoftのAIへの投資が「実を結んだ」と相次いで報じた。各社のクラウド部門は記録的な収益成長を達成した。
だがZitronはこう問う。各社はAI収益を単独で開示していない。Microsoftに至っては、Q3 FY2026で「AI年換算収益は370億ドル(月約30億ドル)」と発表しておきながら、Q4ではAI単独の数字を一切出さなかった。全体のトップラインが好調であれば、記者やアナリストがそれ以上掘り下げないと踏んだからだ。
さらに、各社は値上げや強制的なAI機能バンドル(Google WorkspaceへのGemini組み込みなど)によって収益を底上げし、「AIが収益を押し上げた」という見せ方をしている。ユーザーの同意なしにコストを転嫁し、それをウォール街向けの「AI成功」として演出している構図だ。
核心:AI収益の7割超はAnthropicとOpenAIの2社
ここが本稿の最も重要な指摘だ。
Zitronが元記事中で引用するバークレイズのアナリスト、Ross Sandlerの推計によれば、AmazonのAI収益のうち73%(2026・2027年)、75%(2028年)はAnthropicとOpenAIの2社が占める。
- Anthropicの推定支出:2026年141億ドル → 2027年253億ドル → 2028年358億ドル
- OpenAIの推定支出:2026年90億ドル → 2027年150億ドル → 2028年200億ドル
Amazonは2026年に2200億ドルの設備投資を予定しており、その大半はAnthropicへのコンピュート提供のためとみられる。なおAnthropicの資金調達規模については、元記事の数字を正確に反映する形で記載しているが、読者は原文の該当箇所を直接確認されることを推奨する。
Googleについても同様の構図が指摘されている。Zitronが元記事中で引用するUBSのアナリスト、Stephen Juの推計では、2026年のGoogle Cloud収益の28%、2027年では48%以上がAnthropicとOpenAIの2社から来ると試算されている。BloombergインテリジェンスのGoogle Cloud収益コンセンサス(2026年:1059億ドル、2027年:1738億ドル)をベースにすると、OpenAIとAnthropicの貢献分は2026年で294億ドル、2027年で846億ドルに達する計算だ。
Microsoftについては、Zitronが元記事中で引用するWells FargoのMichael TurrinがAI収益の70%以上がAnthropicとOpenAI由来と推計している。Microsoft 365のAI収益は、OpenAIの売上から得るレベニューシェアをかろうじて上回る程度に過ぎないという。
Azureは前年比41%成長を達成したが、そのうち40%以上の成長がOpenAIとAnthropicの支出によるものとされる。
循環する資金の構造
この構図の歪さはさらに深い。
各ハイパースケーラーはAnthropicやOpenAIに出資し、そのカネがコンピュート費用として自社クラウドに戻ってくる。Googleは過去7ヶ月でAnthropicに最大400億ドルを投じると表明し、その翌週にはAmazonが50億ドルを追加拠出した。
Microsoftは専用データセンター「Fairwater」をOpenAI向けに確保しており、あるMicrosoft幹部はMusk対Altman訴訟の法廷で「OpenAIとの関係に1000億ドル以上を費やした」と証言している。Googleに至っては、自社製TPUをAnthropicに売り、それをGoogle建設のデータセンターに設置し、Anthropicに貸し出すという350億ドル規模の複雑な取引まで組成している。
つまり図式はこうだ:
- ハイパースケーラーがAnthropicやOpenAIに出資する
- 両社はその資金でコンピュートを購入する(支払先は出資したハイパースケーラー)
- ハイパースケーラーはそれを「AI収益成長」として投資家に報告する
- 好調な決算を受けてさらなる投資が集まり、循環が続く
Zitronはこれを「AnthropicとOpenAIのコンピュート支出を除けば、Google・Microsoft・Amazonに実質的なAIビジネスがあるか自信がない」と断言している。
両社の財務的持続可能性と市場全体へのリスク
この構造の脆弱性は、AnthropicとOpenAIが「利益を出せない企業」である点に集約される。Zitronによれば、OpenAIは2026年のコンピュート支出を500億ドルと見込んでいたが、過去の実績から自社コスト・損失を過少申告する傾向があるという。
ハイパースケーラーが「記録的なAI需要」として投資家に喧伝している収益成長は、VC資金と自社からの出資で生き延びている2社のスタートアップによる支出に依存している。循環構造セクションで示した資金の流れと本質的に同一の問題だが、財務面での含意はより直截だ。AnthropicまたはOpenAIが資金調達に躓いた場合、その影響はこの2社にとどまらない。クラウド大手3社が「AI需要の成長」として開示してきた収益の相当部分が同時に消滅するリスクがあり、それが市場のAI投資評価全体を揺るがす可能性をZitronは示唆している。
詳細はThe AI Demand Bubbleを参照していただきたい。