8月4日、Futurismが「Tech Companies Are Setting Themselves on Fire to Keep Up in the AI Race」と題した記事を公開した。タイトルにある「setting themselves on fire(自らに火を放つ)」という過激なメタファーが示す通り、この記事はAI競争に乗り遅れまいとするテック大手各社が、記録的な収益を上げながらも手元資金を急速に失いつつある構造的矛盾を鋭く描き出している。自社を焼き尽くしてでも前に進もうとする——そのくらいの覚悟と無謀さが現在のAI投資競争には漂っている、というのが記事全体のトーンだ。
増収なのにキャッシュがない、という逆説
直近の四半期決算だけを見れば、テック企業は絶好調だ。前年同期比で大幅な増収を記録している。
ところが、その裏側では深刻な問題が進行している。AI関連の支出が膨張し、フリーキャッシュフロー(営業活動によって得られたキャッシュから設備投資等を差し引いた後に手元に残る現金であり、企業の実質的な財務体力を示す指標)がほぼゼロに近づきつつあるのだ。
S&Pグローバル・マーケット・インテリジェンスがまとめたデータによれば、Google、Meta、Oracleを含む主要AI企業5社のフリーキャッシュフローは、2027年には合計でマイナス1,250億ドルに達する見込みだ。S&Pグローバル・マーケット・インテリジェンスは、S&Pグローバルの傘下にある金融データ・分析部門であり、企業財務や市場動向の調査で広く参照される機関だ。Washington Postが報じたこの数字は、経営陣がAI競争に勝ち残るためにどこまでリスクを取るつもりかを如実に示している。
しかも、このS&Pの分析は最新の第2四半期決算を織り込む前のものだ。AmazonとGoogleはいずれも7月に、AI投資をさらに拡大する方針を表明しており、すでに動揺していた投資家をさらに困惑させた。実際の着地点は、この見込みをさらに悪化させる可能性がある。
SpaceXは5社の内訳に含まれず——だが、同じ構図の中にある
上述のマイナス1,250億ドルという数字はGoogle、Meta、Oracleなど主要5社を対象としたものであり、SpaceXはその集計には含まれない。ただし、SpaceXもまた同じ「AI競争に乗り遅れまいとするあまり自社を燃やす」構図の中に位置づけられると、記事は指摘している。
Elon MuskのSpaceXは、2026年にAI新興企業xAIと合併した。xAIはMuskが2023年に設立したAI企業であり、大規模言語モデル「Grok」の開発・運営を手がけている。この合併はMuskのAI事業を一本化する動きとして注目を集めたが、同時にSpaceXのAI支出を大幅に押し上げる要因ともなった。
6月のIPO(新規株式公開)後は株価が約30%下落し、同月につけた最高値からは50%安の水準にある。第2四半期の決算発表を控えており、市場の注目が集まっている。
「AI投資は本当に回収できるのか」という疑問
支出拡大の正当化に使われてきた「AIによる生産性向上」という論拠は、少なくとも現時点では大幅に誇張されていたとの見方も出ている。一部の研究者はAI開発の現在の方向性そのものを行き詰まりと評する。
企業側の課題はそれだけではない。AIツールのコストが無視できない水準に達したことで、法人顧客が価格上昇を受け入れなくなりつつある。データセンターの建設に伴う電力価格や電子機器の値上がりは消費者にも波及し、AI向けデータセンターへの反対運動は党派を超えた政治問題にまで発展している。
さらに、AIバブルが崩壊した場合、一般市民の退職後の貯蓄(年金基金等)が道連れになるリスクも指摘されている。投資の恩恵を受けるのは一部の株主や経営陣であっても、損失が顕在化した際のしわ寄せは広く社会に及ぶという非対称性は、AI投資ブームに対する根本的な批判の一つとなっている。
「存続を賭けたギャンブル」
記事タイトルの「setting themselves on fire」というメタファーは、単なる誇張ではない。自社の財務を傷つけてでもAI競争に参加し続けなければ、競合に飲み込まれるという恐怖——その切迫感がこれほどの過剰投資を駆動している、というのが記事の見立てだ。
記事は最後をこう締めくくっている。テック企業は証明すべきことが山積みだ——控えめに言ってもそうだ。各社はAIに多額を投じることで、企業の存続そのものを賭けに出ている。そのベットがこれほどリスクの高いものに見えたことは、かつてなかった。
詳細はTech Companies Are Setting Themselves on Fire to Keep Up in the AI Raceを参照していただきたい。