8月4日、Matthias Bastianが「Interpol says AI has become the "core operational driver of cybercrime" across Africa」と題した記事を公開した。Interpolの最新報告書によれば、アフリカで報告されたサイバー犯罪の55%にAIが関与しており、金銭的被害額は1年で1億9,200万ドルから4億8,400万ドルへと約2.5倍に急拡大した。国際刑事警察機構という信頼性の高い機関が、AIを犯罪活動の「便利なツール」ではなく「中核的な運用ドライバー」と公式に位置付けた点は、セキュリティ業界にとって見過ごせない転換点となる。
AIが関与するサイバー犯罪は55%、被害額は約2.5倍に
Interpolが発表したアフリカサイバー脅威評価報告書2026によれば、アフリカで報告されたサイバー犯罪の55%にAIが関与している。報告書はアフリカ36カ国のデータをもとに分析したものだ。
2025年は、AIがサイバー犯罪者にとって「便利なツール」から「犯罪活動の中核ドライバー」へと質的に転換した年とInterpolは定義している。金銭的被害は2024年の1億9,200万ドルから4億8,400万ドルへと約2.5倍の急拡大を記録した。被害規模の拡大は単なる量的変化ではなく、AIによって攻撃の精度・速度・規模のすべてが底上げされた結果とInterpolは分析している。
攻撃の全工程をAIが自動化
Interpolサイバー犯罪部門長のNeal Jettonは次のように述べている。
「AIはサイバー攻撃のあらゆる段階を自動化している。偵察からフィッシング、恐喝、検知回避に至るまで」
具体的には、以下のような用途でAIが悪用されている。
- フィッシング攻撃の自動化・精緻化
- ディープフェイクを用いたデジタル恐喝:約60万件が記録されている
- 合成ID(Synthetic Identity)の生成:生体認証システムを突破するために使われる偽の身元情報
「合成ID」とは、実在しない人物の顔画像・音声・個人情報をAIで生成したもので、KYC(本人確認)プロセスを欺くために使われる手法だ。金融機関や通信事業者が導入する生体認証ベースの本人確認に対して、生成AIで作られた偽の顔や音声を突きつけることでアカウントを不正取得する攻撃であり、日本を含む各国の金融セクターにとっても他人事ではない。ディープフェイク技術の高度化とオープンソースモデルの普及により、こうした攻撃のハードルが大きく下がっていることが背景にある。
取り締まり側の戦果も示す
報告書は犯罪の拡大だけでなく、対抗措置の成果も記録している。2025〜2026年にかけてInterpolが調整した4つの合同作戦により、1,500人超の逮捕と1億ドル超の資産押収を達成した。
ただし、被害額4億8,400万ドルに対して押収額が1億ドル超という数字は、いまだ犯罪側が優位に立っていることを示している。法執行機関の対応強化が進む一方、AIによって攻撃側のスピードと規模が上回り続けている構図だ。
なぜ今、これが重要なのか
最近の研究では、オープンウェイトモデル(公開された重みを持つAIモデル)が数カ月前のフロンティアモデルに匹敵するサイバー攻撃性能を、わずかなコストで実現できるようになっていることが示されている。これが意味するのは、高度なサイバー攻撃を仕掛けるための技術的・経済的ハードルが急速に低下しているという事実だ。専門的な知識を持たない攻撃者であっても、公開モデルを活用することで従来は国家レベルの組織にしか不可能だった攻撃を実行できる環境が整いつつある。
Interpolの報告はそのトレンドが実際の犯罪統計として現れ始めたことを、信頼性の高い国際機関の調査として裏付けた点で意味を持つ。アフリカという地域固有の話ではなく、AI活用サイバー犯罪のグローバルな拡大を予告するシグナルとして読む必要がある。日本国内においても、フィッシングメールの巧妙化やディープフェイクを使った詐欺被害はすでに報告されており、本報告書が示す傾向は日本語話者にとっても直接的な脅威として捉えるべきだろう。
詳細はInterpol says AI has become the "core operational driver of cybercrime" across Africaを参照していただきたい。