8月3日、Matt Kapkoが「CrowdStrike: AI is now both the weapon and the target in cyberattacks」と題した記事を公開した。CrowdStrikeの年次脅威ハンティングレポートが示す「AIが攻撃者の武器となり、同時に攻撃対象にもなっている」現状について詳しく紹介されている。
AIが生成する検知シグナルは、人間の2倍以上
CrowdStrikeが2026年版年次脅威ハンティングレポートを公開した。レポートが対象とするのは2024年7月〜2025年6月の1年間だ。
なお、「脅威ハンティング」とは、自動検知をすり抜けた攻撃者の侵入痕跡をセキュリティ専門家が能動的に探索する手法を指す。CrowdStrikeはこれをマネージドサービス「Falcon OverWatch」として提供しており、同レポートはその活動データをもとにまとめられている。この期間に脅威ハンティングチームとシステムが処理した検知リードは1日平均1,400万件、そこから絞り込まれた顧客向けアラートは約3万6,000件に上る。
最も目を引く数字は「AIエージェントが引き起こす検知件数が、人間によるものを大幅に上回っている」という事実だ。
「AI agent-driven behaviorsはhuman triggersを超えた。AIが検知数を著しく押し上げており、いかに広く使われているかがわかる」
— Adam Meyers(CrowdStrike、カウンター・アドバーサリー・オペレーション担当SVP)
AIが防御側のノイズを増やすだけでなく、攻撃者の手にも渡っている点がこのレポートの核心だ。AI関連の悪意ある活動は過去1年で89%増加したと報告されている。
脆弱性の武器化が「48時間以内」に完了する時代
Meyersが「今年のレポートで最も怖い統計のひとつ」と表現したのが以下の数字だ。
脆弱性の88%が、公開から48時間以内にAIを通じて武器化されている。
これはパッチ管理の常識を根底から覆す。これまでの業界標準だった「30日パッチウィンドウ」はすでに機能不全に陥っており、新たな基準は24〜48時間へと圧縮された、とMeyersは述べている。なお、NISTのパッチ管理ガイド(SP 800-40)やCVSSスコアリングに基づく従来のリスク優先度付けは、この速度感を前提として設計されておらず、既存のセキュリティ運用フレームワークとのギャップが顕在化している。
攻撃者はフロンティアAIモデルを使い、脆弱性の発見、AIが生成したスクリプト・ペイロード・コマンドの開発を自動化している。これにより攻撃の精度と速度が同時に向上している。
AIサプライチェーンが次の主戦場に
ソフトウェアサプライチェーン攻撃のターゲットは、今やAIエコシステム全体に広がっている。レポートでは2025年前半に活動した脅威クラスター「TeamPCP」の事例が取り上げられている。
TeamPCPは1日で300以上のソフトウェア依存関係を侵害した。オープンソースのAIライブラリや依存パッケージマネージャーを標的にする手口は、従来のソフトウェアサプライチェーン攻撃と本質的に同じだが、AIエコシステムの急速な拡大がその攻撃対象を広げている。
AIエージェントの普及、AIアプリケーションとの統合、AIエージェント向け依存マネージャーの増加に伴い、攻撃対象となるサーフェスは今後さらに拡大すると同レポートは結論づけている。なお、昨年版(2025年版)の脅威ハンティングレポートと比較することで、こうした傾向の変化を時系列で確認できる。
「AIを守る」ことが急務
Meyersは「AIは武器であり、同時にターゲットでもある」と繰り返し強調した。しかし多くの組織はその認識が欠けており、自社が導入しているAIツールの保護やガードレールの整備が追いついていない、と指摘する。
「現代のビジネスを動かしているAIツールそのものが、守りの薄い攻撃対象面を生み出しており、攻撃者はそこを突いている。AIを守ることは絶対に必要だ」
— Adam Meyers
CIOやCTOの視点では、このレポートは「AIセキュリティ」を独立した課題として予算化・組織化するための根拠資料になりうる内容だ。パッチサイクルの短縮とAIサプライチェーンのリスク管理は、いずれも既存のセキュリティ体制の再設計を迫るものである。
詳細はCrowdStrike: AI is now both the weapon and the target in cyberattacksを参照していただきたい。