8月2日、Futurismが「The More People Learn About AI, the More They Want It Out of Their Lives」と題した記事を公開した。AIについて知識を深めた米国人ほどAIを忌避する傾向が強まっている——複数の世論調査データがその逆説的な構図を浮き彫りにしている。
「知れば知るほど嫌いになる」という逆説
ベントレー大学とGallupが実施した共同調査によると、AIが「害のほうが大きい(more harm than good)」と回答した米国成人の割合は、2025年の31%から2026年には39%へと上昇した。一方、AIが「益のほうが大きい(more good than harm)」と答えた割合はわずか**9%**にとどまる。
注目すべき点は、この否定的な評価と「AIへの理解度」が同時に上昇していることだ。同調査では、AIについて「ある程度、あるいは非常によく知っている」と答えた割合が2026年に**70%**に達し、2024年比で6ポイント増加した。
つまり、OpenAIのサム・アルトマンにとっては頭痛の種となる構図がデータに浮かび上がる。AIを理解するほど、人々はAIを自分の生活から遠ざけたがるのだ。「知識の普及が受容につながる」という一般的な仮説が、少なくともAIに関しては成り立っていない。
データセンターへの反発も拡大
AIへの不信感は、インフラへの拒否反応としても現れている。Politicoの調査では、自宅から3マイル(約4.8km)以内にデータセンターが建設されることに「反対する」米国成人の割合が、2026年1月の28%から41%へと急増した。支持する割合はこの半年で13ポイント下落している。
データセンターへの反発は、単なる「近隣施設への嫌悪感(NIMBY)」にとどまらないとみられる。大規模なAIモデルの学習・推論には膨大な電力と冷却水が必要であり、地域の電力網や水資源への負荷が懸念されている。こうした具体的な生活への影響が可視化されるにつれ、AIへの不信感が抽象的な概念論から地に足のついた反発へと変容しつつある。
AIは「社会的な断絶」の火種にもなっている
カーネギーメロン大学テッパービジネススクールで倫理学を教えるデレク・レーベン教授は、Bloombergの取材に対し、AI忌避が個人の嗜好を超え、社会関係の緊張へと発展していると指摘する。
「最も顕著な社会的影響は『疑念』だ。AIの利用には、道徳的・政治的な判断が伴うようになってきている。特にクリエイティブ産業ではその烙印が最も強い」
— Derek Leben(Bloomberg取材より)
ニューヨーク在住の公衆衛生の専門家、カーラ・ミラン氏(37歳)もBloombergに対し、家族や友人がAIを無反射的に使う姿に苛立ちを覚えると語った。
「AIを称賛する声を聞くと、『そうだね、みんなで自分たちを破滅させようよ』という気分になる。人間性を損ない、環境を悪化させることに、なぜわざわざ加担するのか」
— Carla Milan(Bloomberg取材より)
レーベン教授が言及する「クリエイティブ産業での烙印」は、生成AIによる著作権侵害リスクや人間のクリエイターの仕事を奪うという問題意識と切り離せない。雇用の不安・著作権をめぐる法的不確実性・エネルギー消費への環境的懸念といった具体的な論点が積み重なるにつれ、AIへの評価がより批判的な目線で行われるようになっていることが、今回の調査結果の背景にあると考えられる。
※編集部の考察:こうした反発の構図は米国特有の現象ではなく、欧州や日本でも類似した傾向が今後データとして現れる可能性がある。
「AIハネムーン」の終焉
記事が示すトレンドを整理すると、以下の通りだ。
- AIへの否定的評価:31%(2025年)→ 39%(2026年)
- AIへの肯定的評価:**9%**(2026年)
- AIへの理解度「高い」:**70%**(2026年、2024年比+6pt)
- データセンター建設への反対:28%(2026年1月)→ 41%(同年7月)
ChatGPTの公開直後には生成AIが新鮮な驚きとして受け入れられ、AIへの好感度は上昇傾向にあった。しかし2026年を境に、その流れは明確に反転した。知識の蓄積が受容ではなく拒絶に向かうとするならば、業界が今後直面するのは技術的な課題ではなく、社会的な信頼の再構築という、より根深い問題といえる。
詳細はThe More People Learn About AI, the More They Want It Out of Their Livesを参照していただきたい。