7月31日、Simon Willisonが「deepseek-ai/DeepSeek-V4-Flash-0731」と題した記事を公開した。この記事では、DeepSeekが新たにリリースしたDeepSeek V4 Flash 0731の性能とコストパフォーマンスについて詳しく紹介されている。
304Bパラメータで、コスト対性能比が突出
DeepSeek V4 Flash 0731は、DeepSeekのV4ファミリーの最新モデルだ。エージェント機能が大幅に強化されており、パラメータ数は3,040億(304B)、Hugging Face上のモデルサイズは167GBとなっている。
注目すべきはそのコストだ。入力が100万トークンあたり$0.14、出力が同$0.27という価格設定は、現時点で「インテリジェンスあたりのコスト」という観点において最良クラスに位置する可能性がある。
AI評価サイトArtificial Analysisのランキングでは、428BモデルであるMiniMax M3を上回る評価を獲得している。パラメータ数で大幅に劣るモデルがより大規模なモデルを性能で凌ぐという結果だ。
Artificial Analysisが用いるIntelligence Indexは、複数のベンチマーク(コーディング・数学・推論・一般知識など)を統合した複合スコアだ。単一のタスク性能ではなく、汎用的な「頭のよさ」を横断的に評価する指標として業界で参照されることが多い。コスト軸との散布図において、このスコアが高くかつ安価な「緑のゾーン」に位置するモデルが実用上の優位性を持つとされている。
以下のチャートは、Artificial AnalysisによるIntelligence Index(性能指標)とコスト(対数スケール)の散布図だ。DeepSeek V4 Flash 0731が「最も魅力的な象限(緑のゾーン)」の左端に単独で位置していることがわかる:

このチャートが示す構図は明確だ。同等の性能を持つ競合モデルはコストが約10倍、このモデルの性能を超えるモデル群(Grok 4.5、Gemini 3.6 Flash、Claude Opus 5、GPT-5.6 Solなど)はタスクあたり**$0.4〜$3**の範囲に位置する。上位モデルとのスコア差は依然として存在するが、コストの開きは10倍以上という現状を踏まえると、用途によっては本モデルで十分という判断が成り立ちやすい局面も多いだろう。
reasoning_effortの設定が品質を左右する
Simon Willisonは自身でモデルを試した結果も記事内で共有している。彼がベンチマークとして使っている「ペリカンが自転車に乗るイラスト生成」タスクだ。
デフォルトの推論レベル(reasoning level: default)では、自転車の描画が崩れた出来映えになった:

一方、推論レベルをhighに引き上げると、結果は大きく改善された:
llm -m openrouter/deepseek/deepseek-v4-flash-0731 -t pelican -o reasoning_effort high

reasoning_effortパラメータの設定が出力品質に直結するという実例だ。なお、このコマンドはllm(Simon Willison製のCLIツール)とOpenRouter経由でモデルにアクセスする構成になっている。reasoning_effortはOpenAIのAPIでも採用されているパラメータで、推論に費やすトークン量・計算量を制御する仕組みだ。値を上げるほど応答の質が上がる一方、レイテンシとコストも増加する。本モデルの基本料金が安価な分、high設定でもコスト面で許容しやすいという側面がある。
アーキテクチャとコスト効率の背景
304Bという数字は大きいが、元記事ではアーキテクチャの詳細について明示的な言及はない。ただし、DeepSeekはV3以降のモデルでMoE(Mixture of Experts)アーキテクチャを積極的に採用しており(DeepSeek-V3技術レポート参照)、同ファミリーである本モデルについても同様の構造が用いられている可能性はある。MoEとは、全パラメータを推論のたびに使うのではなく、入力に応じて一部の「専門家」モジュールだけを活性化する仕組みで、総パラメータ数に比して計算コストを抑えられる。
※編集部の考察:仮にMoEを採用しているとすれば、304Bというパラメータ総数に対して実際の推論時に活性化されるパラメータはその一部に留まる。これがコストの低さと性能の両立を支える構造的な要因として働いている可能性が高い。ただし、元記事での明記はなく、あくまで推測の域を出ない点に留意されたい。
詳細はdeepseek-ai/DeepSeek-V4-Flash-0731を参照していただきたい。