8月1日、The Next Platformが「AI Dominates The Microsoft Conversation, But Not The Company's Business」と題した記事を公開した。MicrosoftのFY2026第4四半期決算を分析し、AIが話題の中心を占める一方で売上全体に占めるAI比率はまだ**12.4%**に過ぎないという実態を論じている。
AIの話題量と収益の乖離
Microsoftの決算説明会ではAIの話題が支配的だ。Copilotの利用席数は直近3ヶ月で2,000万席から3,000万席へ急増し、Azureクラウドの売上も好調。同社はFY2026通期でAzureが初めて年間売上1,000億ドル超えを達成したと発表した。
しかし実態の数字はこうだ。The Next Platformの推計によると、FY2026 Q4のAI 年間換算売上(ARR)は約445億ドル。このARRはQ4の実売上111億ドルを年率換算(×4)して算出した推計値であり、同社全体のQ4実売上(約900億ドル)に対するAIの実際の寄与率は**12.4%**に過ぎない。両数値が並存するのはこの換算によるものだ。2年前と比べれば5倍に成長しているものの、ビジネスの主役はまだAIではない。
本業の規模感
Q4の各セグメント実売上は以下の通りだ(3セグメント合計で約900億ドル)。
- Productivity and Business Processes(Office、Teams等):378億5,000万ドル、前年比+14.3%、営業利益率57.9%
- Intelligent Cloud(Azure + Windows Server):393億1,000万ドル、前年比+31.6%、営業利益率40.6%
- More Personal Computing(PC関連):128億5,000万ドル、前年比▲4.4%、営業利益率21.4%
全社では売上900億ドル超(前年比+17.7%)、純利益357億7,000万ドル(前年比+31.3%)。市場時価総額は現在3兆4,400億ドルに達している。
Azureと「真のシステムビジネス」
The Next Platformは独自の集計概念として「真のシステムビジネス(True Systems Business)」という指標を用いる。これはAzure IaaS(インフラサービス)とオンプレミスのWindows Server事業を合算したものだ。PaaSやSaaSを除いた純粋なインフラ収益の規模感を測る軸として、同媒体がIBM等の歴史的なシステムベンダーとMicrosoftを比較する際に参照する概念である。
この指標でQ4を見ると、約220億ドル(前四半期比+0.3%)、営業利益率40.6%で安定している。記事はこれを「歴史上最大規模のシステムビジネスのひとつ」と表現し、かつてIBMがx86サーバー販売で全盛期を誇っていた時代の規模に匹敵すると位置づける。IaaSとWindows Serverを合算することで、クラウド移行前後を通じたMicrosoftのインフラ事業の連続性が浮かび上がる。
クラウド全体(Microsoft Cloud)では593億ドル(前年比+27%)、粗利益率65%を確保している。
受注残に潜むOpenAIの存在感
今後の動向を読む上で見落とせないのが受注残(バックログ)だ。FY2026末時点でMicrosoftのバックログは6,780億ドルに達する。
Microsoftは今回、OpenAI分を別掲しなかったが、「OpenAI以外のバックログが25%成長した」という開示から逆算すると、OpenAIが契約済みの容量は2,551億ドル相当と推計される(The Next Platform算出)。残る4,229億ドルがその他顧客分だ。OpenAIというAIの最大顧客が、Microsoftのインフラ需要を下から支えている構図が透けて見える。
設備投資は抑制路線
The Next Platformの記事によると、FY2026の設備投資(CapEx)は1,453億ドル(元記事記載値)で、うち約3分の2がCPU・GPU等のコンピューティングシステム、残り3分の1がデータセンター施設だ。FY2027の見通しは1,900億ドルで据え置きとし、AWSなど競合が投資を積み増す中でMicrosoftは過剰投資を避ける姿勢を示した。これがウォール街に評価され、株価は過去最高の時価総額を記録した。
まとめ
「AIが会話を支配しているが、ビジネスを支配しているわけではない」という記事のタイトルは、数字を見れば明快だ。かつてクラウドが同じ道を歩んだように、AIが売上の主柱になる日は来るだろう。ただし現時点ではまだ、Officeを中心とした生産性ソフトウェアとAzureが本業の軸である。
詳細はAI Dominates The Microsoft Conversation, But Not The Company's Businessを参照していただきたい。