8月1日、Anu Adegbolaが「OpenAI appears to be building chatbot-native ads that launch AI agents」と題した記事を公開した。広告をクリックするとランディングページではなく企業専用のAIエージェントとの会話が始まる——OpenAIがChatGPT内でそんな新広告フォーマットをテストしていることが明らかになった。デジタル広告の基本構造を根本から覆しかねないこの動きは、広告業界とAI業界の双方で大きな注目を集めている。
「クリックしたらLPではなくAIエージェント」という広告モデル
デジタル広告はこの数十年、「広告をクリック→ランディングページへ遷移」という一本道で機能してきた。OpenAIが構築中とみられる広告フォーマットは、この構造を根本から変えるものだ。
広告をクリックすると、Webページではなく企業専用のChatGPTエージェントとの会話が始まる。 そのエージェントは顧客の質問に即座に答え、商品をレコメンドし、商談リードを獲得するところまでこなす——ユーザーが企業サイトを訪れる前に、だ。
3ステップの仕組み
このワークフローは3つのコンポーネントで構成される。
ビジネスプロファイルの自動生成:ChatGPTが企業のWebサイトをクロールし、よくある顧客の質問、サポート情報、ビジネスの概要などを含むプロファイルを自動生成する。企業側が別途コンテンツを用意する手間を省き、広告出稿の障壁を下げる狙いがある。
ビジネスエージェントの構築:広告主がカスタム指示を加えてエージェントを設定する。エージェントは自動生成されたプロファイルに加え、商品フィード、MCP(Model Context Protocol)ツールによるリアルタイムのビジネスデータ、リード獲得フォームなどを組み合わせて動作する。MCPとはAIモデルが外部サービスやデータソースと標準化された方法で連携するためのプロトコルで、在庫状況や予約情報といったリアルタイムデータをエージェントが参照できるようになる。これにより、単なるFAQ応答を超えた、購買フローに直結する会話が可能になる。
エージェント起動型キャンペーン:URLではなく、このビジネスエージェントとの会話を直接起動するかたちでキャンペーンを配信する。クリック先がWebページではなく会話セッションになるため、従来のクリック単価(CPC)モデルとは異なる課金設計が必要になる可能性がある。
なお、この仕組みを支える基盤技術は、ChatGPTの**Custom GPTs**(GPTsのカスタマイズ機能)と同じものとみられる。
限定公開中、UXはまだ不明
現時点では、ChatGPT Ads Manager内の限られた広告主グループ向けにこの機能が存在していることが確認されている。ただし、実際のエンドユーザー体験——広告がChatGPT上でどのように表示されるか、どの程度の露出度になるか——はまだ広く観測されていない。
この広告フォーマットを最初に発見したのは起業家のJuozas Kaziukėnas氏で、LinkedIn上で共有したことで注目を集めた。
広告業界への影響と競合の動向
OpenAIはこれまで、ChatGPTの収益源としてサブスクリプション(ChatGPT Plus等)やAPIに依存してきた。今回の動きは、広告による収益化という第三の柱を本格的に模索していることを示している。
会話型AI×広告という領域では、すでにPerplexityが2024年後半から広告プログラムの試験導入を進めており、検索連動型に近い形式で広告主を募集している。OpenAIの今回のアプローチはそれよりも踏み込んでおり、広告枠の提供にとどまらず「会話そのものを広告体験にする」という点で一線を画す。Googleが検索広告で支配してきた「インテント×広告」の領域に、会話型AIが真正面から踏み込む構図だ。
企業にとっては、問い合わせ対応・商品提案・アポ取りを一つの会話で完結させられる可能性がある。一方、ユーザー側には「AIと話していると思ったら広告エージェントだった」という新たな体験が生まれることになる。
透明性・倫理面の論点
このフォーマットが普及した際に避けられない論点が、広告であることの開示だ。通常のWeb広告では「広告」「PR」といったラベル表示が法的・業界的に義務付けられているが、会話インターフェース上でそれをどう実装するかは自明でない。ユーザーが自然な会話の中でエージェントと対話しているとき、そのエージェントが広告主の利益のために設計されたものであることをどのタイミングで、どのように伝えるかは未解決のままだ。
また、エージェントが収集する会話ログ——ユーザーの購買意向・予算感・検討中の競合製品など——は従来のCookieベースのトラッキングをはるかに上回る情報量を持つ。EUのAI Actや各国のプライバシー規制がこの新形式の広告をどう扱うかも、今後の焦点になる。OpenAI自身がこれらの点についてどのようなガイドラインを設けるかは、現時点では明らかにされていない。
詳細はOpenAI appears to be building chatbot-native ads that launch AI agentsを参照していただきたい。