7月31日、The Next Webが「Amazon jumps as AWS growth soothes fears over its AI spending」と題した記事を公開した。AWSが第2四半期に37%成長という4年超ぶりの最速ペースを記録し、決算発表後にAmazonの株価は12%超上昇、時価総額は約3,000億ドル増加した。巨額AI投資への市場の懸念を一気に和らげた決算の内容と、その背景を紹介する。
AWSが37%成長、4年以上ぶりの最速ペース
AWSの第2四半期売上は422億ドル。成長率は**37%**で、アナリスト予想の約31%を大きく上回った。この成長率は、前回のクラウドブーム以来タッチしていなかった水準だ。
前四半期は、AI企業Anthropicへの出資評価益という一時的な押し上げ要因があったうえ、フリーキャッシュフロー(※)が急減するという苦しい内容だった。今回の決算はその反動という側面もあるが、AWSの実需に基づく再加速として市場は受け止めた。
CEOのAndy Jassyは「需要が供給を上回っている」と明言した。増設を続けているにもかかわらず、コンピューティングキャパシティが顧客需要に追いつかない状況だという。
※フリーキャッシュフロー(FCF)とは、営業活動で得た現金から設備投資などを差し引いた「企業が自由に使える現金」のこと。プラスなら資金が積み上がっており、マイナスなら外部からの調達や借入で賄っている状態を意味する。
2,200億ドルの設備投資と、マイナスに転じたキャッシュフロー
成長の裏側では、支出の規模が際立つ。Amazonは年間設備投資計画を約10%引き上げ、約2,200億ドルとした。大半はAIとクラウドインフラ向けで、企業史上最大級の建設予算の一つだ。
この支出は財務諸表に直接響いている。直近12ヶ月の累計フリーキャッシュフローはマイナス76億ドルに転落した(前年同期はプラス182億ドル)。資金調達のため、Amazonはシティグループなどから数百億ドル規模の新規借入も実施している。
それでも市場はこの成長率を「支出に見合う」と判断した。JP Morganは決算後のレポートで次のように書いた。
「コアAWSビジネスの強さに勇気付けられた。AWS成長とAI収益の相関は高く、この関係は今後さらに強まるだろう」
少なくとも5社の証券会社が目標株価を引き上げた。
ハイパースケーラー全体の構図:「使いすぎ」から「足りない」へ
今決算シーズンのテーマは、Big Techがデータセンターに注ぎ込む巨額資本が本当に収益に転換しているかという問いだった。ここでいう「ハイパースケーラー」とは、AWS(Amazon)、Azure(Microsoft)、Google Cloud(Alphabet)のように、世界規模でクラウドインフラを自社運営する巨大事業者を指す。Microsoft、Alphabet、Metaを合わせたCapexは既に6,000億ドルを超えており、各社の決算が事実上の「投資対効果の審判」になっている。
Metaはキャッシュフローが締まりつつある中でAI支出の下限を引き上げ、MicrosoftとAlphabetもクラウド成長を根拠に投資を正当化してきた。
今回のAmazonの結果で、議論の軸がやや動いた。「支出が多すぎるのではないか」という問いから、「需要に対してキャパシティが足りるのか」という問いへの転換だ。AWSの37%成長はその転換を象徴する数字として、業界全体の評価基準になった格好だ。
独自チップ戦略という変数
記事が指摘するもう一つの要素が、Amazonの自社AIチップだ。Jassyは自社開発のTrainiumチップが「数百億ドル規模のビジネスになり得る」と示唆している。チップ、データセンター、クラウドサービスを垂直統合することで、NvidiaのGPUに依存する競合よりもAI需要をコスト効率よく処理できるという賭けだ。
自社チップへの投資が実を結べば、単位あたりのAI処理コストを下げながらマージンを改善できる可能性がある。逆に言えば、Trainiumの競争力が伴わなければ、2,200億ドル規模の設備投資の前提が崩れるリスクもある。
リスクは消えていない
現時点でAmazonの株はMicrosoftやAlphabetより高いPERで取引されており、市場がAWSの成長に対してプレミアムを払っている状態だ。ただし、もしAWSの成長が再び鈍化しながらCapexが2,200億ドル規模にとどまれば、同じキャッシュフロー問題が再燃する。今四半期はJassyが必要な数字を手にしたが、市場の忍耐が無限でないことは変わらない。
詳細はAmazon jumps as AWS growth soothes fears over its AI spendingを参照していただきたい。