8月1日、Thomas Joosが「New Deepseek Flash model matches OpenAI's GPT-5.6 Luna at roughly 60 percent lower cost」と題した記事を公開した。DeepSeekの新しいフラッシュモデル「V4 Flash 0731」がOpenAIのGPT-5.6 Lunaとほぼ同等の性能を持ちながら、約60%安価に利用できるという価格競争の実態について詳しく紹介されている。
OpenAIの80%値下げという前提
まず背景として押さえておきたいのが、OpenAIによる大幅な価格改定だ。OpenAIは2026年7月、バジェット向けモデル「GPT-5.6 Luna」の価格を約80%引き下げた。この値下げは業界で「中国勢の価格水準に合わせた」とも評され、DeepSeekをはじめとする低コストモデルへの対抗措置と広く受け止められた。ところがDeepSeekは、その値下げ後のOpenAI価格に対してすら、さらに約60%安い水準を維持してみせた。つまりタイトルにある「80%値下げした後も」とは、OpenAIが相当な覚悟で価格を下げた後の話であり、それでもなおDeepSeekが価格優位を保っているという点が今回のニュースの核心だ。
性能はほぼ同等、コストは約60%安
DeepSeekが2026年7月31日付けで、バジェット向けAIモデル「DeepSeek V4 Flash 0731」を公開した。
Artificial Analysis Intelligence Index(AIモデルの総合性能を数値化するベンチマーク指標)によると、新バージョンは50ポイントを記録。前バージョンのV4 Flashから10ポイント上昇した。
OpenAIのバジェットモデル「GPT-5.6 Luna」は51ポイントであり、DeepSeek V4 Flash 0731はわずか1ポイント差まで肉薄している。さらに重要なのがコストだ。OpenAIが80%の値下げを実施した後でも、DeepSeekはタスクあたりのコストで約60%安い。

Artificial Analysis Intelligence Indexにおけるスコア比較。DeepSeek V4 Flash 0731はGPT-5.6 Lunaに1ポイント差で迫りながら、価格対性能比でトップを獲得している。(画像: Artificial Analysis)
コスト差を生む「キャッシュ割引98%」
この価格差の大きな要因が、DeepSeekの98%キャッシュ割引だ。業界標準は90%が一般的であり、DeepSeekの割引率はそれを大幅に上回る。プロンプトキャッシュとは、同一または類似のプロンプトを繰り返し送信する際に、過去の処理結果を再利用してコストを削減する仕組みで、エージェント型AIやバッチ処理を大量に走らせる用途では特に効いてくる。
さらに、新モデルは前バージョンと比較してトークン消費量が12%削減されている。同じタスクをこなすのに使うトークンが減るため、実質的なコストはさらに圧縮される。
エージェントタスクで大幅な改善
性能面では、テストされた全カテゴリで前バージョンを上回った。特に顕著な伸びを見せたのがエージェントタスク(AIが複数のステップを自律的に実行するタスク)だ。
複雑な実務作業を評価するベンチマーク「GDPval」のスコアは、1,189 Eloポイントから1,559 Eloポイントへと向上した。ハルシネーション(AIが事実と異なる情報を生成する現象)の発生頻度も低下している。
アーキテクチャは前バージョンから変更なし。総パラメータ数2,840億、アクティブパラメータ数130億、コンテキストウィンドウは100万トークンを維持している。MoE(Mixture of Experts)構造により、巨大なパラメータ総数を持ちながら推論時に使うパラメータは一部に限定されるため、運用コストを抑えられる設計だ。
モデルの重みはMITライセンスのもとHugging Faceで公開されており、自前でホスティングすることも可能だ。
価格競争はさらに加速、他社への波及も注目される
OpenAIが80%の値下げに踏み切った直後に、DeepSeekがさらに安価で同等性能のモデルを投入するという構図は、LLM市場における価格競争の激しさを端的に示している。バジェットモデルの領域では、性能の差よりもコスト効率が選定の主軸になりつつある。
この競争はOpenAIとDeepSeekの二者間にとどまらない可能性がある。GoogleはGemini Flashシリーズで低価格帯に積極的に参入しており、AnthropicもClaude Haiku系列でコスト重視の訴求を続けている。バジェットモデル市場でDeepSeekが再び価格優位を示したことで、他社が追随する形でさらなる値下げや性能改善を打ち出してくる展開も考えられる。開発者・企業にとっては、モデル選定のコストメリットが今後さらに高まる局面が続きそうだ。
※編集部の考察:Google・Anthropicへの言及は元記事には含まれない。市場の文脈として付記した。
詳細はNew Deepseek Flash model matches OpenAI's GPT-5.6 Luna at roughly 60 percent lower costを参照していただきたい。