7月30日、Futurismが「Amazon Is Gutting Its AI Division After Sustained Failure」と題した記事を公開した。Amazonが自社AIラボを大幅に縮小し、開発リソースを単一の「フロンティアモデル」プロジェクトへ集中させるという戦略転換について詳しく報じている。
AmazonのAI「Nova」、ほぼ全モデルが事実上の休眠状態へ
OpenAIにはChatGPT、AnthropicにはClaude、GoogleにはGeminiがある。ではAmazonは?
その問いへの答えが、今回の報道で明確になった。Amazonの看板AIモデルである「Nova」シリーズは、競合他社のモデルとは比較にならないほど存在感が薄く、一般的な知名度もほぼない。そして今後もそれは変わらないかもしれない。Bloombergの報道によると、Amazonは社内AIラボを大幅に縮小し、Nova AIモデルの大半を実質的な開発停滞状態へ移行させた。
具体的には、テキスト生成系のNovaモデルに加え、動画・画像生成モデルも含めたほぼ全ラインナップが「keep the lights on(最低限の維持)」状態に置かれた。これは技術的なサポートは継続するものの、新たな開発リソースはほとんど投入されないことを意味する。開発を完全に停止した「凍結」ではないが、実質的に前進しない状態であり、競合との差は広がる一方となる見通しだ。
なお、AmazonはNovaシリーズを自社のAWS Bedrockプラットフォームを通じて企業向けに提供しており、Nova ProやNova Liteといったモデルは同プラットフォーム上のAPIとして引き続き利用可能な状態にある。しかし今回の方針変更により、Bedrockを通じて提供されるNovaモデルの性能向上も事実上鈍化することになる。
リソースの集中先:「フロンティアモデル」開発プロジェクトへの一本化
縮小された各チームから解放された人員と計算リソースは、単一の「フロンティアモデル開発プロジェクト」へ集約される。このプロジェクトを率いるのは、Pieter Abbeel——UCバークレーのロボット学習ラボ(Berkeley Robot Learning Lab)のディレクターであり、ロボティクスAIスタートアップ「Covariant」の共同創業者だ。Amazonは2024年にCovariantを買収しており、Abbeelはその際に入社した。Covariantはロボット向けAIモデルの開発を手がけてきた企業だ。
ただし、今回の戦略転換の主眼は「ロボティクス専業化」ではなく、AGI・LLM路線からの撤退と、単一のフロンティアモデルへの開発リソース集約にある。Abbeelがロボティクス出身であることは確かだが、同プロジェクトがロボティクス特化のモデルを開発するかどうかは現時点では明らかになっていない。フロンティアモデルとは、現時点で最高水準の性能を目指す大規模AIモデルを指す概念であり、OpenAIのGPT-4oやAnthropicのClaude 3.5 Sonnetなどがその代表例として挙げられることが多い。
AGI研究拠点も閉鎖、1週間前に
今回の戦略転換の発表は、Amazonがサンフランシスコの主要AIオフィスを閉鎖してからわずか1週間後のことだ。この拠点は80人規模で、AGI(汎用人工知能)——人間レベルの知性と推論能力を持つとされる次世代AI——の研究に特化していた。
AGI研究拠点を閉じ、既存のLLMラインナップを最低限維持へ移行させ、フロンティアモデルへ一本化する。この一連の動きは、LLMへの大規模投資が期待していたROIをもたらせるかどうかへの懐疑論が業界全体で高まる中での判断だ。
「AI投資は回収できるのか」という問い
LLMの電力消費とコストに対してリターンが見合わないという議論は、テック業界の投資家やエンジニアの間で近年活発になっている。Amazonも例外ではなく、同社のAIデータセンターは記録的な炭素排出量でも批判を受けていた。
Futurismは「Amazonがまだ動けるうちにAIハイプサイクルから抜け出そうとしているのかもしれない」と指摘する。大手テック各社がAIに数百億ドル規模の投資を続ける中、Amazonが選んだのは「選択と集中」という方針だ。Novaシリーズ全体を横広げに伸ばすより、単一のフロンティアモデルへ開発力を集中させる判断は、限られたリソース配分の観点からは一定の合理性がある。※編集部の考察
詳細はAmazon Is Gutting Its AI Division After Sustained Failureを参照していただきたい。