7月29日、Zvi Mowshowitzが「Claude Opus 5 Is Highly Capable, But Is No Mythos」と題した記事を公開した。Claude Opus 5の実力をFable 5(Mythos)と比較しながら、ベンチマーク・実用性・ユーザー体験の各面から評価した内容だ。
「Mythosクラスではない」という結論
記事のタイトルが示す通り、Zviの評価は明快だ。Claude Opus 5は非常に有能だが、Fable 5(内部コード名Mythos)には及ばない。
Anthropicの公式の位置づけも同様で、「Fable 5の性能の大半を半額で提供する」という売り文句での投入となった。APIの料金はFableが入力$10/出力$25なのに対し、Opus 5は入力$5/出力$25。出力単価は両者とも$25で同一であり、「半額」はあくまで入力コストの差を指す点に注意が必要だ。サブスクリプション経由ではさらに安価になる。
Zviが指摘する本質的な差は「The Juice」と呼ぶ能力、すなわち一見無関係に見える複数の要素を自律的につなぎ合わせ、より広いスコープで問題を解く力だ。Opus 5はローカルな思考(局所的・定義済みのタスク)には強いが、グローバルな思考(全体を俯瞰して舵取りする)は苦手とする。サブエージェントとしては優秀だが、オーケストレーター(指揮役)に回ると問題が生じやすい、というのがZviの見立てだ。
ベンチマークは「中〜低予算でOpus、高予算でFable」という構図
公式ベンチマークはほぼ全域で良好な結果を示した。特徴的なのは「予算(トークン消費)によって順位が逆転する」パターンだ。
- DeepSWE: 低〜中コスト帯ではOpus 5がFableを上回るが、高コスト帯では逆転される
- RiemannBench: ツール使用時60/79(Opus)vs 63/72(Mythos)
- ARC-AGI-3: 抽象的な視覚パターン認識・推論を測るベンチマーク。Opus 5が他モデルを大きく引き離すトップスコアを記録
- 2026 IMO: 国際数学オリンピック相当の問題群。エージェントハーネスなし・ツールなしで42問全問正解(42/42)
- OSWorld v2: PC上でのGUI操作タスクを評価するベンチマーク。リリースから数週間で70%到達
ただし特筆すべきは高effort時の「過剰行動」問題だ。FrontierCodeでのスコアグラフが不自然な形状を示していた謎は、Opus 5が高effortで「頼まれていないことを余分にやってしまい」ペナルティを食らっていたことが原因と判明した。
Max Leander氏(X上):「欠点は、頼んでもいないのに細部にこだわりすぎ、過剰設計してしまうことだ」
この挙動はベンチマーク設計の問題とも絡むが、実運用でも「Mediumエフォートで十分なことが多い」という示唆をZviは与えている。Opus 5を使う場合はeffortの設定を上げすぎないのが賢明だ。
プロンプトインジェクション耐性という見落とされがちな強み
Anthropic Claude CodeチームのBoris Chernyが強調したのが、Opus 5が現時点で最もプロンプトインジェクションに強いモデルという点だ。
Boris Cherny(Anthropic):「強力なモデルアライメント、プロンプトインジェクションプローブ、Claude CodeのAuto Modeを組み合わせると、プロンプトインジェクション攻撃の成功率はほぼ0に近づく。これは新しい成果だ」
プロンプトインジェクションとは、悪意ある入力によってモデルの挙動を乗っ取る攻撃手法だ。エージェントが外部のWebページやファイルを読み込む場面では特に深刻なリスクとなるため、エージェント用途では極めて重要な特性といえる。Zviも「みんな見落としているが、これは新しいユースケースを可能にする大きな前進だ」と評価している。
「Claude Slop」問題:ユーザー体験の分断
能力面とは別に、ユーザー体験の面では評価が大きく割れている。
Zviによると、Opus 5に対して「強い嫌悪感を示すユーザーが異例に多い」という。具体的な不満は:
- 同じクセのある表現の繰り返し(いわゆる「Claude Slop」)
- 過度に複雑な文章構成
- 対決的・批判的・ネガティブな態度
- ループ状のネガティブ思考に陥ることがある
この傾向はOpus 4.7・4.8から続くトレンドで、Zviは「4.7・4.8が気に入っていたならOpus 5も気に入るだろうし、気に入らなかったなら同様だろう」と述べている。Opus 4.6以前のファンは意見を変えない可能性が高いとも。
Fable 5はこの種の摩擦が少なく、会話体験の満足度では依然としてFableを好むユーザーが多いという。Zvi自身も「Opus 5との時間は楽しんでいるが、できるときはFable 5を使う」と明言している。
この性格的特性はトレーニングの方針とも関連している。Opus 5はサブエージェント役割と限定的タスク処理に特化した学習が行われており、サイバー能力の問題を避ける意図もあったとZviは推測する。
結論:選択の余地が広がった、が革新は限定的
Opus 5の登場で選択肢は増えた。局所的・定義済みのタスク、サブエージェント、コストを抑えたい中規模タスクではOpus 5が有力候補になる。Fable 5が「overkill」で遅すぎると感じる場面にも有用だ。
しかし「Opus 5で初めてできるようになること」は少ない。Fable 5やSol(Anthropicが提供する別系統の軽量モデル)で従来対応できていたタスクのほとんどは引き続きそちらでも対応可能であり、Opus 5はコストと性能のトレードオフを改善したという位置づけに留まる。
Zviの最後のアドバイスは明快だ。「ベンチマークスコアに過度な注意を払うな。他人の体験が自分に当てはまるとは限らない。自分でモデルを試せ。」
詳細はClaude Opus 5 Is Highly Capable, But Is No Mythosを参照していただきたい。