7月28日、Maximilian Schreinerが「Nvidia invests in Ilya Sutskever's AI lab, shifting SSI away from Google chips」と題した記事を公開した。NvidiaがIlya SutskeverのAIラボ「SSI」に投資し、SSIの計算能力を10倍に拡大するとともに、GoogleのTPUからNvidia製GPUへとインフラを丸ごと切り替えさせるという内容だ。製品ゼロ・評価額300億ドルのラボをめぐる構図は、チップ覇権争いの最前線を映している。
GoogleのTPUからNvidiaのVera Rubinへ
NvidiaがIlya Sutskever(イリヤ・サツケバー)率いるSafe Superintelligence(SSI)に対し、「substantial(相当規模)」と表現する金額を投資することを両社が月曜日に発表した。具体的な投資額は非公開だ。
この提携の核心はコンピュートインフラの大転換にある。Wall Street Journalの報道によれば、SSIはこれまで主にGoogleのTPU(Tensor Processing Unit)チップを利用していた。今回の提携により、SSIはNvidiaの次世代GPUプラットフォーム「Vera Rubin」へのアクセスを得る。両社によれば、これによりSSIの計算能力が10倍に拡大するという。
Vera RubinはNvidiaが現行のBlackwellの後継として投入する次世代アーキテクチャだ。記事公開時点(2025年7月末)で展開が進行中とみられ、SSIのような研究特化型ラボが次世代プラットフォームへの優先アクセスを確保することは、長期的な研究ロードマップに直結する。
Nvidiaにとっての戦略的意味
この投資はSSIへの資金供給にとどまらず、NvidiaがチップシェアでGoogleを引き離すという側面が強い。AI向けカスタムシリコン市場ではGoogleのTPUやAmazonのTrainiumといった自社チップが台頭しており、NvidiaはGPUの独占的地位を維持するために主要AIラボとの関係強化を急いでいる。
SSIという「製品を持たない研究ラボ」を囲い込むことで、Nvidiaは将来の大型顧客候補を確保しつつ、GoogleのTPUエコシステムへの流出を防ぐ構図だ。
SSIとは何か
SSIは2024年に設立されたAIラボで、OpenAIの元チーフサイエンティストであるSutskeverが主導する。掲げる目標は「安全な超知能(safe superintelligence)の実現」という一点のみで、中間的な製品リリースを行わない「straight-shot(一直線)」アプローチを標榜している。
資金調達面では、Andreessen Horowitz、Sequoia Capital、DST Global、Greenoaksから約20億ドルを調達済みで、直近の評価額は約300億ドルに達している。Sutskeverは今回の提携に際し、研究の焦点として「人間の脳の機能における見落とされてきた側面」と述べている。
製品ゼロのラボが300億ドルの評価額を持つ構造
SSIは具体的なプロダクトを一切リリースしていないにもかかわらず、評価額は300億ドル規模に達している。これはSutskeverの研究者としての実績とOpenAI時代のブランド力、そして「安全な超知能」という目標設定が投資家の関心を集めていることを示している。
今回のNvidiaの参入により、投資家リストはさらに重厚になった。注目すべきは、NvidiaがSSIに対して提供するのが単なる資金ではなく、次世代チップへの優先アクセスというコンピュートそのものである点だ。研究の進捗を左右するコンピュート資源を握ることは、資金出資とは異なる深い関係性を生む。SSIが実際にどのような研究成果を出しているかについては現時点で公開情報はほぼ存在しないが、Nvidiaという重量級のパートナーを得たことで、その動向はさらに注目を集めることになる。
詳細はNvidia invests in Ilya Sutskever's AI lab, shifting SSI away from Google chipsを参照していただきたい。