7月25日、CNBCが「Analysis: A powerful new coalition of AI skeptics is coalescing right in Trump's blind spot」と題した記事を公開した。宗教右派・労働組合・地域活動家という異色の連合がAIデータセンター拡大への反発で結集し、その政治的圧力がトランプ大統領の支持基盤を揺さぶり始めている。しかも反対する保守層の割合は**53%**——この数字は、AI推進を国策として掲げるトランプ政権にとって、無視しにくい規模だ。
「AIに反対」勢力が予想外の顔ぶれで結集しつつある
AI推進派にとって厄介なのは、反対勢力が「左派リベラル」という単純な構図に収まっていない点だ。
宗教指導者、労働組合、そして地域の草の根活動家——この三者が静かに連携し、AIおよびデータセンター急拡大への「スローダウン」を求める声を上げている。CNBCはこの連合が、トランプ大統領の政治的死角に形成されつつあると分析する。
保守層の53%がデータセンター建設に反対
数字が状況を端的に示している。
イェール大学気候変動コミュニケーションプログラムが2026年6月に実施した世論調査によると、保守的な共和党支持者の53%が地元へのデータセンター建設に反対している。登録有権者全体では**58%、リベラル民主党支持者に至っては74%**が反対した。
この数字が示すのは、データセンター問題がすでに党派を超えた市民感情になっているという事実だ。ニューヨーク州のホークル知事がデータセンター建設のモラトリアム(一時停止)を導入したのはリベラル州として先行事例となったが、保守層でも同様の感情が根付いている。
福音派の警告:「これはバベルの塔だ」
トランプ政権が軽視できないのが、長年の支持基盤である福音派キリスト教徒の動向だ。
全米福音主義者協会(National Association of Evangelicals)のウォルター・キム会長は、CNBCの「スクウォーク・ボックス」に出演し、カトリックのレオ14世教皇が2025年5月に発布した回勅「Laudate Deum」(※教皇が全世界の信者に向けて発する公式書簡。AIと人間の尊厳に関する警告を含む)を支持した上で、こう述べた。
「教皇が最近の回勅で述べたように、これはバベルの塔の建設です。人間の傲慢さを映す技術への信頼は、私たちを神から切り離すだけでなく、互いからも切り離す」
キム氏の団体は特定候補の支持はしておらず、トランプへの公然とした政治キャンペーンも展開していない。しかし、トランプが2016年の出馬当初から固めてきた支持層からこうした声が出始めている意味は小さくない。
労働組合は2028年大統領選への直接警告
AFL-CIO(米国最大の労働組合総連合)のリズ・シューラー会長は、先月の大会でこう言い切った。
「2028年の大統領選に向けてすでに動き始めている候補者たちへ:最高の地位を望むなら、この言葉を聞け。アルゴリズムより働く人々を優先せよ」
2024年共和党全国大会でスピーチを行ったチームスターズ(国際トラック運転手組合)のショーン・オブライエン委員長も、AI企業側との対話の場でこう訴えた。「私たちはテーブルに座ったことがない」。
これに対し、パランティアのアレックス・カープCEOは「この国でAIが直面する最大の課題は政治的不安だ」と応じた。カープ自身、労働組合員の家庭で育った背景を持つ。
トランプの立場:業界寄りの姿勢が裏目に
トランプは7月24日、データセンター開発業者と電力会社から「電気料金を値上げしない」との誓約を取り付けたと発表した。データセンターの急増が電力需要を押し上げ、家庭の電気代を直撃するという懸念に応える形だ。
ただ、その発表の場が環境保護庁(EPA)であり、「庶民の味方」を演出する場だったにもかかわらず、トランプは地方の知事や自治体幹部に向けてこう言い放った。
「抵抗するな。乗っていくしかない。誰かが金持ちになるなら、それはあなたたちであるべきだ」
OpenAIやOracleのような企業にとっては、この誓約は「政治的保険」として機能する。電力網の改修コストが顕在化するのは数十年単位であり、その間の批判をかわすには十分だ。しかし、トランプが業界側に立っている印象を消すことはできなかった。
中間選挙まで101日:株高の恩恵が届かない層の不満
記事は、この連合に乗った政治家には「強力な草の根の支持」が生まれると指摘する一方で、無視した側には11月の中間選挙が待っていると締めくくっている。記事公開時点で、選挙まで101日。
CNBCはこの文脈で、Nasdaq総合指数が今年20回の最高値更新を記録した事実を対比として持ち出す。株式市場がAI投資への期待を織り込んで上昇を続けている一方、その恩恵は資産を持つ投資家層に偏る。データセンター建設の騒音・発熱・水使用・送電線負担を日常的に受ける地域住民には、Nasdaqの最高値は無縁の話だ。AIの恩恵が「ビッグテックとその投資家」に集中しているとの不満は、党派を超えた政治エネルギーに転換しつつある。
詳細はAnalysis: A powerful new coalition of AI skeptics is coalescing right in Trump's blind spotを参照していただきたい。