7月24日、SiliconANGLEが「AI hardware competition heats up at AMD Advancing AI」と題した記事を公開した。AMDが自社のAIイベント「AMD Advancing AI」でNVIDIAへの正面対決姿勢を鮮明にし、AIハードウェア市場の競争が新局面に入ったことについて詳しく報告している。
「2番手」から脱却を図るAMD
AMDはこれまで、NVIDIAに次ぐ「現実的な第2の選択肢」として市場に位置づけられてきた。しかし今回のイベントで打ち出したメッセージは、その路線からの明確な転換だ。
AMDはCPU・GPU・ネットワーク・ソフトウェアを統合したラックスケールシステムを発表し、2030年までに2兆ドル規模に達すると試算する市場機会を提示した。対象範囲はデータセンター、PC、エッジ、組み込みシリコンに及ぶ。
アナリストのSarbjeet Johal氏(Stackpane代表)はイベントを評して「このイベントでAMDはついに真剣な競合として姿を現した。競争はエコシステム全体にとって良いことだ。顧客にとっても、パートナーにとっても、規制当局にとっても」と述べた。
核心はCUDAという「堀」をどう崩すか
技術的な議論の中心は、AMDの**ROCmソフトウェアスタック**がNVIDIAの長年のソフトウェア優位をどこまで切り崩せるか、という点だった。
NVIDIAのAI覇権を支えるのはGPUハードウェアだけではなく、**CUDA**という開発者エコシステムだ。2006年の登場から18年以上をかけて積み上げられた深厚なライブラリ群——cuDNN、cuBLAS、TensorRTといった最適化済みコンポーネント——がNVIDIAの「堀」を形成しており、これを短期間で埋めることは容易ではない。
AMDが持ち出した反論は、AIそのものをコード移行に使うという発想だ。TECHnalysis社長のBob O'Donnell氏によれば、AMDはAIエージェントを活用してCUDAベースのプログラムをROCm形式に自動変換するアプローチをイベントで提示したという。これはO'Donnell氏が同氏の文脈で言及した表現であり、AMDの公式製品名として確立されたものかどうかは現時点では不明瞭な点がある。
「AMDは『AIを使ってGPUプログラムをCUDAからROCmに書き換えよう』と言っている。OpenAIがTritonでやってきたこととも相まって、その堀は効力を失いつつある」(O'Donnell氏)
ここで言及されるTritonとは、OpenAIが開発しCUDAに依存せずGPUカーネルを記述できるオープンソースのコンパイラ/言語だ。CUDAを経由せずにGPUを直接プログラムする抽象層を提供するため、ROCmのような非NVIDIA環境への移植性向上にも寄与しうる技術として注目されている。こうしたエコシステム外からの動きが、CUDAの「堀」を間接的に侵食しつつあるというのがO'Donnell氏の見立てだ。
一方でJohal氏はそのペースに懐疑的だ。
「18年は18年だ。1〜2年で追いつける話ではない。開発者はライブラリなしには生きられない」(Johal氏)
AMDが狙う現実的な突破口
CUDAの壁をすぐに超えられないとしても、AMDには別の勝ち筋がある。
オンプレミスでAIを展開したいエンタープライズ企業の中には、すでにAMDのCPUを採用している組織が多い。そうした顧客にとって、AMDの統合インフラは「既存資産との親和性」という実利的な優位点を持つ。加えて、特定ベンダーへの依存を避けたいバイヤーにとって、NVIDIA一択でない選択肢が存在すること自体に価値がある。
競争の評価軸も変わりつつある。個々のGPUの性能比較から、信頼性のある完全なAIプラットフォームを提供できるかという問いへと移行している。AMDは今回のイベントで、ハードウェアポートフォリオ・ソフトウェア戦略・システム設計の三点を揃えることでその問いに答えようとした形だ。
「CUDAの壁をAIで崩せるか」——問いの着地点
タイトルに掲げた問いへの現時点での答えは、「崩しつつある、ただし道半ば」だ。AIによるコード自動変換やTritonのような代替レイヤーの台頭は、CUDAへの依存度を構造的に下げる方向に作用している。しかし18年分のライブラリ資産と開発者の習慣は一朝一夕には覆らない。AMDが今回示したのは「勝利宣言」ではなく、長期戦に向けた戦略の全体像だ。その実行力が問われるのは、これからだ。
詳細はAI hardware competition heats up at AMD Advancing AIを参照していただきたい。