7月25日、CBS Newsが「ChatGPT now has a space for sharing medical records. Should you?」と題した記事を公開した。OpenAIが新たに提供開始した医療記録共有機能「Health in ChatGPT」について、複数の専門家の見解を交えながらリスクとメリットを整理した内容だ。すでに週3億人がChatGPTに健康関連の質問を投げかけているという数字が示すように、AIへの医療相談はすでに日常的な行動になりつつある。その現実を踏まえ、どう向き合うべきかを問うている。
OpenAIが「Health in ChatGPT」を公開
OpenAIは今週、ChatGPT上に医療情報を集約するスペース「Health in ChatGPT」を公開した。ユーザーは検査結果や服薬情報などの医療記録をアップロードできるほか、Apple Healthと連携することで、睡眠・活動量・ワークアウトデータなどへのアクセスも許可できる。なお、現時点でApple Health連携はiOSユーザーを対象としており、Androidを含むその他のプラットフォームへの対応状況は明らかにされていない。
OpenAIによれば、すでに週3億人がChatGPTに健康関連の質問を投げかけているという。この数字は単なる利用統計にとどまらず、米国における医療アクセスの深刻な格差を映し出しているとも読める。米国では保険未加入者が依然として数千万人規模で存在し、専門医への予約待ちが数カ月に及ぶケースも珍しくない。Cornell TechのHealth Innovation責任者であるTanzeem Choudhury氏は「米国の医療は機能不全に陥っている。だからこそ、これほど多くの人がAIに助言を求めているのだ」とCBS Newsに語った。同氏はAIと医療の交差点で15年以上研究を続けてきた専門家だ。
専門家が指摘する2つのリスク
1. 誤情報・ハルシネーションの危険性
AIは事実と異なる情報を生成する「**ハルシネーション**」を起こし得る。記事公開と同じ週には、フロリダ州の男性がChatGPTの医療アドバイスに従った結果、肺塞栓症(pulmonary embolism)で死にかけたとしてOpenAIを提訴したと報じられている。数カ月前にはカリフォルニア州の10代の少年が、ChatGPTに「安全」と回答された薬物の組み合わせを摂取して死亡する事件も起きた。
OpenAIは「ChatGPTは医師ではなく、医療の代替として使用すべきでない」と声明を出しているが、現状ではいつ医師に相談すべきかを判断する責任はユーザー側にあるとChoudhury氏は指摘する。高齢者や認知機能に課題のあるユーザーは、チャットボットとのやり取りのリスクを正しく評価できない可能性があると同氏は警告する。
2. 個人情報の扱いに対する懸念
コロンビア大学コンピュータサイエンス教授でAI担当副学部長のVishal Misra氏は「健康データを誰かと共有する際のリスクは、ChatGPTに共有する場合にもそのまま当てはまる。非常に個人的な情報を渡すことになる」と述べた。
米国では医療情報の取り扱いに関してHIPAA(健康保険の携行性と責任に関する法律)が定められているが、同法は医療機関や保険会社を対象とした規制であり、OpenAIのようなAI企業には直接適用されない点も留意が必要だ。
OpenAIはセキュリティ面として以下の対策を講じると説明している。
- 追加の暗号化保護を実装
- 連携プラグイン(メール送信など)を実行する前にユーザーに確認
- 共有された医療記録をモデルの学習やターゲット広告には使用しない
ただし、Choudhury氏はこのようなプライバシーポリシーが将来にわたって維持される保証はないと指摘する。AI企業が利用規約をひっそりと変更してきた前例はあり、FTCも2024年2月に消費者向け警告を発して、AIチャットボットに共有した健康情報がどのように利用されるかについて注意を促している。
使うなら「医師の補助ツール」として
Misra氏自身はChatGPTを自分の健康データの追跡に使っているといい、「慎重に使えば良いツールになり得る。優秀な医師でも見逃しがちな相関関係を見つけてくれることもある」と評価する。一方で、判断を任せることには明確に反対している。
「ChatGPTが何を言っても、実際の医師に持っていくこと。自分で行動してはいけない。取るべき唯一の行動は、かかりつけ医に相談することだ」
Health in ChatGPTは、ユーザーが時系列で健康情報を整理し、それを医師に共有することで診療の質を高めるという使い方が現実的な活用法だ。OpenAIは世界中の医師の協力を得てリリース前に現実的な医療シナリオをテストしたとしている。
便利さと危うさが共存するこの機能をどう使うかは、最終的にはユーザー自身のリテラシーと判断にかかっている。専門家の総意は一貫している——AIは情報整理の補助に留め、医療判断は必ず人間の医師に委ねること、だ。
詳細はChatGPT now has a space for sharing medical records. Should you?を参照していただきたい。