7月24日、Euronewsが「The majority of AI jobs now sit outside technological occupations」と題した記事を公開した。2022年時点では欧州主要国いずれも1%未満にとどまっていたAI関連タイトル求人の比率が、2026年Q1にはドイツで4.2%まで急伸し、しかもその過半数がエンジニア職ではなく営業・HR・法務といった非テック職種に分類されるという。AIスキルの需要が、いよいよ技術部門の外に本格拡大していることを示すデータだ。
AI求人の「主戦場」がテック外に移った
求人プラットフォームのIndeedが集計したデータによると、欧州5カ国のうち4カ国で、AI関連の肩書を持つ求人の過半数がテック職種以外に分類されるようになった。
ここでいう「AI関連の肩書を持つ求人」とは、Indeedが求人票のタイトル欄に「AI」「人工知能」などのキーワードを含む求人を抽出したものを指す(本文中の言及は対象外。詳細は後述)。また「テック職種」はIndeedの職種分類においてソフトウェア開発・データサイエンス・ITインフラ等に該当するカテゴリ、「非テック職種」はそれ以外の営業・マーケティング・法務・HR・教育・運営管理等に該当するカテゴリを指す。
国別の割合(2026年Q1時点):
- ドイツ:AI関連求人タイトルの59%が非テック職種
- オランダ:58%が非テック
- フランス・英国:それぞれ54%が非テック
- スペイン:例外的に64%がいまだテック職種
わずか4年前、2022年時点では全国でAI関連タイトルの割合は1%未満だった。それが2026年Q1にはドイツで**4.2%**、フランスで3.3%、英国で2.7%、スペイン2.3%、オランダ2.2%まで拡大している。
IndeedのEconomic Research部門ディレクターであるPawel Adrjanは、「雇用主はAIスペシャリストを採用するだけでなく、AIツールの使用が求められる職種のタイトルにもAIを加えている。これはAIがすでに仕事を再形成しつつあることの表れだ」と述べている。
非テック職種の具体例
実際にどのような職種にAIが入り込んでいるかは、各国の求人タイトルを見れば明快だ。
- 英国:「Solution Sales Executive - AI, Data and Analytics」「Lecturer in Digital Business and AI」「Legal Counsel, Privacy, Product & AI」「Operations Specialist, AI Enablement」
- ドイツ:「AIを活用して人事業務の効率を高められるHRマネージャー」
- フランス:AIプロダクト・ソリューションを販売するセールス職
- オランダ:AIを活用するマーケティング・広告スペシャリスト
営業、HR、法務、顧客サポート、管理職、さらには教育職にまでAIの文字が広がっている。
Adrjanは「求人タイトルにAIを入れることは意図的な選択であり、その企業がAIをその役割の中心と考えていることを示している」とも語っている。
なお、Indeedがこの分析で着目しているのは求人の本文ではなく、タイトルのみだ。本文中のAI言及は文脈に依存するケースが多く、役割との関連性が薄いこともあるためだという。タイトルへの記載に絞ることで、「AIが業務の中核にある職種」をより精度高く抽出する狙いがある。
AI関連求人タイトルの絶対数も急増
絶対数で見ても増加幅は大きい。下表の数値は求人100万件あたりのAI関連タイトル求人件数で、2022年Q1と2026年Q1の比較:
| 国 | 2022年Q1 | 2026年Q1 |
|---|---|---|
| ドイツ | 72 | 288 |
| 英国 | 61 | 160 |
| フランス | 35 | 138 |
| オランダ | 21 | 84 |
| スペイン | 8 | 81 |
特にスペインは約10倍と増加率が際立っている。絶対水準では依然としてドイツが最大だが、スペインの急伸は注目に値する。スペインは他国と異なりAI関連求人の64%がテック職種に集中しているという点でも特異だ。これはスペインのIT産業が近年グローバル企業の開発拠点として急成長していることと無関係ではないと思われるが、元記事での明示的な言及はない。
※編集部の考察:スペインでテック職種比率が高い背景には、BarcelonaやMadridを中心としたスタートアップ・テックハブの集積が関係している可能性がある。ただしIndeedのデータのみからは断定できない。
背景:EUの生成AI利用は急速に拡大中
Eurostatのデータによると、EU圏内で16〜74歳のうち15%が昨年、業務で生成AIを使用したという。この浸透が、テック以外の職種でAIスキルが求められる下地を作っている。
かつてインターネットが職種の構造を変えたように、AIも同様の変容を起こしつつある。ただし今回は、変化の起点がエンジニアリングの外にまで及んでいる点が異なる。求人タイトルという採用側の「意図」が可視化されるデータは、今後のキャリア設計を考えるすべての職種に示唆を与えるものだ。
詳細はThe majority of AI jobs now sit outside technological occupationsを参照していただきたい。