7月24日、latent.spaceが「AINews: Black Forest Labs FLUX 3」と題した記事を公開した。Black Forest Labsが発表したマルチモーダル統合モデル「FLUX 3」は、画像・映像・音声・ロボット制御を単一アーキテクチャで扱う設計であり、映像生成モデルが物理的な行動予測へと発展する可能性を具体的なパートナーシップで示した点で注目に値する。
FLUX 3:単一アーキテクチャで画像・映像・音声・行動予測を統合
2024年にFLUX 1で静止画生成モデルとして登場したBlack Forest Labs(BFL)が、2年越しの予告を経てFLUX 3をリリースした。単なる映像生成モデルへの拡張ではなく、画像・映像・音声・ロボット制御のアクション予測を一つのアーキテクチャで統合した点が今回の核心である。なお、FLUX 1はリリース当時、Stable Diffusionシリーズに対抗する高品質な静止画生成モデルとして注目を集め、Hugging Face上でも広く利用された経緯がある。
BFLが「Self Flow」と呼ぶこの統合アーキテクチャは、モダリティごとに別々のモデルを組み合わせる構成ではなく、共同学習(jointly trained)した単一モデルから各出力を引き出す設計だ。技術的な詳細については元記事の時点では限定的な開示にとどまっているが、BFLのFLUX 1がFlow MatchingとDiffusion Transformer(DiT)をベースに構築されていたことを踏まえると、FLUX 3もその系譜に連なるアーキテクチャである可能性が高い。※編集部の考察
公式ブログによれば、主な機能は以下の通りである:
- テキスト→映像生成
- 画像→映像生成(先頭フレームからのアニメーション、または画像をビジュアル参照として使用)
- 映像→映像生成(ソース映像のキャラクター等の要素を別シーンへ転写)
- 入力映像・音声からの生成的な映像音声継続
- キーフレーム→映像生成(定義したシーン間のトランジション制御)
- 多言語ダイアログ
- カムコーダー映像からアニメーション・シネマティックまで幅広いスタイル対応
- 個別クリップをエージェント的に連結した長尺・マルチショット構成
- 全出力にネイティブ音声生成が付属
特筆すべきは「全出力にネイティブ音声生成が付属」という点だ。映像生成と音声生成を別モデルで後処理する現在の主流パイプラインと異なり、一つのモデルから両方が出力される設計である。
FLUX-mimic:映像世界モデルのロボット制御への応用
FLUX 3の発表と同時に、BFLとmimic roboticsが共同開発したFLUX-mimicも公開された。mimic roboticsはロボット学習データの収集・活用を専門とするスタートアップで、FLUX-mimicはFLUX 3のバックボーンをロボット学習に応用した「映像アクションモデル」である。ロボットおよびウェアラブルデータで追加学習されており、映像生成モデルが持つ世界の物理的な理解をロボット制御に転用する試みといえる。
mimic roboticsによれば、映像世界モデルの品質向上がそのままロボット制御の精度とサンプル効率の向上につながるという仮説を実証するものだ。すでにAudiとのテストを実施中であり、単一のオンプレミスGPU上での動作を前提とした設計になっている。
BFLはFLUX-mimicを「モデルが十分な世界モデルを学習している証拠」として位置づけている。映像生成で培った表現力が行動予測にどこまで活きるかは今後の検証が必要だが、具体的な産業パートナーシップを伴ってこの主張を示した点は注目に値する。
同日のその他注目リリース
FLUX 3と同日には、独立した複数のリリースも報告されている。FLUX 3との直接的な関連はないが、AIインフラ・音声・エージェント基盤の各領域における動向として併せて押さえておきたい。
The Stack v3(コードデータセット)がHugging Faceの研究者らから公開された。生データ114TB、リポジトリ2億2,400万件、ファイル440億件、770言語、重複除去後の推定トークン数約5兆という規模になる。v2との比較では、フィルタリング後のコーパスが約550億トークンから約5兆トークンへ増加し、特にC++(15倍)、TypeScript(7.5倍)、Rust(7倍)、Python(4.8倍)の増加幅が大きい。次世代オープンコードモデルのインフラとして明示的に位置づけられている。
Qwen-Audio-3.0-TTS(Alibaba Qwen)も公開された。FlashとPlusの2バリアント構成で、16言語に対応し、[whisper]や[angry]といったインライン制御タグ、自然言語によるスタイル指定、最大3分の一括生成をサポートする。Artificial Analysis TTSリーダーボードで1位を主張している。
エージェント基盤分野では、PRO-LONG(構造化されたインタラクション履歴をデータベースとして参照する「プログラマティックメモリ」手法)がARC-AGI-3において既存のlong-horizonメモリ実装を上回るスコアを達成したと報告されている。また、マルチエージェントシステムでどのエージェントが次に発言するかを決定する小型ディスパッチャモデルOffloop D1も紹介されている。
FLUX 3のオープンウェイト版(Devバージョン)の公開も予告されており、オープンソースコミュニティへの影響が注目される。
詳細はAINews: Black Forest Labs FLUX 3を参照していただきたい。