7月25日、PYMNTS.comが「Stripe Doubles Down on AI With OpenRouter Deal」と題した記事を公開した。決済インフラ大手のStripeがAIモデルのマーケットプレイスを運営するOpenRouterを約100億ドル(約1兆5,000億円)で買収交渉中と報じられており、合意発表が近い可能性があるとされる。
StripeがOpenRouterを約100億ドルで買収交渉中
Wall Street Journalの報道によれば、StripeはOpenRouterの買収に向けた交渉を進めており、買収額は約100億ドル(約1兆5,000億円)に達する可能性があるとされる。合意発表は近い可能性があるものの、交渉が破談になるケースや、別の買い手が現れる可能性も排除できない。正式な価格は未確認だ。
OpenRouterは2025年5月、Googleのベンチャー部門CapitalGが主導する1億1,300万ドルの資金調達を経て、評価額13億ドルとされていた。それから3か月も経たないうちに、今回報じられた買収額は当時の評価額を大幅に上回る水準となる(※編集部の考察:単純計算では評価額が約8倍に相当するが、元記事に明示された数字ではなく、あくまで参考値として捉えていただきたい)。
OpenRouterとは何か——400以上のAIモデルへの「単一の入口」
OpenRouterはAIモデルを自社開発しない。代わりに、「どのAIモデルに処理を渡すか」を決めるプラットフォームだ。
開発者はOpenRouterに接続するだけで、OpenAI・Anthropic・Google・Meta・DeepSeekなど60社以上の400モデル超にアクセスできる。ソフトウェアを作り直すことなく、利用するAIモデルを切り替えられるのが最大の利点だ。
スケールも大きい。OpenRouterが年間処理するトークン数(AIがテキストを処理する単位)は推定1.5京。Menlo Venturesによれば、800万人以上の開発者が利用しており、そのトラフィック量はGoogleの全トークン流通量の15〜30%、OpenAIの20〜40%、MicrosoftのAzure AI Foundryの50%超に相当すると推計されている。
料金モデルが成長を後押し
OpenRouterの料金体系もユニークだ。開発者がOpenRouter経由でOpenAIやAnthropicのモデルを使う場合、各AIプロバイダーに直接アクセスする場合と価格は変わらない(公式ドキュメントより)。OpenRouterが収益を得るのは、開発者がアカウントに残高を追加する際の小額手数料のみだ。
それでも売上は急成長している。Sacraの推計によれば、2025年末時点で年間収益約1,900万ドルだったものが、2026年3月時点では5,000万ドルに達している。
StripeとOpenRouterは「すでに深く結びついている」
この買収交渉が「自然な次のステップ」に見える理由は、両社がすでに密接に連携していることにある。
Stripeは昨年、OpenRouterが複数のStripeプロダクトを採用していることを公式発表している。具体的には、Stripe Invoicing(グローバルな請求書発行)、Stripe Tax(各国の税計算・徴収)、不正検知ツールといったインフラが稼働している。さらに、クレジットカードやAlipay・Google Payなどの地域決済手段もStripe経由だ。事実上、OpenRouterの財務オペレーションの大部分をStripeがすでに担っている。
MetronomeとOpenRouter——「どのモデルを使うか」と「いくら請求するか」
今回の交渉は、Stripeにとって1年足らずで2件目のAI関連買収となる。2026年1月、Stripeはリアルタイム使用量課金のスタートアップMetronomeの買収を完了した。APIコール数やトークン処理数といった変動する使用量をリアルタイムで追跡・請求するシステムで、OpenAI・Anthropic・Nvidiaなどが顧客だった。
MetronomeとOpenRouterは、同じ問題の異なるフェーズを担う。
- OpenRouter:「どのAIモデルにリクエストを渡すか」を、価格・速度・品質の観点で決定する
- Metronome:処理が終わった後、「その利用がいくらで、どう請求されるか」を計算する
一方は「次に何が起きるか」を決め、もう一方は「何が起きたか」を測定する。Stripeはこの2つをスタックに取り込むことで、AIサービスの課金インフラをエンドツーエンドで握ろうとしている。
詳細はStripe Doubles Down on AI With OpenRouter Dealを参照していただきたい。