7月24日、The Jerusalem Postが「AI bet goes awry: Oracle fires 21,000 employees」と題した記事を公開した。OracleがOpenAIとの巨額AI契約を軸に打った大勝負が財務的な重荷となり、大規模リストラと信用格付けの低下、さらには巨額の担保要件という三重苦に陥っている実態を伝えている。なお、Jerusalem Postはイスラエルの主要英字紙だが、近年はグローバルなテック・ビジネスニュースの報道も積極的に行っており、本記事もその一環として掲載されたものだ。
3000億ドル契約の代償:2万1000人の解雇
OracleはOpenAIとの3000億ドル(約45兆円)規模のAIコンピューティング供給契約を締結し、AI時代の主要インフラプロバイダーとして存在感を高めようとした。だが、その契約を履行するためのデータセンター建設が深刻なキャッシュ不足を引き起こした。
資金を確保するため、Oracleは大規模な人員削減に踏み切った。2026年度末までに従業員数は約2万1000人削減(約13%減)され、16万2000人から14万1000人に縮小した。削減の背景には、AI技術の社内導入による業務再編もある。
ただし、今回の解雇がAI契約の履行「のみ」を直接の原因とするかどうかは元記事でも断定されていない。元記事のタイトルが示す「AI賭けが裏目に(AI bet goes awry)」という表現が示すとおり、AI投資戦略全体の歪みが人員削減・財務悪化・規制摩擦という複合的な問題として噴出している構図だ。
信用格付けの低下が約1兆円超の担保要件を招く
さらに深刻なのが、ウィスコンシン州での大型データセンタープロジェクトに生じた問題だ。
Oracleはポートワシントン(ウィスコンシン州)に、OpenAI契約向けの約1ギガワット規模のデータセンター(推定総額約150億ドル)を建設する計画を進めている。ところが、同州の公益事業委員会(Public Service Commission of Wisconsin)が財務的担保要件の緩和を拒否した。
問題の核心はここにある。同州の規制では、S&Pの信用格付けがA-を下回る大口電力消費者に対し、データセンター向けに整備された電力インフラ分の担保提供を義務付けている。これは、事業者が撤退した場合に既存の電力利用者がコストを肩代わりさせられないようにするための措置だ。
担保要件の審査時点でのOracleの格付けはBBBだったが、その後さらにBBB-へと引き下げられた。格付け機関はその理由として、AI関連の過大な支出と、そこから利益を生み出せるかどうかの不確実性を挙げた。
この結果、Oracleは施設を電力グリッドに接続するだけで70億ドル超(約1兆500億円)の現金担保または信用状(Letter of Credit:銀行が支払いを保証する金融証書)の提供を求められることになった。さらに、その維持コストだけで年間1億ドル超がかかる計算だ。
規制当局との対立
Oracleは担保要件に対して裁判所に申し立てを行い、「こうした資金調達コストは将来の州内投資を妨げる」と主張した。プロジェクトへのコミットメントも強調している。
一方、規制当局は「既存の顧客がデータセンターのコストを補助すべきではない」として立場を崩していない。
この構図はウィスコンシン州に限った話ではない。すでに米国の少なくとも24州が、大口電力消費者向けに特別料金・最低条件・撤退時のペナルティ・担保要件を設けている。AIインフラ投資ラッシュが続く中、各州でデータセンター事業者と規制当局の摩擦が広がっている。
AI投資競争の実態
今回のOracleの苦境は、業界全体のトレンドの中で見ると一層鮮明になる。Amazon、Microsoft、Alphabet、Metaの4社だけで、2026年のAIインフラ投資は合計約6000億ドルに達すると見込まれている。こうした前例のない規模の投資はキャッシュフローを圧迫し、チップ・サーバー・データセンターへの巨額投資が本当に利益に結びつくかという問いを各社に突きつけている。
Oracleのケースは、AI時代の覇権を狙う企業戦略がいかに財務的なリスクと表裏一体であるかを示す事例として、業界関係者の間で注目されている。
詳細はAI bet goes awry: Oracle fires 21,000 employeesを参照していただきたい。