7月25日、AWSがOpenAIのChris Dickensとの共著で「Get started with OpenAI GPT-5.6 Sol, Terra, and Luna on Amazon Bedrock」と題した記事を公開した。Amazon BedrockでOpenAIのGPT-5.6ファミリー(Sol・Terra・Luna)が正式GA(一般提供)となり、既存のOpenAI SDKコードはベースURLとModel IDを差し替えるだけでそのままBedrockに移行できる。OpenAI APIをすでに使っているチームにとって、移行コストがほぼゼロである点が最大のポイントだ。
GPT-5.6の3モデルがAmazon Bedrockで正式GA
OpenAI GPT-5.6 Sol、Terra、Lunaの3モデルがAmazon Bedrockで一般提供(GA)を開始した。Sol・Terra・Lunaという命名は太陽(Sun)・地球(Earth)・月(Moon)に対応しており、モデルの規模感や位置づけを直感的に示している。
3モデルの役割分担は明確だ。
| モデル | Model ID | 用途 | 対応リージョン |
|---|---|---|---|
| Sol | openai.gpt-5.6-sol |
自律型コーディング、セキュリティ調査、科学的分析、深い多段階推論 | us-east-1, us-east-2 |
| Terra | openai.gpt-5.6-terra |
推論・性能・コストのバランスが求められる汎用本番ワークロード | us-east-1, us-east-2, us-west-2 |
| Luna | openai.gpt-5.6-luna |
分類・要約・ルーティングなど高スループット・低レイテンシ用途 | us-east-1, us-east-2, us-west-2 |
3モデルすべてがテキスト・画像の入力、272Kトークンのコンテキストウィンドウ、およびOpenAI Responses APIに対応する。272Kトークンというコンテキストウィンドウは、GPT-4oの128Kと比較して約2倍以上の容量にあたり(※編集部の考察)、長大なコードベースや法律文書など大容量ドキュメントの処理においても余裕のある設計といえる。推論努力レベルはnone / low / medium / high / xhigh / maxの6段階で共通しており、モデルを切り替えてもAPIインテグレーションを変更する必要がない。
価格はOpenAI直接利用と同等で、既存のAWSコミットメント(EDP等)にカウントされる点も実務上の利点だ。具体的な単価はAmazon Bedrockの料金ページに記載されている。
エンドポイントはbedrock-mantle — 既存OpenAIコードの移行が容易
最大のポイントは、既存のOpenAI SDKコードをほぼそのまま流用できる点だ。
アクセスはOpenAI Responses APIを通じて行い、ベースURLは以下となる。
https://bedrock-mantle.{region}.api.aws/openai/v1/responses
エンドポイントに含まれるbedrock-mantleという名称は、Amazon Bedrockの新しいAPIレイヤーの内部コード名に由来する。地球の「マントル」が地殻と核をつなぐように、サードパーティモデルをBedrockのインフラへ橋渡しする役割を担っていることを示唆していると考えられる(※編集部の考察)。
認証はIAMと連携した短期キーで行う。OpenAI SDKのBedrockOpenAIクライアントを使えば、トークンが自動リフレッシュされる。
from aws_bedrock_token_generator import provide_token
from openai import BedrockOpenAI
region = "us-east-1"
client = BedrockOpenAI(
aws_region=region,
bedrock_token_provider=lambda: provide_token(region=region),
)
最初の推論呼び出しはこれだけで動く。
response = client.responses.create(
model="openai.gpt-5.6-terra",
input="Explain the benefits of prompt caching for agentic workloads.",
max_output_tokens=512,
store=False,
)
print(response.output_text)
既存のOpenAI SDKアプリをBedrockに移行する場合は、ベースURLとModel IDを差し替えるだけだ。
なお、IAMポリシーとしてAmazonBedrockMantleInferenceAccessを付与する必要がある(bedrock-mantle:CreateInference等の権限が含まれる)。OpenAI SDKはバージョン2.45.0以上が必要。
pip install "openai>=2.45.0"
プロンプトキャッシュで最大90%コスト削減
エージェント系ワークロードでは、システムプロンプトやツール定義が毎回のリクエストで繰り返される。GPT-5.6はAmazon Bedrockでプロンプトキャッシュに対応しており、これが実装者にとって重要な機能だ。
- 暗黙キャッシュ(デフォルト有効): コード変更なしで自動的に有効
- 明示キャッシュ:
prompt_cache_breakpointでキャッシュ境界を明示的に指定
料金体系は以下のとおり。
- キャッシュ済み入力トークン: 通常の10%(90%引き)
- キャッシュ書き込みトークン: 通常の1.25倍
- キャッシュの有効期間: 最低30分
- 最小プレフィックス長: 1,024トークン(未満の場合はキャッシュされない)
- キャッシュブレークポイントの上限: 1リクエストあたり最大4箇所
明示キャッシュの実装例は以下のとおり。システムプロンプトをキャッシュし、ユーザーの質問部分だけを毎回変えるパターンだ。
def ask(question):
return client.responses.create(
model="openai.gpt-5.6-terra",
prompt_cache_key="support-agent:system-prompt-v1",
prompt_cache_options={"mode": "explicit"},
input=[
{
"type": "message",
"role": "developer",
"content": [
{
"type": "input_text",
"text": system_prompt, # 1,024トークン以上が必要
"prompt_cache_breakpoint": {"mode": "explicit"},
}
],
},
{
"type": "message",
"role": "user",
"content": [{"type": "input_text", "text": question}],
},
],
)
# 1回目: キャッシュへの書き込み
first = ask("How do I configure single sign-on?")
print("write:", first.usage.input_tokens_details.cache_write_tokens)
# 2回目: キャッシュから読み込み
second = ask("How do I reset a password?")
print("read: ", second.usage.input_tokens_details.cached_tokens)
セキュリティとデータ取り扱い
全リクエストはIAMポリシー下で実行され、VPC内で処理され、AWS CloudTrailに記録される。リージョン内推論により、指定したAWSリージョン外にデータが出ない設計で、データレジデンシー要件への対応が可能だ。
GPT-5.6はOpenAI製のサードパーティモデルとして提供される。分類器でフラグが立ったトラフィックは自動的な不正利用検出のため最大30日間保持されるが、オプトインしない限りモデルプロバイダー(OpenAI)には共有されない。プロンプトや補完結果がモデルのトレーニングに使われることはない。
本番デプロイにはAmazon Bedrock Guardrailsの併用が推奨されている。
コンソールからも試せる
新しいAmazon Bedrockコンソールでは、GPT-5.6、Claude、オープンウェイトモデルを最大3モデル並べてレスポンスを比較評価できる。プロジェクト作成→モデル追加→プロンプト入力の手順でコードを書かずに動作確認が可能だ。
詳細はGet started with OpenAI GPT-5.6 Sol, Terra, and Luna on Amazon Bedrockを参照していただきたい。