7月22日、Digital Trendsが「China's AI talent shortage has tech giants recruiting teenagers」と題した記事を公開した。この記事では、深刻なAI人材不足を背景に、中国のテック企業が13歳からの10代をリクルートし始めている実態について詳しく紹介されている。
13歳でAI競技優勝、13万人のフォロワー
杭州に住む13歳の少年は、すでに全国規模のAIコンペで優勝し、SNSで13万6,000人以上のフォロワーを持つ。一方で父親は、自分が育った頃にはほぼ存在しなかった分野で息子をどう導くか頭を悩ませている。
この家族の話が示すのは、中国のテック産業が直面している構造的な問題だ。かつては大学卒業生が自然と企業の門を叩いていた。今や企業側が先手を打って大学生、さらには10代の中高生まで遡ってリクルートするようになっている。
2030年に500万人不足という試算
背景にあるのは、人材ギャップの深刻さだ。McKinseyの試算によると、中国では2030年までにAI人材が500万人不足する可能性があり、元記事によれば現時点でも求人数に対して条件を満たす人材が足りない状態が続いているという。なお、McKinseyによるAI人材需給に関する分析の詳細はMcKinsey Global Institute の関連レポートも参照されたい。
この状況を受け、大手各社は採用の間口を一気に引き下げている。
- Tencent:13〜18歳を対象にしたキャンプを開設し、AIプロダクトマネジメントから量子コンピューティングまでを教育カリキュラムに組み込んでいる。
- ByteDance(TikTok親会社):創業者の張一鳴(Zhang Yiming)が研究プログラムを共同設立し、年間わずか30名に絞り込んだ高校生を専任トレーニー(研究生)として採用している。
- Geely(吉利汽車):採用の順序を根本から逆転させた。高校卒業直後の生徒をリクルートし、在学中からAIとEV技術を並行して教育する。修了後は新卒と同等の給与を保証した上で、そのまま採用する形をとっている。
Geelyの手法は特に踏み込んでいる。大学進学という従来のルートを経由せず、企業が教育プロセスそのものを取り込む形をとっている点が特徴的だ。
学歴要件の緩和はグローバルな流れ
中国のAIスタートアップ大手のMiniMaxは、元記事の取材時点では高校生の採用は行っていないとしているが、学位を採用の必須条件からは外したと明言している。重視するのは「知的好奇心と素の能力」だという。
この動きは中国だけではない。Google共同創業者のSergey Brinも、学士号を持たない人材の採用に以前より積極的になっていると述べている。AIは職務内容を変えるだけでなく、「誰が採用候補になるか」という基準そのものを書き換えつつある。年齢・学歴・従来の職歴よりも、スキルと好奇心が優先される採用観への転換が、業界横断で進んでいる。
エンジニアが押さえておくべき構造変化
中国・米国を中心に「能力主義への回帰」が加速しているのは確かだ。AI人材の争奪が激化する中、採用側は既存の評価軸にこだわっている余裕を失いつつある。高校生を企業が直接育成するGeelyのモデルは、人材育成とリクルートの境界線が溶けていく一つの到達点として注目される。
※編集部の考察:日本のエンジニア採用市場ではまだ学歴フィルターが根強く残っている傾向があるが、グローバルでこうした動きが広がれば、採用評価軸の見直しを迫られる局面が国内でも生じ得る。
詳細はChina's AI talent shortage has tech giants recruiting teenagersを参照していただきたい。