7月22日、The Next Webが「Big Tech is hiding $1.65tn in off-balance-sheet AI debt」と題した記事を公開した。Alphabet・Microsoft・Amazon・Meta・Oracleの5社がオフバランスシート(簿外)に総額1.65兆ドルのAI関連債務を抱えているという日経の調査を受け、その仕組みとリスクを詳しく掘り下げた内容だ。
帳簿に載らない1.65兆ドル
日経の調査によれば、米Big Tech5社のオフバランス債務は4年間で約8倍に膨らみ、1.65兆ドルに達した。各社が公式に開示している債務総額は1.35兆ドルであり、簿外の数字がそれを上回っている。
AIデータセンター建設への支出競争が背景にある。業界全体では2028年までに3兆ドル超を投じる見通しで、その多くがチップやサーバーを担保にした資金調達で賄われている。
エンロンが悪用した「道具」が、今は合法的に使われている
この仕組みが注目を集める最大の理由は、25年前にエンロンが不正に使ったのと同じ構造――特別目的事業体(SPV)やジョイントベンチャーへの債務移転――が、現在は合法の枠組みの中で使われている点だ。
アナリストのGil LuriaはBloomberg Lawにこう語っている。
「エンロンの犯罪は特別目的事業体を持っていたことではない。それを隠したことだ。」
エンロンが崩壊した後、米国では2002年のサーベンス・オクスリー法(SOX法)制定をはじめとする規制強化が進み、オフバランスの利用条件や開示義務が大幅に厳格化された。現行の会計基準であるASC 842(リースの会計処理に関するFASB基準)のもとでは、一定の条件を満たす「オペレーティングリース」や将来の購入契約は貸借対照表への計上を免れる一方、その内容は財務諸表の脚注として開示することが義務付けられている。つまり今のBig Techの手法は違法ではなく、規制の想定範囲内に収まっている。しかし、財務諸表の脚注を丹念に読まない限り、その存在には気づけないという構造的な非対称性は残る。
具体的な手口:MetaとOracleの事例
仕組みは単純だ。チップ・サーバー・電力にかかるコストを別の法人に移し、自社の貸借対照表(バランスシート)に計上しない。
Metaのケースでは、ルイジアナ州のHyperionデータセンターがわかりやすい例だ。MetaとBlue Owl Capitalが共同出資する別法人が270億ドルの債務を負った。Metaはその施設の唯一のテナントでありながら、「代替テナントを探す義務は自社にない」として債務計上を回避している。
各社の簿外債務の規模感は以下の通りだ:
- Meta:約4,200億ドル(報告債務の約3倍)
- Oracle:将来のリース契約で2,600億ドル。4年間で約30倍に拡大
- AlphabetおよびMicrosoft:同様の簿外スキームを利用
「なぜ今か」が重要
タイミングが問題だ。5社のうち4社が今後2週間以内に決算を発表する。公表される債務は整然として見えるが、1.65兆ドルの簿外債務は見出しに登場しない。
リスクが顕在化するのはデータセンターが稼働したときだ。施設が稼働すると、リースは一括でバランスシートに載る。仮にAI需要が期待を下回れば、その損失は資金を提供した貸し手と保険会社に転嫁される。
S&PはすでにOracleのレバレッジ過大を理由に信用格付けを引き下げており、Morgan StanleyとMoody'sも同様の問題を指摘している。会計コンサルタントのTom Sellingはこう問いかける。
「もしこれらの企業の一つがハウス・オブ・カードだったら? そしてこの会計処理で自分を支えていたとしたら?」
違法ではないが、見えていない
各社はいずれも「将来の収益が債務を十分カバーする」と主張しており、開示自体は財務諸表の脚注に存在する。ただし投資家が今週の決算で目にする数字は、実際のレバレッジの半分以下に過ぎない。
AIバブル論が声高に語られる中、最も静かな数字が最もリスクを孕んでいる可能性がある。
詳細はBig Tech is hiding $1.65tn in off-balance-sheet AI debtを参照していただきたい。