7月21日、The Next Webが「Z.AI built a giant AI data centre on Chinese-made chips」と題した記事を公開した。中国のAI企業Z.AIが中国製チップのみを使用した1ギガワット規模のAIデータセンターを構築したという報告で、米国の輸出規制下における中国AI開発の実態を示す事例として注目を集めている。
NvidiaなしでAIを訓練できるのか——Z.AIが出した一つの答え
中国のAI企業がどんなハードウェアでモデルを訓練しているのか、という問いは長らく業界の関心事だった。米国の輸出規制によってNvidiaの最先端チップへのアクセスが遮断された中、国産チップがフロンティアモデルの訓練という重い処理に本当に耐えられるのかは、実証されていなかった。
Z.AIはその問いに対し、1GWのデータセンターを中国製チップだけで稼働させるという形で答えを出した。Bloombergが匿名の関係者情報として報じたところによると、同社は既にこの施設の部分運用を開始している。
Z.AIは、GLM(General Language Model)シリーズで知られるAI企業で、中国ではZhipu AIブランドで事業を展開してきた経緯を持つ。現在はZ.AIとZhipu AIを並行して運営しており、厳密には単純な改称ではなく、グローバル展開を意識した別ブランドとして位置づけられている。
1GWとは、一般的な試算では数十万世帯規模の瞬間消費電力に相当するとされる(換算値は地域の標準消費電力によって異なる)。中国のAIラボが建設したデータセンターとしては最大級の規模だ。
チップ構成の詳細
Z.AIは現在、それぞれ1万チップ以上を収容するコンピューティングクラスタを複数運用している。使用チップのメーカーはBloombergの報道では明示されていないが、中国国内でNvidiaに対抗するAIアクセラレータの主要設計者はHuaweiであり、CambriconやAlibaba(T-Head部門)といった企業も同分野で競合している。
GLMシリーズのモデル訓練を目的として建設されたこの施設は、「国産チップは推論(inference)にしか使えない」という見方を覆しうる事例だ。なお、HuaweiのAscendシリーズは近年、大規模訓練用途への対応を進めており、国産チップの訓練利用における中心的な選択肢となりつつある。
タイミングが持つ意味
この発表の数日前、北京のAI企業Moonshot AI(月之暗面)が開発したKimi K3が米国トップクラスのモデルに匹敵するベンチマーク結果を記録したものの、GPU不足を理由に新規ユーザー登録を一時停止するという事態が起きていた。コンピュートの調達力がモデル性能と並んで競争の焦点になっている中、Z.AIはハードウェアを自前で抱える戦略を選んだ。
Moonshot AIのケースは、優れたモデルを持ちながらもインフラ制約がボトルネックになるという構造的なリスクを浮き彫りにした。Z.AIの今回の施設はその対極に位置する取り組みとも言える。
資金力と市場での立ち位置
Z.AIは香港上場と追加株式売却を経て財務基盤を固めており、年間経常収益(ARR)10億ドルの達成に向けて順調に推移している。この水準に到達すれば、中国のAI企業として初となる。発表当日、同社の株価は約20%上昇した。
中国政府は今後5年間でデータセンター整備に約2兆元(約295億ドル)を投じる計画を持っており、Z.AIはその流れの中でエンタープライズ向けAIサプライヤーとしての位置づけを強めている。Anthropicに近いビジネスモデルへの転換とも言える。
留意点
いくつかの点は慎重に見る必要がある。チップに関する情報は匿名の情報源によるものであり、Z.AI自身はコメントを出していない。また、クラスタの構築に成功したことと、そこでNvidiaと同等の効率でフロンティアモデルを訓練できることは別問題だ。
国産チップは依然として生の処理性能でNvidiaに劣る部分があり、数万チップを安定したシステムとして束ねる技術的難度も高い。相互接続の帯域幅やメモリ容量、ソフトウェアスタックの最適化など、訓練効率に直結する要素は処理性能だけにとどまらない。真の評価基準は、次期GLMモデルが米国ラボの最新モデルとどこまで渡り合えるかだ。
ただし、方向性は明確だ。NvidiaのCUDAに対抗する中国製ソフトウェアスタックの整備も進む中、今回の施設はスライド上の計画からギガワット規模の稼働システムへと移行した。輸出規制がどこまで中国AIの発展を抑制できるかという議論は、この事例によって性質が変わった。
詳細はZ.AI built a giant AI data centre on Chinese-made chipsを参照していただきたい。