7月21日、Futurismが「OpenAI Appears to Be Missing Its Sales Goals by a Vast Margin」と題した記事を公開した。OpenAIは2030年に広告収益だけで年間1,000億ドルを稼ぐと自社予測に明記しているが、マーケティングリサーチ会社Emarketerの分析によれば、チャットボット広告の市場規模そのものの上限が54億ドルにすぎない。目標値は市場全体のパイの約18倍——数字の乖離がいかに深刻かを示した記事だ。
OpenAIの広告収益目標:現実との乖離
OpenAIは2030年までに広告収益だけで年間1,000億ドルを稼ぐと予測している。しかし現状は、今年末時点の自社目標25億ドルに対し、達成ペースが約90%下回る水準で推移している。
Emarketerが発表した分析(AdWeekが最初に報じた)によると、OpenAIの広告収益は自社の5年間予測を約90%下回るペースで推移している。さらに深刻なのは、Emarketerがチャットボット広告の市場全体の上限(アドレサブルマーケット=ある製品・サービスが理論上獲得できる市場の最大規模)を54億ドルと試算している点だ。OpenAIが掲げる1,000億ドルという目標は、市場全体のパイを遥かに超えた数字である。
なお、OpenAIはChatGPTへの広告導入を検討中であることを公式に認めている。チャットボット広告とは、AIとの会話インターフェース上にスポンサーコンテンツや推薦情報を組み込む形式を指し、既存の検索連動型広告やSNS広告とは異なる新興フォーマットだ。OpenAIがこの市場に参入を模索する背景には、現状の主力収益源であるサブスクリプション(ChatGPT Plus等)だけでは長期的な収益規模が限界があるという判断がある。
業界全体でも1,000億ドルには程遠い
この問題はOpenAI単独の話ではない。Emarketerの予測では、2026年にOpenAI・Microsoft・Google・Amazonの4社合計でも広告収益は10億ドル未満にとどまる見込みだ。
対してOpenAIは、今年末だけで自社のAI広告収益が25億ドルに達すると予測していた。業界の雄4社を合わせても届かない数字を、1社で達成するというシナリオがいかに非現実的かがわかる。
目標達成に必要な「3つの条件」
AdWeekの分析によれば、OpenAIが2030年目標を達成するには、以下の3つの条件が同時に成立しなければならない。
- 広告主が数十年かけて構築した検索・SNS中心のインフラを捨て、チャットボットに広告予算を全面移行する
- GoogleやMetaといった既存の広告巨人を押しのけ、OpenAIがAI広告市場を制する
- 市場規模そのものが爆発的に拡大する——2026年時点で数億ドル規模の市場が、2030年までに1,000億ドル超の市場へと膨張する
どれ一つとっても容易ではない。特に3点目については、Emarketerの54億ドルという試算が現時点での市場上限の目安であり、そこから約20倍の成長を前提としている点で、楽観的すぎるとの見方が強い。
広告が崩れれば、財務計画全体が崩れる
なぜここまで深刻なのか。OpenAI自身の財務予測によれば、広告は2030年の総収益の36%を占める柱とされている。この柱が折れれば、5年間の財務計画全体が成立しなくなる。
AI業界はすでに「バブルではないか」という懸念がウォール街でも主流の話題になりつつある。巨額のインフラ投資を正当化する根拠の一つが、こうした広告収益を含む将来の収益予測だった。Emarketerの分析は、その前提を正面から突き崩した格好だ。
ただし、これはOpenAIの事業全体が失敗するという意味ではない。サブスクリプション収益やAPI経由のエンタープライズ向け収益は別途存在しており、広告はあくまで同社が上積みとして描いた収益源の一つだ。しかし全体計画における比重の大きさを考えれば、この試算の狂いが持つ意味は小さくない。※編集部の考察
詳細はOpenAI Appears to Be Missing Its Sales Goals by a Vast Marginを参照していただきたい。