7月18日、Joey Sneddonが「Flathub's AI slop ban looks like it was the right call」と題した記事を公開した。FlathubによるAI生成アプリの申請禁止措置が、その後のデータによって正当性を裏付けられたという内容だ。
拒否されたアプリの73%がすでに放棄
Flathubは、Linuxデスクトップ向けアプリの主要配布プラットフォームだ。LinuxアプリのパッケージフォーマットであるFlatpakをベースとしており、GNOMEやKDEなど主要なLinuxデスクトップ環境向けアプリの事実上の「公式ストア」として機能している。
このFlathubが2026年6月、AIで書かれたアプリの申請を禁止する措置を発表した。当時、一部の批判者からは「新たなソフトウェアの波を拒絶している」との声が上がっていた。
しかしその後、LinuxデベロッパーのEvangelos Paterakis(Tubaや_Turntable_などの開発者)が120件の拒否リポジトリを調査した結果、73%にあたる88件がすでに開発を停止しており、多くはソースコードそのものを削除済みであることが判明した。現在も開発の気配があるのは残り32件のみだ。
Paterakisはこの調査結果を「Democratizing Abandonware」と題したブログ記事(サブタイトルは「I'm not digging through this cemetery(この墓地は掘り返したくない)」)にまとめている。
Flathubが禁止措置に踏み切った背景
Flathubが禁止措置に踏み切った背景には、ボランティアレビュアーの負担問題がある。禁止措置の詳細はFlathubの公式ドキュメントにも明記されている。
AIで生成されたコードを、申請者自身が読んでいないにもかかわらずレビュアーが精査しなければならない状況が続いていた。さらに、修正を求めるフィードバックに対して返ってくるのは、AIエージェントが生成した「自信満々だが的外れな返答」ばかりだったという。
Flathubのボランティアは、申請者がチャットボットを使って開発者とやり取りしていたり、マニフェストを自動生成していたりと、人間が実質的に関与していないことを示すシグナルを検知した場合に、手動で「AI Slop」タグを付与していた。今回調査対象となった120件は、このタグが付いた申請だ。
方法論の限界と、それでも意味のある数字
Paterakis自身も認めているとおり、この調査の方法論は厳密ではない。オープンソースの世界では、AIの関与とは無関係に、個人の趣味プロジェクトが短命に終わるケースは珍しくない。
しかし注目すべきは、OSNewsのThom Holwerdaが提示した論点だ。Sneddonはこの指摘を記事の核心として引用している。
AIツールが本当に開発者の生産性を高め、これまで不可能だったものを作れるようにするなら、そのエビデンスとなる高品質なソフトウェアが登場してくるはずだ。
Holwerdaのこの問いかけは単純だが鋭い——AIによる「民主化」が本物であれば、結果として残るソフトウェアの質・量ともに向上するはずだ、という論理だ。現時点でのデータは、その期待に応えていない。アイデアをアプリに変えるコストが下がっても、それを継続的に維持しようとする意志は伴っていないようだ。記事の言葉を借りれば、「砂の城のようなもの——素早く作られ、潮に流されるに任せている」状態だ。
「スロップ」の定義問題は続く
何がスロップで何がそうでないかの議論は続いている。Sneddonは「同じような音楽プレイヤーが20個、伝言ゲームのように少しずつ劣化して出てくる状態」をその典型例として挙げている。
Flathubの禁止措置によって、本当に価値あるアプリが弾かれた可能性はゼロではない。しかし今回のデータが示すのは、拒否されたアプリのほとんどを、誰も惜しんでいなかったという事実だ。「AI Slop」と判定されたアプリの大半は、Flathubに弾かれるまでもなく、数ヶ月のうちに自然消滅していた可能性が高い。禁止措置はその消滅を少し早めただけかもしれない。
詳細はFlathub's AI slop ban looks like it was the right callを参照していただきたい。