7月18日、パキスタンの英字日刊紙The Newsが「We're now an AI company, not a design one, says Canva cofounder」と題した記事を公開した。Canvaの共同創業者によるインタビュー発言をもとに、同社がデザイン会社からAI会社へと自己定義を転換した経緯と、その組織的・技術的背景を伝えている。
「AIをやっているデザイン会社」ではなく「デザインをやっているAI会社」
Canvaの共同創業者でチーフプロダクトオフィサー(CPO)を務めるCameron Adamsが、自社の定義を公式に塗り替えた。カンヌライオンズ(Cannes Lions)——毎年フランス・カンヌで開催される世界最大規模の広告・クリエイティビティの祭典——で収録された『Rapid Response』(Fast Company のポッドキャスト・インタビューシリーズ)において、Adamsは「デザインを手がけるAI会社」という表現を使い、従来の「デザイン会社」という自己像を明確に棄却した。
この発言は単なるブランドリポジショニングではなく、プロダクト開発から社内文化まで及ぶ組織全体の変化を反映したものだ。
自社開発のAI技術スタックが背景に
Adamsが今回の転換の根拠として挙げたのが、Canva社内に蓄積されたAIリサーチャーと機械学習エンジニアの陣容だ。外部のAIサービスに頼るのではなく、独自のプロプライエタリな技術スタックを構築できたことが、この自己定義を可能にしたという。
同社の月間アクティブユーザーは約2億5000万人に上る。これだけの規模を持つプロダクトのCPOが「AIファースト」を掲げるのは、単なるマーケティング上の言葉遊びではない。なお、Canvaが提供するAI機能の全体像はCanva公式のAI機能ページでも確認できる。
プロダクトのシップサイクルも刷新
開発プロセスも変わった。従来の「会社全体への一斉ロールアウト」をやめ、小さく速い内部テストを経た段階的リリースに移行した。
具体的には、社内の6,000人の従業員に対して継続的に新機能を展開し、フィードバックをもとに品質を磨いてから外部ユーザーへ届ける仕組みだ。大規模なリリースをいきなり2億5000万人に当てるリスクを避け、内部を"ベータ環境"として使う構造になっている。
「AI Discovery Week」で400〜500件の内部プロジェクトが生まれた
社内文化の変化も顕著だ。Canvaは独自の「AI Discovery Week」を設け、全社員が通常業務を一時停止してAIの新手法に専念する期間を設けた。
その結果、法務・財務チームを含む社員から400〜500件の内部プロジェクトが発表された。Adamsは、特定のプラットフォームを強制するのではなく、予算の範囲内で好みのプラットフォームを選べる柔軟性を社員に与えていることもこうした発想につながっていると説明している。
「SaaSpocalypse」には否定的
昨今、AIが既存SaaSプロダクトを駆逐するという「SaaSpocalypse(SaaS黙示録)」論が一部で語られている。Adamsはこの見方を否定する。「単一のAIアプリケーションがあらゆる個人の仕事を代替することはない」というのが彼の立場だ。
視覚コンテンツ制作に特化したCanvaのようなタスク特化型プラットフォームは、汎用AIよりも優位性を持ち続けるという主張だ。
Canvaはもともとノーコードのデザインツールとして急成長したが、近年はAI機能の統合を加速させている。2023年には「Magic Studio」ブランドのもとでAI生成機能群を一挙に発表しており、今回の発言はその路線を単なる機能追加ではなく、企業アイデンティティの再定義として位置づけた点で意味を持つ。
詳細はWe're now an AI company, not a design one, says Canva cofounderを参照していただきたい。