7月17日、SiliconANGLEが「Anthropic, Meta reportedly discussing $10B data center leasing deal」と題した記事を公開した。この記事では、AnthropicがMetaのデータセンター容量を最大100億ドル規模でリースする交渉を進めているという報道について詳しく紹介されている。
LLM市場で競合する2社が、インフラでは取引する可能性
New York Timesが3人の関係者の話として報じたところによれば、AnthropicとMetaは2年間で総額100億ドル(約1.5兆円)規模のデータセンターリース契約を協議中だ。ただし、交渉はまだ初期段階にあり、破談になる可能性も残っている。
このリース構想はAnthropicが2026年6月に提案したとされる。Anthropicは早期解約オプションの付与を条件として求めているという。
この条件は、Anthropicが最近締結したxAI(Elon Muskが率いるAI企業)とのインフラ契約と同じ構造だ。xAIとの契約では、AnthropicはxAIが運営する「Colossus」スーパーコンピューター(Texas州Memphis拠点の大規模GPU클러스터で、Colossus 1およびColossus 2の2フェーズで構成される)を利用する形で、月額12億5000万ドルを支払う。契約期間は180日だが、双方が90日前の通知で解約できる柔軟な構造になっている。
Metaとの契約が成立した場合、月額換算では4億1600万ドルと、xAIとの契約の約3分の1の規模になる。
どのハードウェアを使うか
記事ではAnthropicがMetaのどのハードウェアを使う想定なのかは明示されていない。MetaのサーバーはNvidiaチップを搭載するものと、2026年3月に発表されたカスタムAIアクセラレーター「MTIA 400」(Meta Training and Inference Accelerator 400の略。Metaが自社AI処理の効率化・コスト削減を目的に開発した独自チップ)を搭載するものに分かれる。
AnthropicがNvidiaチップ搭載サーバーを選ぶ可能性が高いと記事は指摘する。AnthropicのAIワークロードはすでにNvidiaチップに最適化されており、MTIA 400への対応には相当な開発コストが伴うためだ。
なぜMetaがリースに動くのか
Metaにとってもこの取引には旨みがある。同社は今週、ルイジアナ州に3,650エーカー(約1,480ヘクタール)に及ぶ大規模データセンターキャンパス「Hyperion」へ500億ドル超の投資を決定したばかりだ。このキャンパスは10か所の発電所で支えられる。巨額のインフラ投資を回収する手段として、余剰キャパシティを外部に貸し出す戦略は理にかなっている。
AIインフラ市場では、大手クラウドプロバイダー、xAI、さらに多数のデータセンタースタートアップが競合する。Anthropicのような高知名度の顧客を獲得できれば、Metaのインフラビジネスとしての存在感を高める効果もある。
AIインフラ需給逼迫という業界的背景
この交渉が成立しうる背景には、AI向けコンピューティングリソースの需給逼迫という業界全体の構造問題がある。生成AIモデルのトレーニング・推論に必要なGPUクラスターの調達は、Nvidiaの供給制約もあって困難な状況が続いており、AIスタートアップや研究機関は自社でデータセンターを建設する代わりに、既存のインフラを持つ企業から容量を借り受ける動きを強めている。
Anthropic自身も資金調達を積極化しており、GoogleやAmazonから累計で数十億ドル規模の出資を受けている。それでも急増するClaudeの需要に対してコンピューティングリソースの確保が追いつかない状況が続いており、xAIとのColossus契約もその文脈で締結されたものだ。MetaのHyperionキャンパスのような大規模インフラを外部調達できれば、Anthropicにとってはトレーニングおよび推論能力の両面でボトルネック解消につながる。
競合同士が取引する構図
この交渉が特に興味深いのは、両社がLLM市場で直接競合しているという点だ。SiliconANGLEの元記事によれば、Metaは先週、プログラミングタスクに特化したLLM「Muse Spark 1.1」を発表した。同モデルのAPI利用料金については、別途Quartzの報道(SiliconANGLE元記事が参照する外部記事)によれば、AnthropicのClaudeより75%安い水準で提供される見通しとされている。
モデル市場では価格競争を繰り広げながら、インフラ面では取引関係を結ぶ——AIインフラの需給逼迫が、こうした複雑な業界構造を生み出している。
なお、xAIとのリース契約締結後、AnthropicはClaudeのAPIおよびClaude CodeのAPIレート制限を引き上げている。Metaとの契約が成立した場合も同様の引き上げが想定されるが、規模がxAIとの契約の3分の1であることを踏まえると、その幅は限定的になる見込みだ。
詳細はAnthropic, Meta reportedly discussing $10B data center leasing dealを参照していただきたい。