7月16日、Liat Ben-Zurが「Why OpenAI could become the next Netscape」と題した記事を公開した。OpenAIがかつてのNetscapeと同じ轍を踏むリスクと、AIプラットフォーム競争における「支配層」の構造を、1990年代のブラウザ戦争になぞらえて分析した内容だ。
「ブラウザ戦争」の再来
1995年夏、Netscapeは新興企業でありながら株式公開初日に株価を2倍にした。Navigatorはユーザーに「インターネットへの窓」を与え、Microsoftの支配する世界から脱出する通路のように機能した。
しかしMicrosoftは動いた。Internet ExplorerをWindowsにバンドルしてNavigatorを無力化し、「ブラウザ」というカテゴリをOSの一機能へと格下げした。Netscapeが持っていたのはユーザーの興奮だったが、Microsoftが持っていたのは配布チャネルと既定の設定だった。
この構図を著者のLiat Ben-Zur(LBZ Advisory創業者)は現在のAI産業に重ねている。
OpenAIはNetscapeか
ChatGPTがしたことは、NavigatorがWebに対してしたことと同じだ——技術的なアーキテクチャを、一般人が触れる体験に変えた。LLM(大規模言語モデル)は以前から研究されていたが、ChatGPT以前、AIは「研究分野」か「バックオフィスのツール」、あるいは経営幹部がアナリティクスを指す際に使うバズワードに過ぎなかった。
しかしNetscapeの物語は創業者神話ではなく、警告ラベルだとBen-Zurは言う。
OpenAIがNetscapeと異なる点は、Microsoftとの深い連携にある。Microsoftはクラウドインフラ、エンタープライズへのアクセス、資本を提供している。だがその同じMicrosoftが、OpenAIの「下に立ち、隣に立ち、そして顧客の前に立ちつつある」という。
Netscapeの問題はMicrosoftが「下の層」を握っていたことだった。OpenAIの問題はより複雑だ——MicrosoftはOpenAIから学びながら、それをパッケージ化し、Copilotとして人々がすでに働いている場所に直接売り込める立場にいる。
さらにOpenAIには旧来のソフトウェア企業が持っていた利点——スケールに対してほぼゼロの限界コスト——がない。モデルを改善するたびにGPU、電力、データセンター、人材が必要になる。これは構造的な脆弱性だ。
「下から上へ」移動するNvidia
1990年代のIntelはPC時代のメトロノームだった。Microsoftがソフトウェアを握り、Intelがハードウェアのペースを握った。
NvidiaはAI時代において似た位置にいるが、その野心はIntel以上だとBen-Zurは見る。NvidiaはGPUを売るだけでなく、**CUDA(GPUの並列計算能力を汎用プログラミングから利用可能にするプラットフォーム)、ネットワーク、ソフトウェアライブラリ、開発者の習慣**まで含めた「AIの産業基盤」を丸ごと握りつつある。
Google(TPU:Googleが自社のAIワークロード向けに開発したカスタムチップ)、Amazon(Trainium:AWSが提供する機械学習トレーニング向けのカスタムシリコン)、Microsoftも自社シリコン開発を進めているが、「欲しい」と思うことと「エコシステムを作る」ことは別物だ。
チップ企業がシステム企業になり、システム企業がソフトウェア企業になり、ソフトウェア企業が開発者環境になり、開発者環境が「野心への課税」になる。
Ben-Zurが描くNvidiaの軌跡はそのようなものだ。現時点では、Nvidiaが「通行料の徴収者」である。
AIプラットフォームは「一人勝ち」にならない
Webが一人の勝者を生まなかったように、AIも層ごとに覇者が分かれると予測される。
- Microsoft:デスクトップとエンタープライズワークフローを握るデフォルトのAI企業
- Nvidia:計算レイヤーの支配的な徴税者
- Amazon:インフラ層
- Google:検索を守りながら再発明を強いられる
- Meta:AIを「注意(アテンション)」の延長に使う
- Apple:AIをデバイスネイティブな体験に変える可能性
逆に「間違ったレイヤー」に依存する企業がリスクを抱える。AOLはブロードバンドに、Yahooは検索に、Netscapeはバンドルに敗れた。AIでも同様の「降格」が起きる——一部のモデル企業はフィーチャーになり、一部のアプリ企業はデモになると著者は指摘する。
技術ブームに共通するパターン
毎回の技術転換で繰り返されるのは同じ構造だ。「驚異の瞬間」と「それに続く権力の配置」を混同することが、最大の間違いだとBen-Zurはまとめる。
AIは会話として始まり、人間の意図を管理する行政システムへと成熟するだろう——何を問い、何を買い、何を書き、誰を信頼し、どの選択肢が表示され、どれが表示されないかを決める。
未来は鎖を付けてやってこない。時間を節約してあげると申し出ながらやってくる。
詳細はWhy OpenAI could become the next Netscapeを参照していただきたい。