7月17日、PYMNTS.comが「AI Firm Databricks Closes in on $188 Billion Valuation This Summer」と題した記事を公開した。データ・AI基盤を手がけるDatabricksが、わずか13ヶ月で評価額を約3倍に伸ばし、1,880億ドルのバリュエーションでの資金調達ラウンドを進めている。エンタープライズ向けという足場の固い事業領域でこれだけの高速成長を実現している点が、同社の際立つ特徴だ。
Databricksとは何か:Lakehouseという基盤
Databricksは2013年にApache Sparkの開発者らがカリフォルニア大学バークレー校から創業したデータ・AIプラットフォーム企業だ。同社が提唱・普及させたLakehouseアーキテクチャは、従来のデータウェアハウス(構造化データの高速分析に強みを持つ)とデータレイク(大量の非構造化データを安価に蓄積できる)の双方の利点を統合した設計思想で、現在のエンタープライズデータ基盤の主流の一つとなっている。
製品の中核をなすDatabricks Data Intelligence Platformは、データエンジニアリング・データサイエンス・機械学習・BI分析を単一プラットフォームで提供し、大企業を中心に幅広く採用されている。2023年にはMosaicMLを約13億ドルで買収し、大規模言語モデルの開発・ファインチューニング機能を内製化。生成AIの波をエンタープライズデータ基盤と直結させる戦略を加速させてきた。
13ヶ月で評価額が3倍に
Databricksのバリュエーション推移は急峻だ。
- 2024年:62億ドル
- 2025年1月:620億ドル(約10倍に急伸)
- 2026年2月:1,340億ドル(70億ドルの調達を実施、バリュエーションは前回比約2倍)
- 2026年夏(今回):1,880億ドル(ラウンド進行中)
2025年1月から2026年夏までのわずか13ヶ月で、バリュエーションは約3倍に達する計算だ。なお、バリュエーション(企業評価額)と調達額は別概念である点を補足しておく。2026年2月の70億ドルはそのラウンドで実際に調達した資金の総額であり、バリュエーションの1,340億ドルはその時点で投資家が認めた企業全体の推定価値を指す。
今回のラウンドでは既存投資家であるCoatueがリードインベスターを務め、新規・既存の複数投資家が参加する予定で、今夏中にクローズを見込んでいる。
調達資金の使途:3プロダクトに集中投下
Databricks共同創業者兼CEOのAli Ghodsiは、今回の調達について「マルチAI戦略を前進させるための資本」と説明し、以下の3製品への投資を明言している。
Unity AI Gateway
マルチAIガバナンスソリューション。複数のAIモデルを一元管理するためのゲートウェイだ。Ghodsiが言及した「各タスクに最適なAIを選ぶ柔軟性」という方針を体現するプロダクトで、「最も賢く最も高価なモデルを全タスクに使う」アプローチから脱却するための基盤となる。
Genie One
2026年6月にローンチした「エージェント型コワーカー」。Databricks内外のデータを横断して業務の自動化・オーケストレーションを行う。初代GenieがDatabricks上のデータのみを対象としていたのに対し、Genie OneはDatabricks外部のデータソースにも対応しており、ビジネスチームがデータと対話しながら意思決定できる環境を目指す。
Lakebase
AIエージェント向けのサーバーレスPostgresデータベース。2026年2月の調達ラウンドでも開発資金の用途として挙げられていたプロダクトで、「AIエージェントが使うオペレーショナルDBの標準」を狙うポジショニングだ。
3製品への集中投下に加え、将来のAI関連M&AとAI研究の深化にも資本を充てると発表している。
AI企業バリュエーションの現在地
Databricksの1,880億ドルというバリュエーションは、非上場のAI企業としては世界トップクラスの水準だ。OpenAIは2025年初頭の調達ラウンド時点で約3,000億ドルの評価を受けており(Wall Street Journal報道)、Anthropicにも及ばないが、エンタープライズ向けデータ・AI基盤という比較的実需に根ざした事業領域での評価としては、市場の期待の高さが色濃く反映されている。
Ghodsiのコメントはシンプルだ。「この新しい資本によって、マルチAI戦略を推進し続け、Unity AI Gatewayを強化し、Genieを拡張し、Lakebaseを前進させる。」
詳細はAI Firm Databricks Closes in on $188 Billion Valuation This Summerを参照していただきたい。