7月17日、Ars Technicaが「Energy IPOs surge as investors hunt for ways to play AI boom」と題した記事を公開した。AIブームを追い風にエネルギー関連企業のIPOが急増しているが、上場後に株価が公募価格を下回るケースはエネルギーセクターで約3分の2に上り、全セクター平均(40%未満)を大きく上回っている。短期的な利ざや狙いの資金が流入と流出を繰り返す構図が、株価の低迷を招いている実態を同記事は詳しく伝えている。
AIインフラ投資の「次の受益者」としてエネルギー株が浮上
大手ハイパースケーラー(AWS、Google、Microsoftなどの大規模クラウド事業者)の株価はここ数年で急騰したが、巨額の設備投資を利益に転換できるかどうかを疑問視する声が投資家の間で広がっている。その結果、AIブームの恩恵を受けると目される別セクターの企業、とりわけデータセンター向け電力供給に絡むエネルギー企業へと資金が流れ始めている。
背景にはデータセンターの電力需要の急膨張がある。AIモデルの学習・推論に必要な計算資源は年々増大しており、MicrosoftやGoogleといったテック大手は安定した電力確保を経営上の最重要課題の一つとして位置付けるようになっている。こうした需要を取り込もうとするエネルギースタートアップが、公開市場での資金調達に相次いで踏み切っている。
地熱発電スタートアップのFervoは今年5月にIPOを実施し、20億ドル超を調達した。同社CEOのTim Latimerは、公開市場への上場を成長加速の手段と位置付けている。
「買ってすぐ売る」の繰り返しで株価が低迷
3分の2が公募価格割れという厳しい現実
熱気とは裏腹に、上場後の株価推移は厳しい。データ分析会社Dealogicによれば、今年と昨年に上場したエネルギー企業の約3分の2が、現在も公募価格を下回って取引されている。全セクター平均では公募価格割れが40%未満であるのと比べると、エネルギーIPOのパフォーマンスの悪さが際立つ。
具体的な例を挙げると:
- X-energy(Amazonが出資する小型モジュール炉(SMR)開発企業):4月上場、公募価格23ドルから33%下落
- ERock(ガス発電機メーカー):6月上場後、42%下落
- Deep Fission(地下1マイルに核反応炉を埋設する設計を開発中):6月に4000万ドルを調達したが、当初目標から73%減額。株価は上場初日比で33%下落
※上記のERock・Deep Fissionを含む各社の企業名・数値は元記事の記載に基づく。
短期売買が招く「乗り換え」の連鎖
エネルギー特化の運用会社Tortoise Capitalのシニアポートフォリオマネージャー、Brian Kessensは、一部のトレーダーがIPOで買い、すぐに売って「次のIPOに乗り換える」パターンを繰り返していると指摘する。RBCのDendrinosは「IPOがうまくいくと思えば、実質的にリスクなしの利益を得られる」と述べており、短期的な利ざや狙いの動きが蔓延している構図が浮かぶ。
Kessensは、投資銀行側が「合理的なバリュエーション」を設定し、すぐに売り抜ける投資家への株式配分を慎重にコントロールする必要があると指摘している。
「実際のビジネス」があるかどうかが分水嶺
技術的実現性への期待だけでは株価を支えられない
パフォーマンスの差を生む要因として、TDコーウェンのサステナビリティ・エネルギートランジションアナリスト、Jeff Osborneは「今すでに実際のビジネスがあるか」を挙げる。X-energyやDeep Fissionのように、技術的・商業的な実現可能性がまだ証明されていないと批判を受けている企業は厳しい状況に置かれている。対照的に、すでに収益基盤を持つ企業は相対的に健闘している傾向がある。
SMRブームの熱狂と市場の現実
SMR(小型モジュール炉)は近年、MicrosoftやGoogleといったテック大手がデータセンターの電力確保に向けて関心を示したことで、エネルギーとAIの交差点として急速に注目を集めてきた。Microsoftが2023年にスリーマイル島原発の再稼働に向けた電力購入契約を結んだことは、こうした流れを象徴する出来事として広く報じられた。しかし市場は、将来の技術的実現性への期待だけでは株価を支えられないという現実を突きつけている形だ。
エネルギー企業にとってIPOは資金調達の重要な手段であり続けるが、投資家側にも「実際に電力を売れるビジネスモデルが存在するか」を見極める目が求められていると、元記事は示唆している。
詳細はEnergy IPOs surge as investors hunt for ways to play AI boomを参照していただきたい。