7月17日、SiliconAngleが「AI infrastructure startup Fireworks closes $1.5B round at $17.5B valuation」と題した記事を公開した。AIインフラスタートアップのFireworks AIが評価額175億ドルで15億ドルの資金調達を完了したというニュースだが、注目すべきは金額だけではない。年間収益10億ドル超・1日40兆トークン処理という数字が示すのは、すでに大規模な商業的牽引力を持つインフラ企業の姿だ。
年間収益10億ドル超のAIインフラ企業が、さらに巨額調達
Fireworks AIは、開発者がAIモデルの推論実行とファインチューニングを行うためのクラウドプラットフォームを提供するスタートアップだ。今回のシリーズDラウンドは、Atreides Management、Index Ventures、TCVが共同リードし、Nvidiaを含む6社以上が参加した。
調達額は15億ドル(約2,200億円)、評価額は175億ドルとなった。この評価額を支えているのが、急速な売上成長だ。Fireworksの年間収益はすでに10億ドルを突破しており、顧客にはSamsung、GitLabといった大手テック企業が名を連ねる。同社のプラットフォームが処理するトークン数は、1日あたり40兆トークン以上に達している。
トークンとは、LLM(大規模言語モデル)が処理するテキストの最小単位であり、この数字はAI基盤サービスとしての処理規模を示す指標だ。
何を提供しているのか
Fireworksのコアプロダクトは、オープンソースAIモデルの推論実行とファインチューニングのクラウド基盤だ。推論インフラの提供を主軸としつつ、モデルを自社データで追加学習させるファインチューニング機能も統合している点が特徴で、開発者はGPUクラスターへのアクセスを使用量ベースの料金モデルで利用できる。
ファインチューニングとは、汎用的に学習済みのAIモデルを、特定のタスクや自社データに合わせて追加学習させるプロセスを指す。
同社が特徴として挙げるのは、このファインチューニングを自動化するAIエージェントだ。開発者がタスクの説明とトレーニングデータセットをアップロードすると、エージェントが以下を自動処理する:
- ハイパーパラメータの最適化:モデルの出力品質を最大化する設定値の組み合わせを自動探索する
- DPOファイルによるデータセット拡張:ユーザー提供のデータが不足している場合、モデルへの応答方法を指示するDPO(Direct Preference Optimization)データセットで補完する
- 並列化手法の選択:学習を複数チップに分散させるトレーニング並列化には4種類の手法をサポートしており、モデルの種類に応じて最適化されている。4手法を同時並行で走らせることも、1手法のみを使うことも可能だ
ファインチューニング後の推論実行サービス
モデルをカスタマイズした後は、Fireworksが提供する2種類の推論サービスでホスティングできる。
サーバーレス推論は、インフラ設定を必要としない手軽な環境だ。一方のDeploymentsは専用GPUクラスターを提供し、サーバーレスより高いパフォーマンスを実現する。Deploymentsではオートスケーリング(リクエスト量に応じてハードウェアを自動増減する機能)の挙動を細かく調整でき、量子化(quantization)によってモデルのインフラ要件を削減する機能も備える。量子化とは、モデルの重みのビット数を削減してメモリ使用量や計算コストを下げる手法だ。
調達資金の使途
共同創業者でCEOのLin Qiao氏は、今回の調達についてこうコメントしている。
「すべての企業は、他の誰も持っていない知識を持っている。自社データ、ワークフロー、顧客、そして品質の定義だ。Fireworksはその知識を、企業が所有し継続的に改善できる専門的なインテリジェンスへと変換する」
調達資金はインフラの拡張とエンジニアの採用に充てられる予定だ。
推論インフラからファインチューニングまでを一貫して提供するAIクラウドという市場では、TogetherAIやModal、Replicate等のプレーヤーも存在する(※編集部の考察:競合比較は元記事に記載のない独自補足)。ただし、年間収益10億ドル超という数字は、Fireworksが商業的な牽引力で一歩抜け出していることを示している。
詳細はAI infrastructure startup Fireworks closes $1.5B round at $17.5B valuationを参照していただきたい。