7月16日、9to5Googleが「Gemini 3.5 Pro delays due to coding performance, upgraded Flash model in testing」と題した記事を公開した。Googleの新規コードのうち75%がすでにAI生成という社内データが示す一方で、「重要なコードは人間が書くべき」とする"純粋主義派"エンジニアとの対立が続いており、Gemini 3.5 Proの延期はその複雑な内情を映し出している。
コーディング性能の壁でGemini 3.5 Proが足踏み
Googleは2026年5月のGoogle I/OでGemini 3.5 Flashを発表し、Proバージョンを「6月に提供予定」と告知していた。壇上では「大幅な改善が見られている」とも述べていたが、6月はすでに過ぎ、現時点でリリースの見通しは示されていない。
Bloombergの報道によれば、Googleは「特にコーディング領域での能力向上に時間をかけている」状況だ。6月下旬にはコーディングスキルの改善を目的としてトレーニングデータを更新したが、「結果は期待外れだった」とされる。I/Oと当初の予定リリース時期の間に、開発がいちど仕切り直しになったことを示すタイムラインだ。
コーディング以外の領域でのパフォーマンスがどの程度かは現時点で不明である。なお、現行のGemini 3.1 Proは2026年2月にリリースされたモデルであり、すでに5か月以上が経過している。
「テスト中」とGoogleは認める — Flashのアップグレード版も準備中
Googleは声明の中で、「現在、3.5 Pro、アップグレードされたFlashモデル、その他のモデルをパートナーとともにテストしている」と述べた。あわせて「コスト効率を高く維持しながら、幅広いモデルラインナップを素早く展開している」とも加えている。
Proの遅延が続く中で、アップグレードされたFlashモデルもパラレルでテストが進んでいる点は注目に値する。Gemini 3.5 FlashはすでにGoogle I/Oで発表済みだが、今回の声明はその強化版が別途開発中であることを示唆しており、Proの遅れをFlash系列でカバーしようとする戦略的な意図も読み取れる。
I/O以降、Geminiアプリ側の更新はユーザー体験の改善やSparkエージェントの展開に集中しており、モデル本体の強化は水面下での作業が続いている格好だ。
Google社内でもAIコーディングは一枚岩ではない
今回の記事で興味深いのは、Google社内のAIコーディング活用の実態に関する情報だ。
4月時点のデータによれば、「Googleの新規コードの75%がAI生成でエンジニアが承認したもの」であり、昨秋の50%から大幅に上昇している。一見、社内AIコーディングが順調に普及しているように見えるが、実態はより複雑だ。この75%はあくまでAI生成コードの比率であり、以下の証言が示すように社内の合意が取れているわけではない。
「コーディングで勝利を収めようとする取り組みは、Googleの一部のエンジニアの"純粋主義的"な姿勢とも戦ってきた。彼らは、重要なコードはすべてGoogleの基準に従い人間が書くべきだと信じている」——元従業員の証言(Bloomberg)
また、社内ではAIツールへのキャパシティ制約も問題になっているとされ、「社内のAIコーディングツールを一本化する」取り組みが進行中だという。現状ではGoogle DeepMind(AI Studio)、Cloud部門(Vertex AI)、Androidチーム(Android Studio)がそれぞれ独自のコーディングツール開発を進めており、社内の分散が課題になっている構図が浮かぶ。
コーディングベンチマーク競争の文脈
AIコーディング性能はAnthropicのClaude、OpenAIのGPT-4系モデルとの差別化において重要な指標になっており、各社がSWE-benchなどのコーディングベンチマークで激しく競い合っている。Gemini 3.5 Proの遅延は、単なるスケジュールの問題ではなく、この競争での立ち位置に直結する。Googleが「コーディング」を遅延の理由として明示したことは、それだけこの領域がモデル評価の核心にあることを示している。
詳細はGemini 3.5 Pro delays due to coding performance, upgraded Flash model in testingを参照していただきたい。