7月17日、The Decoderが「Germany puts Google's AI Overviews and Perplexity under media law in first-of-its-kind ruling」と題した記事を公開した。AI検索がメディア法の「適用外」であり続けた時代に、ドイツの規制当局が世界で初めて楔を打ち込んだ——報道機関のトラフィックを奪い続けてきたAI Overviewsに、ついて法的根拠のある歯止めがかかろうとしている。
AI検索がメディア法の適用対象に——世界初の裁定
ドイツの放送・メディア監督機関であるZAK(ライセンスおよび監督委員会)が、GoogleとPerplexityのAIサービスに対して初の行政裁定を下した。ドイツの州メディア条約(State Media Treaty)をAI検索エンジンおよびチャットボットに適用したのは、これが世界で初めてとなる。
ZAK委員長のThorsten Schmiege博士は「AIサービスはコンテンツプロバイダーであり、ドイツのメディア法を一貫して適用する」と明言した。
ポイントは法的位置づけの転換だ。EUのデジタルサービス法(DSA)には、第三者コンテンツを配信するプラットフォームを免責するセーフハーバー条項が存在する。しかしZAKは、AIが生成した回答はプロバイダー自身のコンテンツであるとして、この免責を認めなかった。
これはドイツの民事裁判所とも一致した方向性だ。ミュンヘンの裁判所は先日、GoogleのAI Overviewsが生成するテキストを「独立した、新しく、実質的な言明」であると認定し、Googleに虚偽回答への直接責任を認める判決を下している。Googleはその判決に控訴中であり、今回の行政裁定でさらに法的圧力が加わった形だ。
両社には1ヶ月以内の不服申し立て期間が与えられており、裁定は即時執行力を持つ。
「差別的扱い」——AI回答が報道コンテンツを押し下げる
Googleへの具体的な指摘は透明性規則の違反と差別禁止規則の違反の2点だ。
AI Overviewsは検索結果の最上部に表示され、従来のリンク一覧、特に報道機関のリンクを下方へ押しやる。規制当局はこれを「禁止された差別」と判断した。AI回答はGoogleが自ら生成したコンテンツであり、中立的な検索結果とは性質が異なるためだ。
ただし、リンクの表示位置だけが問題の本質ではない。Pewの調査によれば、AI Overviewsのソースリンクをクリックするユーザーはわずか1%に過ぎない。質問への回答が得られた時点でユーザーは満足してしまうからだ。リンクを上位に移動させても、クリック率は変わらないだろう。Googleはこの調査に問題があると主張しているが、反証データは公開していない。
Perplexityへの指摘と、メディア仲介者という新たな概念
Perplexityに対する今回の指摘は、ドイツ国内の法定代理人の不在と透明性開示の欠如にとどまっている。ただし両サービスの仕組みは本質的に同じであり、Googleほどのリーチはないものの、理論上は同様の問題が生じる。
ZAKが注目しているもう一つの論点が、AIサービスのメディア仲介者(media intermediary)としての側面だ。チャットボットがサードパーティのコンテンツをソースとしてリンク表示する場合、そのコンテンツが見つかるかどうかをAIが左右する。これはメディア多様性を守るための透明性規則が適用される「仲介者」の要件を満たすと規制当局は判断した。
Schmiege委員長は「リンクの選択と配置によってコンテンツが見つかるかどうかを左右する者は、それを透明にしなければならない。そうでなければ、報道・編集メディアの多様性は消滅する」と述べている。
Jan OsterおよびChristoph Busch両教授による関連法律意見書も規制当局の立場を支持している。AIをSearch結果に組み込むことで、ユーザーはリンクのリストではなく単一の散文回答を受け取るようになり、オリジナルソースへのトラフィックが減少してジャーナリズムの資金基盤を脅かす、というのが両教授の主張だ。州メディア法の下でAI検索エンジン向けの独立したカテゴリを設けることを提言している。
Googleの対応——「Preferred Sources」は免罪符か
Googleは「Preferred Sources」機能のロールアウトなど、規制に備えた対応を進めている。ユーザーがAI回答に表示されるソースを選択できるという機能だが、実際にカスタムリストを管理するユーザーはほぼいないだろう。The Decoderはこの機能を、訴訟で反論できない・反論しない情報源への置き換えをGoogleが正当化するための「言い訳」と評している。
今回の裁定はドイツ単独の動きにとどまらない可能性がある。EUレベルでは欧州メディア自由法(EMFA)がメディア多様性保護の枠組みを整えつつあり、ドイツの行政裁定はその解釈指針として他のEU加盟国の規制当局に参照される余地がある。AI検索が標準化するにつれ、「AI回答はプラットフォーム自身のコンテンツか否か」という問いはドイツだけの問題ではなくなりつつある。
詳細はGermany puts Google's AI Overviews and Perplexity under media law in first-of-its-kind rulingを参照していただきたい。