7月17日、The Decoderが「Kimi's open model K3 nears GPT-5.6 Sol and Fable 5 while signaling the end of super cheap Chinese AI」と題した記事を公開した。Moonshot AIが発表したオープンウェイトモデル「Kimi K3」が、Claude Sonnet 5と完全に同一の価格設定を採用し、DeepSeekが火をつけた「中国モデルは安い」という前提を正面から覆した。性能面では独立評価機関Artificial AnalysisのIntelligence Indexで全体4位に食い込む一方、ハルシネーション率が39%から51%へ上昇するという信頼性上の懸念も独立機関から指摘されており、手放しで称賛できない複雑な評価結果となっている。
中国AI「激安」時代の終わり
前モデルK2.6のAPIコストはキャッシュヒット時で100万トークンあたり$0.16だった。K3は同条件で**$0.30と約2倍に上昇し、出力トークンは$4.00から$15.00**へと大幅に値上がりした。
| モデル | 入力(キャッシュあり) | 入力(キャッシュなし) | 出力 |
|---|---|---|---|
| Kimi K3 | $0.30 | $3.00 | $15.00 |
| Kimi K2.6 | $0.16 | $0.95 | $4.00 |
| Claude Sonnet 5 | $0.30 | $3.00 | $15.00 |
| Claude Fable 5 | $1.00 | $10.00 | $50.00 |
| GPT 5.6 Sol | $0.50 | $5.00 | $30.00 |
K3の価格はClaude Sonnet 5と一ドル単位まで完全に一致している。独立評価機関Artificial Analysisによると、K3の1タスクあたりのコストは**$0.94**で、GPT-5.6 Sol($1.04)とほぼ同水準だ。DeepSeek V4 Pro($0.04)やGLM-5.2($0.32)といった他のオープンウェイト競合とは大きく差がついており、「中国モデル=激安」という図式がK3には当てはまらない。
2.8兆パラメータのスペック
K3のアーキテクチャは**Mixture-of-Experts(MoE)を採用しており、総パラメータ数は2.8兆**だが、推論時に実際に活性化するのは896エキスパートのうち16個のみ。Kimiは「約3兆パラメータ規模では初のオープンモデル」と位置付けている。
コンテキストウィンドウは100万トークン。テキストだけでなく画像・動画もネイティブに処理できる。また、Kimi Delta Attentionと呼ばれる新しいアテンション機構を採用しており、100万トークンのコンテキストにおいて最大6.3倍の高速デコードを実現するとしている。モデルウェイトの完全公開は7月27日が予定されている。
独立評価でも上位に食い込む — ただしハルシネーション率の悪化に注意
Artificial AnalysisのIntelligence Indexではスコア57を記録し、Claude Opus 4.8およびGPT-5.5と同水準だ。Claude Fable 5(60)とGPT-5.6 Sol(59)にはまだ届かないが、全体4位に位置する。
エージェント性能を測るGDPval v2では、EloレーティングがK2.6の1,190から1,668へと大幅上昇。GLM-5.2(1,514)、GPT-5.5(1,494)、Claude Opus 4.8(1,600)を上回った。長期の知識作業タスク評価「AA-Briefcase」ではClaude Fable 5に次ぐ2位だが、プレゼンテーション品質ではGPT-5.6 Solに後れを取る。
ただし、信頼性の観点では重大な懸念がある。 ハルシネーション率がK2.6の39%からK3では51%へと上昇しており、この点はKimiの自社ベンチマーク資料では触れられていない。Artificial Analysisが独自に指摘した数字であり、エージェントとして長時間・低監視で運用する場合には特に注意が必要だ。性能スコアと並んで、このトレードオフを採用判断の材料に加えるべきだろう。
開発ワークフロー全体を対象とする設計
Kimiが強調するユースケースは、コードスニペット生成ではなく長時間・低監視の開発プロジェクト全体への対応だ。大規模コードベースの解析やターミナルツールの自動操作に加え、「Vision in the Loop」と呼ぶ視覚フィードバックループを設計上の特徴として打ち出している。
「Vision in the Loop」とは、モデルがスクリーンキャプチャを取得して現在の出力状態を視覚的に確認し、その結果をもとにコードを修正・再実行するサイクルを自律的に繰り返す仕組みだ。人間が都度確認しなくても、モデル自身が視覚情報をフィードバックとして活用しながら成果物を反復改善できる点が狙いである。
この能力を示すデモとして、Three.jsとWebGPUを使いブラウザ上で構築した3Dオープンワールドゲームやインタラクティブなブラックホール可視化が公開されている。いずれもK3が視覚フィードバックを活用しながら生成したとされる成果物だ。
利用方法
現時点でK3はKimi.com、iOS/Android/HarmonyOS向けモバイルアプリ、デスクトップクライアント「Kimi Work」(v3.1.0以降)、およびKimi Codeで利用可能だ。OpenRouterではmoonshotai/kimi-k3として登録されているが、現在はMoonshot自身経由でのみ提供されている。
エージェント向けの隔離実行環境を提供する「Kimi Hosted Agent」は準備中で、ウェイトリストへの登録が受け付けられている。
詳細はKimi's open model K3 nears GPT-5.6 Sol and Fable 5 while signaling the end of super cheap Chinese AIを参照していただきたい。