7月16日、The Next Webが「Anthropic and Blackstone launch Ode, an AI implementation firm」と題した記事を公開した。AI企業が競ってモデル性能を磨く一方、「動かせない」AIが大企業の中に積み上がっている——そのボトルネックに目をつけ、15億ドル(約2,250億円) を投じて設立された実装専門会社「Ode」の全貌が明らかになった。
モデル競争からデプロイメント競争へ
AIの競争はモデルの性能を巡って続いてきた。しかしOdeは「本当の価値は、そのモデルを大企業の中で実際に動かすこと」に賭ける。
Anthropic、Blackstone、Hellman & Friedmanの3社が共同で立ち上げた「Ode with Anthropic」は、今週正式に発表された。資金規模は15億ドル(約2,250億円)。TechCrunchが最初に報じた。
出資者の顔ぶれはそれぞれ異なる役割を持つ。Anthropicはモデルと技術的な裏付けを提供し、Blackstoneは自社が抱える膨大なポートフォリオ企業群をOdeの最初の顧客基盤として提供する立場にある。Blackstoneは運用資産が1兆ドルを超える世界最大級のオルタナティブ資産運用会社であり、大企業へのAI導入を自社グループ内で推進する戦略の一環として本プロジェクトを位置づけている。Hellman & Friedmanは著名なプライベートエクイティ(PE)ファームとして財務面での支援と、自社ポートフォリオへのアクセスを担う。PEファームがAIスタートアップに直接資本を入れ「導入先の顧客網ごと提供する」このモデルは、PE×AI戦略の新たな型として業界の注目を集めている。
ビジネスモデルはシンプルだ。少人数のシニアエンジニアチームを企業に送り込み、AIが効果を発揮できる箇所を特定し、実際にシステムを構築する。いわゆる「AIコンサルティング」だが、コンサルで終わらず実装まで手がける点がミソだ。
アプローチは「Claude-first」——できる限りAnthropicのモデルを使い、適さない場面では他社モデルも使う、と明言している。
CEOのChris Taylorは強気だ。「うまく実行できれば、いつかトリリオンダラー(約150兆円)カンパニーになることは十分想像できる」とTechCrunchに語った。
「軍隊ではなく特殊部隊」
Odeが擁するエンジニアは現在約100名。そのうち半数以上が自身でスタートアップを創業した経験を持つ。Blackstoneの幹部はこの体制を「特殊部隊」と表現した。大量投入型ではなく、精鋭少数で挑むモデルだ。
Odeのベースとなったのは、Fractional AIというアプライドAI(※研究段階の技術を実際のビジネス課題に直接適用することを専門とする分野)のブティック企業(※特定領域に特化した小規模の専門ファーム)だ。Blackstoneが自社ポートフォリオ企業へのAI導入を進める中でこのスタートアップを見出し、今年5月に買収した。Fractional AIはOpenAIと11ヶ月のパートナーシップを結んでいたが、買収完了と同時に関係を終了している。Fractional AIの創業者であるTaylorとEddie Siegelが、そのままOdeの経営陣を務める。
Siegelはモデル選定論争を一蹴する。「モデルの選択は重要だが、そこに労力の大半を費やすべき話ではない」。プログラミング言語の選択に似ている、とSiegelは例える——重要ではあるが、プロジェクトの成否を決めるものではない、と。
競合がひしめく新市場
この「AI実装」市場に目をつけているのはOdeだけではない。
- OpenAI:同様の事業体「The Deployment Company」を展開
- Deloitte、Accenture:コンサルティング大手も専門チームを構築済み
- Microsoft:「AIは業務の進め方そのものを変えて初めて価値が出る」と繰り返し警告
需要は本物だ。一方で摩擦も大きい。HubSpotが顧客データのAI活用でユーザーの反発を受けて方針を撤回したような事例もあり、企業側はAI導入に慎重だ。また「自社のAIが本当に機能しているのか」を測る手段を持てていない企業も多い。
企業のAIパイロット(実証実験)の大半は本番環境に到達しない——Odeはその「PoC止まり」問題を解消する存在になることを目指している。少人数の高コストなエンジニアチームで、パイロットが失敗し続けてきた場所で勝てるか。それがOdeの賭けだ。
詳細はAnthropic and Blackstone launch Ode, an AI implementation firmを参照していただきたい。